ヒューマニチュード

 

Humanitudeは、英語読みをすればヒューマニチュードと発音するが、フランス語では”h”は発音しないので、ユマニチュードと読む。なので、以下ユマニチュードで。

これは、フランスのイヴ・ジネストとマレスコッティが提唱するコミュニケーションに力点を置いたケアリング手法の体系だ。介護が中心だが、日本の医師や看護師にもこの体系を取り入れて大きな成果を出しているケースが増えつつある。

さて、新生児は、オンギャーと生まれてから(第一の誕生)、家族など周囲の人間との関係性を経て「人間」として成長してゆく。これをユマニチュードでは第一の誕生と対比させて、「第二の誕生」とか「社会的な誕生」と呼んでいる。

第二の誕生では、他者との関係性の中で信頼関係、人間関係、絆などが生る。これば、ソーシャル・キャピタルに近い概念だ。ユマニチュードのユニークな点は、これを4つの人間の基本的な機能、つまり、①見る、②話す、③触れる、④立つ、に分類する。

第二の誕生で大切なのは、愛、優しさ、人としての人権の尊重。人は老いれば、身体機能や認知機能が低下する。これはどうしようもないことだ。このような状態を、ユマニチュードは肯定的に「第三の誕生」と呼ぶ。この点もユニークだ。

このような構えをベースにして、「第三の誕生」以降をケア、支援するものとして、様々な具体的な方法論がある。たとえば、

・介護者や医療者がこれから患者である老人に対して行うことを老人に同じ目線で、ゆっくり、しっかり語りかける。

・正面から患者の目を優しく見つめる。

・患者の身体に触れるときは掴む様な持ち方をせずに触れるようにする。

・赤ちゃん言葉や子ども向けの言葉は使わず、大人として接する、etc…

ユマニチュードの体系は、美しい階層構造を成している。つまり、(1)コミュニケーション方法・技法体系、(2)方法論、そして、(3)哲学である。これらによって普遍性と具体性をソフト・システムとして担保している。参考ブログ、その1その2記事

なので、いろいろなケアリングの場面のケアサービスをデザインできるのだ。緩和ケア、特養、口腔ケア、I在宅介護、訪問看護、デイサービス、ケア付き高齢者専用住宅・・・・・などのケアリング領域もさることながら、案外、ICUやCCUを含めるキュア領域にも活用可能だろう。

さて、サービスの提供者側は、技術的品質を高めるためにクリティカルパス、基準、手順など設計品質の側面から入ることが多い。ところが、顧客である患者が体感する品質は、設計品質ではなく、知覚品質だ。知覚品質は、さらに関係性品質に大きく左右される。

ヒューマン・サービスという観点で見ると、ユマニチュードの技法は、知覚品質と関係性品質の側面から、患者満足を高め、そして臨床的効果を高めることを狙ったものだ。そして、メタ思考を規定する哲学的フレームから、ソリューションとしての具体的な方法論、方法が整っているのが素晴らしい。

医療・保健・福祉の専門分野は、タテ割りのハードスキル教育が幅を利かせている。ややもするとバランスを欠きがちになるこれらの体系に必要なものは、リベラルアーツ(自由文芸七科目という狭義のそれではない)であり、専門分野横断的なソフトスキルだ。ユマニチュードは日本の保健、医療、福祉サービスの足りない部分を真正面から衝いている。

以上のような点から、ヒューマンサービスの新しい方向として注目なのだ。

 

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