自転車、あるいは孤独と自由のためのインバリュアボーな道具

カテゴリー : 自転車ツーリング

年末。今年の北海道自転車ツーリングの記録をアップしていなかったことに気づく。で、レコードを転記したりfacebookの写真をコピペしたりして要点のみまとめてみる。

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だいたい毎年、春先になると夏の北海道が気になりはじめるのだ。意識の深いところで鬱勃たる長距離キャンピングのライドへの欲求が首をもたげるのだ。

圧倒的な孤独のなかに身を置きたいとういう自閉的な願望の裏側で、開かれた自由に対する渇望がのた打ちまわりはじめるのだ。

北海道の大自然のなかを、たった一人で旅をして、たった一人でテント生活を送るのだ。孤独の中にクローズドに引きこもり、かつ自由に対してはまったくオープンに可能性の地平線をひたすら前進する・・・。

この二律背反を超えたところに顕れる分裂的・スキゾフレニアックで倒錯した渇愛を満たす手段は自転車となる。

そう、二律背反を超えるもの、すなわち、自転車。

ま、これしかないし。

人がなんと言おうと、自転車は孤独と自由を高い次元で止揚しうるインバリュアボーな道具だ。
 
また自由で孤独だからこそ自在に駆使できる道具だ。
 
そう体感できる「道具」があるだけ人生いいじゃん。
 
自転車とは、無限のエネルギーの源泉さ。そこから人生を彩る物語が溢れ出てくる自由の源泉さ。
 
すなわち、自転車に乗って旅するという行為は、畢竟、リベラル・アーツってことだ。
 
図書館や書斎の中で書物に没頭して獲得するリベラルアーツもあれば、原野を風とともに走りぬけ、轍を刻むリベラル・アーツがあっていい。
 
なにかに隷属したり服従するのではなく、自由を得るための、自由を再確認するための方法、手法、技術ってことだ。
 
おれは自転車原理主義者か。たぶんな。
 
                                      

・DAY1  7/15 (水)千歳空港→沙流二風谷→日高  90km テン泊 

この日のために、イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を数ヶ月前に読了。いくつか疑問点を二風谷アイヌ文化博物館の学芸員の方に訊ねていろいろ教えてもらう。ためになった。

(日高ファミリーキャンプ場)

・DAY2 7/16(木) 沙流二風谷→日高→日高峠500m→占冠→金山峠 490m→富良野→美瑛 100km
美瑛:ライダーハウス蜂の宿 

(町営のラベンダー園から十勝岳を望む)

・DAY3 7/17(金)   美瑛→上川→層雲峡 100km テン泊

(層雲峡)

・DAY4 7/18(土) 層雲峡→黒岳→間宮岳→旭岳→北海岳→黒岳→層雲峡 自転車はデポ テン泊

(雪渓とお花畑)

エゾノツガザクラ。これを妖精・精霊と呼ばすしてなんという?!

大雪の自然は「アタシ」という、うすら汚い世俗を可憐な高山植物から隔絶している。その無慈悲な断裂にハタと気づき、かろうじてエドノツガザクラを相対化して見ざるを得ないエゴの矮小なことよ。。

いや、待てよ。こういう見方のほうがいいかも。

“If you see yourself in the correct way, you are all as much extraordinary phenomena of nature as trees, clouds, the patterns in running water, the flickering of fire, the arrangement of the stars, and the form of a galaxy. You are all just like that.” ~Alan Watts

 (聖霊の降臨あるいはコマクサ)

高山植物の女王、コマクサ!妖精、精霊が宿る命の結晶のよう。Something greatが大雪のそこかしこに顕現している。コマクサは高山の荒涼たる地に突発するフィーメール的<性>の象徴なのだ。まばゆい。目が眩む。

(層雲峡野営場)

層雲峡野営場では夕方より雨天。雨をしのぐため炊事場に偶然3人のサイクリストが鉢合わせ。これまた偶然か三人ともネパールヒマラヤ体験者。夜遅くまでアウトドアのロマンに盛り上がる。関西からやってきたサイクリスト氏の「静と動の話」には、はっとした。

・DAY5 7/19(日) 層雲峡 600m→三国峠1139m→糠平湖→幌鹿峠1081m→山田温泉→然別湖 80km テン泊

(然別湖北岸キャンプ場)

然別湖北岸の朝まだき。乳白色の朝霧が湖面を愛撫するように流れ、やがて湖面が向こうの山々の稜線を映し出す。静謐で豊饒な時間は、その流れを緩めているようだ。

(親切なカヤック乗りの方と知り合い、カヤックに乗せて貰う。静謐の湖面を舐めるように進む)

