情報と秩序:WHY INFORMATION GROWS by César Hidalgo

カテゴリー : No book, no life.

 

 

「経済成長とはそもそも情報成長のひとつの表われにほかならない」、「宇宙はエネルギー、物資、情報でできている」と言い放つヒダルゴには情報原理主義者の香りがしないでもない。ただし、教条的、狂信的な原理主義者とは根本的に異なるのは、プラクティカルな地平で、たとえば、複雑系科学、ネットワーク理論、社会関係性資本、制度派経済学の知見を駆使して「経済複雑性指標」を開発して「経済複雑性ランキング」(Economic Complexity Rankings)など一般に公開していることだ。経済成長の著しい場所は、情報成長が著しい場所である。ほうっておけば混沌が支配するはずの物理世界で情報が結集し、秩序が形成されるポイント(これは「場」といったほうがいい)―著者の提唱する「想像の結晶化」作用が起こる場所だ。

 
以下、気の利いたセンテンスをまとめてみる。
 
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・学問の垣根を超えた愛のダンスを踊る人々の中に、誰にでもちょかいを出すプレイボーイがひとりだけいた。それが「情報」である。p17

・1950年代から60年代にかけて、情報という概念は科学界を席巻した。情報は科学の境界を越境する強力な概念として、あらゆる学問分野から熱烈な歓迎を受けたのだ。p18

・私たち人間にとって、情報と意味を区別するのは難しい。人間はメッセージを解釈せずにはいられないからだ。意味とは、メッセージが情報を処理できる生命体や機械に届いたときに初めて生じるものであって、情報を伝達させるインクの染み、音波、パルスに含まれているわけではないのだ。p21

・私たちの世界は情報を孕んでいる。どろっとした原子のスープではなく、様々な構造、形状、色、相関関係が、整然と集まって組織されている。たとえそういう物理的秩序になんらの意味がにとしても、その整然とした構造は情報の顕われなのである。p25

・非平衡系は、秩序が自然に発生し、情報の破壊を最小化するような定常状態へと自己組織化されるのだ。p62

・人間が製品を欲しがるのは、製品が他人の神経系にある知識やノウハウの実用的用途にアクセスさせ、私たちの能力を増強してくれるからなのだ。・・・・私たちが想像を結晶化するのは、アイディアを共有可能な現実にかえるためでもある。p103

・経済を知識やノウハウの増幅エンジンとして解釈するのだ。経済は人間の増強(進歩とか進化といってもよいだろうね)に必要な情報を含む物理的なパッケージを生み出すことのできる、複雑な社会技術システムというわけである。突き詰めていえば、経済とは、人間が情報を成長させるための集団的システムといえる。p105

・情報は、モノ、本、ウェブページなど、製品という形で容易に移動できるが、知識やノウハウは人々の肉体やネットワークのなかに閉じ込められている。p117

・エルヴィン・シュレーディンガーは、1944年の著書『生命とは何か』で、生命において個体が情報の担い手であることを強調した。彼は、生命とは情報を蓄えたり処理したりする能力に優れた、平衡から遠く離れた系であることを理解していた。p226

・社会関係資本に欠かせない形のひとつである信頼は、巨大なネットワークを形成し、維持するための”接着剤”であって、ネットワークに蓄積される知識やノウハウとは違いものである。p158・・・信頼は、関係構築のコストを抑えることで、より多くの知識を蓄積できる巨大なネットワークを形成しやすくするのだ。p159

・もっと意外なのは、この経済複雑性指標(Economic Complexity Index)とひとりあたりGDPとの相関関係ではない。重要なのは、この経済複雑性指標でひとりあたりGDPの長期的な変化を説明でいるという点なのだ。p206

・「情報」とは、音楽やDNAに見られる配列のように、体系化された配列に具象化されている秩序のことであり、「知識やノウハウ」とは、システムが持つ情報処理能力のことである。p213

宇宙はエネルギー、物資、情報でできている。p225

人間は物資の持つ計算能力の究極の化身である。人間は新しい形態の情報を生み出すような脳や社会を組織化してゆく過程で、その計算能力を具象化する。私たちが情報を蓄える場所はモノである。モノがあるからこそ、メッセージを伝えたり、社会的活動や仕事を連携させたりできるのだが、より重要なのは知識やノウハウなどの実用的用途を伝えられる、という点だ。p228