新旧クリエーティブクラスが集まる場所

カテゴリー : 日本人論

 <早春の八ヶ岳>

会社オーナー、上場企業役員、議員、弁護士、医師、作家、芸術家、高度専門職的自営業、投資顧問業者、サイエンティスト、高度なプログラマ、システムエンジニア、大学教授・・・・こういう人達のことをクリエーティブ・クラスと呼ぶそうだ。

もともとクリエイティブ・クラスとはトロント大学で教鞭をとっていたリチャード・フロリダがアメリカを含む先進国の脱工業化した地域で富を創出する階層(クラス)に付与したネーミングだ。

さて、こういう連中がタムロするのは、銀座のクラブ、なんとかソサエティ、異業種勉強会などではない。山々が見えて空気、水、食べ物が旨い田舎に集まっているのだ。

事実、マツシタ山荘のある清里某所の周辺には大小の瀟洒な別荘が林立しており、その界隈に集うご面々はけっこうなプロフェッショナルな方々が多いのだ。

自分のタイニーハウス「山荘」は、周囲の絢爛な別荘とは一線を画し、質素な米国製トレーラーハウスを設えたもので、知的生活兼アウトドアライフの拠点として創ったものだ。

さて、山荘別荘の話をすると、「プロフェッショナル→金持ち→別荘」なんていう、ありきたりな図式で済ませるのが無難だが、実は、もっと奥深い構造が横たわっている。

・ここいらに集う知的な人々は、都会の仕事は好きだが、都会の仕事ばかりだと気が滅入りダメになると本気で思っている。知識労働で得た報酬をネイチャー・キャピタル(自然資本)に密着したセカンドハウス環境に投資・消費することにハマっている人が多い。

・彼ら、彼女達の仕事は、専門職性が強い高度サービス業が中心で、典型的と言っていいくらいのクリエーティブクラスだ。ストック、フローともリッチだ。

・何らかの高度な技術・専門性を有しながらも、そこに埋没することなく教養的な世界を俯瞰でき、自然の美しさ、自然を相手にした遊び、身体性を介在させるアウトドアを理解、体感できる人達が多いのだ。

・八ヶ岳南麓はド田舎ではない。都心でも勝負できるレストラン、カフェ、バー、ホテルも集中する都市とカントリーのハイブリッドな空間だ。知識労働者やクリエイティブクラスは、辺鄙なド田舎が好きなわけではなく、都会的なセンスが横溢するカントリー・テーストが好きなのだ。

・そんな空間に東京から2時間で余裕で来ることができる。情報、知識志向が強い知識労働者やクリエイティブクラスにとってみれば、仕事環境はネット中心だ。ネットにさえ繋がれば、いつでも、どこでもサクサクって感じでテレ・ワークできる。

 

<スタンフォード・リサーチセンターのVALSモデル>

ようするに北海道のサロベツ平原のような都会の要素が微塵もないようなウィルダネスではなく、ほどほどアーバン、ほどほどカントリーでありながらも、すぐそこにはワイルドな山岳環境、滝、湖沼、森林帯が拡がっている環境が八ヶ岳南麓。

自然資本によりそいながら、美味しくて安心安全な食べ物を楽しむことができる。土に触れて農にも近い。秀麗な風景のもと空気と水がおいしいというアタリマエが充満している。そういう人間としてのアマリマエなモノコトが埋め込まれた場所に、回帰しているのだ。

これって、なんのことはない、土地に生まれ育ち、そこで農業や林業を生業として生きている第一次産業従事者と、第3次産業の高度サービス産業を生業とするクリエーティブ・クラスが、同じような場所に収斂しているということだ。

生業のためにカントリーに棲み続ける。生きがいのために都会からカントリーにやってくる。

ただそれだけの違いだ。

だったら、スッと好きなカントリーサイドに行って(帰って)、その土地で起業したり雇用機会を見つけるのが手っ取り早いだろう。そして、自分たちで小さな家を拵えて身の丈にあったスタイルで棲む。

ぼくの知人は古い住宅を月額賃料たった8000円で借りて、1/2農業、1/4ライター、1/4コンサルタントのような仕事をやっている。年収は400万くらいで親子3人余裕で暮らしていける。

そんなスタイルが、新しいクリエーティブ・クラスだと思う。ようはすべての人間はもともとクリエーティブなのだ。新しいクリエーティブ・クラスは、ストックやフローの多寡にとらわれずに、自由にカントリーで仕事をして生活も営む。

もっとも、冒頭に書いたようなエスタブリッシュメントさんたちはおおむね45歳以上のおじさん、おばさんなのだ。しかし、新しいクリエーティブ・クラスは、大好きなカントリーサイドで、農業、半農半X風に(社会)起業している人は圧倒的に20~30代が多い。ようはライフスタイルとワークスタイルがシフトしているのだ。

知識労働やクリエイティブで高度に知的な仕事で財を築き、やっと八ヶ岳に辿り着く旧クリエーティブ・クラスもいれば、いきなり、八ヶ岳にやってきて、そこで生業を始める新クリエーティブ・クラスもいる。

ライフスタイルとワークスタイルはどんどん変化しているのだよ。ここいらにいると、そんな人達の人間模様が面白い。