自転車もカヤックも、他動詞「漕ぐ」を用いてそれらを対象とする動作を表現する。湖畔で知り合った夫妻のカヤックで早朝の静かに凪いだ湖面に漕ぎ出した。脚で漕いで、腕で漕いで自然からメッセージを全身で受けとめる。

・DAY6 7/20(月)  然別湖→十勝清水→日勝峠1020m→日高 100km テン泊

(タウシュベツ橋梁)

・DAY7 7/21(火)  日高停滞 テン泊

(日高ファミリーキャンプ場)

・DAY8  7/22(水)  日高→二風谷→太平洋→鵡川→千歳 50km ライダーハウスユーカラ泊

(ニュージーランドからやってきたNigelさん)

自転車は人と人とをぐっと近づけてくれる。金山峠の登りでは缶ビール、三国峠ののぼりでは煎餅一袋を道行く見ず知らずのドライバーからもらう。ありがたや。平取温泉では地元のおじちゃんと露天風呂のなかで小1時間も話し込む。ピースサインを交換した無数のライダーさん。そしてそう多くはないがサイクリスト。

この写真はニュージーランドの世界平和自転車アクティビストのNigelさんと。Nigelは自転車に乗って福島を支援している。Kia Kaha!(いっしょにがんばろう)というマオリ語を教えてもらった。

・DAY9 7/23(木) 千歳空港→自宅

(千歳飛行場でチャリを分解、そして輪行)

 

装備リスト

1)自転車
700cランドナー 大型パニアバック
行きは、ジャージの長い黒パンツにTシャツ。サイクリングシューズ。
空気ポンプ改良。

2)ウェア
帽子 昨年秋に求めたもの
上は赤い速乾性シャツ、下はナイロンニッカポッカ。アンダーウェアはパールイズミ。
薄布ニッカポッカ 膝下ゴムストッパー修理済み。
雨具上下
フリース
短パン
綿Tシャツ
ハイソックス
下着2

3)野営装備
テント(日干し済み)
エアマット
コンパクトシュラフ(日干し済み)
ナップザック 大雪の旭岳登山
ヘッドランプ(電池入れ換え)

4)火器+食事
ガスボンベカートリッジ Epiガスは現地調達
コッヘル 
箸、フォーク
備蓄食糧の古くなったもの、乾パン、ビスケット、魚カンヅメ、乾燥コメ、飴など

4)その他
今年は前方はフラッシュライト、後方に赤フラッシュ対応テールランプ
コンパス
予備電池単三6本(携帯充電起用、ライト用)

オーガナイザー(紙幣、コイン、運転免許証、クレジットカード、携帯電話)
携帯電話用蓄電池キット
その他
虫除け
日焼け止め
保険証

 (友人が作ってくれた工具袋を携行した)
 
まとめ
6つの峠を攻めまくった。総じて非常により走りができた。①日高峠、②金山峠はそれぞれ一本でクリア。2003年には層雲境でバテていたが、今回は実になんともなかった。層雲境野営場をベースキャンプにして大雪の旭岳を往復。これは圧巻だった。③三国峠はターミナルから一本で完走。その後、④幌鹿峠、然別湖、⑤白樺峠へ。⑥日勝峠は酷暑のヒルクライム。麓の十勝清水で陽がかたむくまで2時間半ぶらぶら。5時頃ピークアウト、下りがやたらに長かった。日高に着いたのは7時過ぎ。日高で雨に遭い蓄積疲労もあったため予備日を使って日高沙流川キャンプ場に連泊。
 

今回は、野宿場所として①温泉が近く、②コンビニも近い、③キャンプ場orライハ。ライドの後の温泉は大変よい。冷泉には毎日入った。冷泉は日焼けした皮膚を鎮めてくれるという効果のほか、ミトコンドリアを増やすという効果がある。ライド中は朝飯は食パントースト3枚にほっとカフェオレ。

午前中は行動食として、残った食パン3枚くらいを食べ、適宜野菜の買い食い。ハムストリングなどを柔らかくする前屈ストレッチングは朝、昼、晩行った。その結果、前屈で手のひら半分が床につくようになった。

総じてハードな自転車ツーリングに耐えうる体力レベルは上がっている。今回のライドによっても健康レベルは上がった。おそらくは過去15年中最高レベルだろう。今後はリバウンドに気をつけて、ランニング、断食&食養、サイクリングの3点セットを推し進めてゆきたい。

