たかが蕎麦屋と言うなかれ。

 

オリンピックのつかのま、facebook繋がりの3人のちっちゃな飲み会があり、六本木の蕎麦屋で飲んできた。その3人というのが、ローカルカレッジは早稲田で、プロフェッショナル・スクールは、それぞれ、London Business School、Kellogg、Cornell。

さて、その蕎麦屋、名前をという。聞くところによると、荻窪の老舗「本むら庵」の息子さんがニューヨークで開店し、当地では番蕎麦のうまい店として長年、セレブリティー達の贔屓になってきたという。

その息子さんというのが、KelloggでMBAをとったプロフェッショナルな方で、日本に帰ってきてから開店したのが、HONNMURA AN。実は今回一緒に飲んで食べた女史も、Kelloggのご出身で、この息子さんとは長年のつきあいだということで、このお店で飲んだのだ。

江戸っ子は蕎麦で酒を飲む。この伝統をうまく経営戦略に応用しているのが、HONMURA ANだ。日本酒というよりはワインリストが充実して、客は、ワインなどとともに蕎麦をいただく。しかも店のつくりは、蕎麦屋とはほどとおり、お洒落なbarの雰囲気である。

伝統的なレンジの蕎麦屋では、ビールX日本酒X蕎麦の組み合わせで、客単価は1500~3000円前後が相場だろう。しかし、この店では、各種アルコール、特にワインリストが充実しており、どうしても、ワインが進んでしまう。結果、客単価は7000円超となる。事実、われわれの飲み会も、勘定を〆ると一人当たり9000円。おっと。

既存のものごとの新しい結合(neue kombination)がイノベーションの契機となるとといたのは、シュンペーター。このお店は、素材としての蕎麦、各種料理、アルコール類は、既存のモノだ。これらのモノはバリュー・チェーンに乗って調達され、料理され、客のテーブルに供される。

ポイントは、既存のモノを新しく結合させる「コト」つまりサービスの戦略。六本木で、面白い会話を、面白い場で楽しみたい、美味しいもの好き、新しいモノゴト好きな洒脱な人々が、ちょっと触れてみたい価値の演出が巧みだ。これが、このお店が醸し出している経験価値(value experience)なんだろうね。

このように、offeringは、モノ(product)とコト(service)の新しい組み合わせであり、そのofferingの「場」をいかにデザインしてゆくのかという経験価値つくりの新しい戦略なのである。ただし、offeringは店から客への一方通行ではなく、客とお店が共に創り上げてゆ価値(value co-creation)なんだろう。

たかが蕎麦屋と言うなかれ。かくしてイノベーティブな店でイノベーティブな会話に花が咲いたというわけ。研究テーマとしても面白いかもしれない。

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