反省点など。
あったほうが良い装備:
・リアマッドガード、最終日とその前日は雨に降られ雨天走行。リアのドロヨケがなかったため、だいぶ汚れた。早々に原に連絡すること。
・ラン以外のキャンプ場で用いる軽量のサンダル。
・洗濯ヒモと洗濯ばさみ。少量の洗濯洗剤。
・層雲境の手前でサングラスを忘れる。自転車に乗り始めるときは入念なチェックが必要。フロントバックにチェックリストを入れるか?!
下着アンダーウェアは10日ほどのツーリングならば2枚で充分。ライド中は、ライド専用アンダーウェア。風呂に入ってから寝て、朝起きるまでの綿パンツ1枚。帰りようの綿パンツ1枚でOK.
・ダイナモバッテリーは一切使わず。ナショナルのLEDランプは秀逸。ゴムひもでテントの内側にかけてランタンとしても使える。
・軽く広い角度にわたって照射できたり、狭い範囲でと遠くまで届くヘッドランプはあったほうがよい。
・せっかく大雪山の山岳地図を買ったのに家に置き忘れた。層雲峡で忘れたことに気づく。やれやれ。ビジターセンターで標準コースタイム付きの概念図をもらい、立体パノラマとにらめっこして山容を記憶して登った。
・帰りの飛行機で輪行袋の袋を紛失。ジェットスターは安いが、サービスの質はイマイチ。

 

 

アクティブ・ラーニングと留学

カテゴリー : サービス思考

文際交流協会
東京工科大学の看護学科の先生から頼まれて受け持った「社会経済学」の授業。全15回(土曜日!)なんとか終わってホッとしている。

そのクラスでは5-6人(全クラスの1割くらいか)が海外留学の経験があるということだった。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカなど英語圏が中心だ。

階層化が進んだ現代日本のミドルクラス以上の家庭では、留学はある意味遠足のようなお気軽なものだ。昔のように意を決して人生の一大勝負事のように勇ましく雄飛するようなシロモノではない。とくに学位取得を前提にしない語学留学や短期留学はカジュアルでコモディティー的なものになっている。

さて、松下の授業はどんな科目でもアクティブ・ラーニング・メソッドを用いるので、授業中はチャット、ディスカッション、グループワーク、プレゼンテーション、創成型のアジェンダ(課題)レポートなどで、ワイワイ、ガヤガヤ、ワサワサしたものだ。課題を見つけて、ソリューションを自分たちで考え、みんなの前で発表し、対話、批判、質問、回答(弁明)をとおしてさらに認識をシャープにしてゆこうというものだ。

もっともこの手法は、アメリカの大学院へ留学しているときに学生目線で学んだものだ。それまでは日本の学部にいたので、一方通行のつまらない授業に辟易としていたのだ。そんなこともあり、大学で教えるようになってからは、ほとんどの授業でアクティブ・ラーニングをやるようにしている。

さて、留学経験者のアクティブ・ラーニング型のセッションでの反応は3つくらいにまとめることができるだろう。

(1)口数が多い。

人前でしゃべることが好き。逆にだまっているとストレスが増す。コミュニケーションをとること自体が楽しいと心の底から思えるようだ。

(2)自分の考えを話す。

バカ話、ヨタ話ではなく、自分の思うところ、考えるものをスピークアウトする。

(3)同調圧力に屈しない。

自分の考えを表明することは「周囲との差異」を際立たせる。日本人は、まわりの「空気」や「空気感」に同調して、カドやエッジを際立たせることをよしとしない。しかし、おしなべて留学経験者は、このような同調圧力モードが低出力なのだ。

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グローバル人材(日本だけで流通している変な用語)を定義しようと思ったら込み入った話になりやすい。べつにグローバルとか言って、大上段に構える必要はないと思う。シンプルに言えば、上記3項目の行動特性が、その入り口だろう。ローカルなリージョンに生きるうえでも、これらの行動特性は活きて来るだろう。

(以前ドイツ人と日本人学生に英語で対話型のレクチャーをやったことがあるが、その時の印象)

教育とはサービスだ。そして、のっぴきならない授業はサービスの現場ということになる。そのサービスをいかに位置づけるのか。教員を中心とする考え方は、教える(Instruct)。そうではなく主人公を学生にすれば、学ぶ(Learn)ことの支援だ。

教員と学生は共に成果を創造するという意味での共創的な関係なのだ。

そのような反転させた目線で、学びをサポートして支援していくのがActive Learningだ。ローカルでもグローバルでも、アクティブなほうが人生楽しいし、たぶん他者のためにもなるだろう。保健・医療・福祉サービスを担う若者の学びの支援は、だから、共創モードのActive Learningを用いることが目的合理的だ。

社会経済学の取っ掛かりを学んだ学生のみんなにはどうかactiveに生きていって欲しいものだ。