次期ツーリング自転車、納車!

カテゴリー : システム思考

せっせと研究し、研究成果を書物として出版し、そして得た印税を原資として(汗)、700cツーリング自転車を赤羽のサイクルショップ玄の吉澤玄三さんにオーダー。

自由に書いては走る、自由に走っては書くという生活にあって、自転車は「自由」を得るための手段でもある。たしかに自転車は、単なる旅の道具にしかすぎない。

でも、そこには抽象的な「自由」を実際に具現化する道具というプラクティカルな意味がある。プラクティカルな道具として使いこなすためには、目的を明確に持つことが案外大事だ。

道具の目的:

①北海道などの山谷をタフに走破する。ただし舗装路が中心。<走行性能>

②キャンピングでテント、シュラフ、自炊道具、食糧など90リッター、30km以上の装備をストレスなく自転車本体に装着できる。<アウトドア生活性能>

③飛行機を含む他の交通手段を利用して機動的に移動できる。<輪行性能>

 

北海道などへの輪行が多いのでフォーク抜きができるように、ブレーキワイヤーは上出し。過去、ブレーキレバーとシフターが一体化されたメカも使ってきたが、今回は、コンパクトに輪行するためには、フォーク抜きを選択。

設計思想:

以上の目的から<走行性能>、<アウトドア生活性能>、<輪行性能>といった要件が明確になる。

これらの要件を達成するためには合理的な設計思想が必要だ。自転車づくりには厳然とした目的合理性が求められる。これをはずすと、やれビンテージだの、時代考証だとか、ある種の魔界に迷い込むこととなる。

異界、魔界はツーリングや旅そのもので求めるべし。道具にはそのようなものは求めない。

さて、上記目的①走行性能、②アウトドア生活性能、③他の交通手段を用いた移動つまり輪行との整合性を合理的に具現化する。

デザイン思想:

ファンクショナリティを追求するため、ツーリング自転車パーツのイノベーションの成果を最大限取り込みながらも、ランドナーのテーストも随所に盛り込む。

機能性と趣味性といった異質なエレメントを結びつけることにランドナーの難しさがあり、でも面白さが隠れている。

アルプスのクライマー赤、700cランドナー黄色、そして今回は青なので三原色が揃った。いや、サムライブルー。(2018ワールドカップ日本ベスト16記念でもある)

スプロケット(フリーホイール) 12-26 8s
リム パピオン 32H
Fハブ グランボア ラージ 32H
Rハブ グランボア ラージ 130 32H シマノ
スポーク DT チャンピオン 1.8 @65×64本 
タイヤ グランボア シプレ 700c
チューブ ヴィットリア
リムフラップ DEDAパニアラックにオーストリッチ特大パニアバッグを取り付けるため。

後方からは本所の亀甲の泥除けが映える。700cホイールにはのっぺりしたマッドガードを選択する向きが一般的か。

マッドガード H31CN 亀甲。マッドガードステー 本所
ダルマネジ グランボア ステンレスx6+輪行用x2

でも、亀甲模様のクオリアがツーリング自転車のテーストを引き立てる。まあ、走行性能とはあまり関係ない趣味の世界なのであるが。。

シートテールライト KIREI USB LM-016 。北海道のトンネルは長く暗い。後方に対する存在を明確に伝えるために、今回はシートテールライト KIREI USB LM-016を装備することに。さらに、キムラのアルミ削り出し小型のリフレクター をリア泥除けに装着。若干の趣味性もある。

TAシクロツーリスト47-36-26のトリプル。アルプスパスハンターでは、フロントはダブルのみ。前は2枚でも、十分にワイドかつシームレスななギア比の選択ができる。

北海道の主要峠はどんどん舗装化が進んでいる。でも、訓子府からチミケップ湖へ繋がる道道494号線(訓子府津別線)のオロムシ林道、オロムシ越林道などはいまだに未舗装のダート。数年前、これらの林道をキャンピング装備で走ったときはフロント3段が重宝したのだ。

こんな走りをするので、今回もフロントは3段として、フロントの26Tとリアスプロケットの26Tでなんと1:1を隠しギア比として持つことにした。

フロント変速機はマイクロシフト R539。リア変速機 はマイクロシフト R47。

クランク ストロングライト49D 170mm。チェーンリング ミドル イン TA 36×26 5500 、5000。ペダルは1970年代もののカンパレコード鉄プレート。これら脚まわりのパーツは過去ためてきた在庫からチョイス。

浅麓堂の中堀氏は、常々「パーツから自転車が生える」という独特の表現をするが、いつかはクランク ストロングライト49DとTAチェンリングとカンパレコードペダルを荘厳したツーリング自転車に乗りたいと思っていたので49Dから自転車本体が派生したとも言えなくもない。

ボトムブラケット シマノ BB-UN55 。チェーン シマノ HG71。スプロケット(フリーホイール) 12-26 8s。

スポーク DT チャンピオン 1.8 @65×64本。タイヤ グランボア シプレ 。

ブレーキ本体 シュエット 2632 モダン

シートテールライト KIREI USB LM-016

ハンドルステム トーエイ 70mm ベルは右側。

ハンドルバー 日東 #135ランドナー 420mm

近年の東叡社ではステムキャップの刻印は受け付けてくれないそうなのだが、そこは多少の無理を言わせてもらって、ネーム打刻印。べつに機能性は関係がない部分で、趣味に属する部分。

書物に著者の名を明示するように、自転車にもサイクリストの名を刻む。チンカンベルよりも、とっさのときは、大声で叫ぶのが利く。

シートチューブの裏側のスペースを有効活用し、ぎりぎりの空間<隙>を活用。ななめ左にずらしながらも、このわずかなスペースにポンプを収納する。おそらくは日本に数台もない処理のしかただと思われる。

脚に絡むことなく、BBから上、シートチューブの左後ろの隙にちゃんと収まる。

「隙」を上手に使うのが「数寄」だろう。数寄者は数寄モノを好む?

チューブ ヴィットリア @800×2。細かなところで、リムフラップは DEDAをチョイス。

玄さんシールが可愛らしい。

 

 

サドル BROOKS チームプロ。皮サドルは乗り込むと同時になじんでオンリーワンサドルに時の経過とともに変身してゆく。

自動代替テキストはありません。

ブルックスのカンビウムC17もぼちぼち試してみたい。

玄さん、いろいろなわがままを聞いてもらって、ありがとうございました。一生懸命走って、このかけがえのないツーリング自転車に磨きを掛けます(笑)!

新時代のキャリアデザインは3KX3F

カテゴリー : デザイン思考

画像に含まれている可能性があるもの:空、靴、飛行機、屋外

<岐阜城から長良川を遠望>

名古屋大学医学部附属病院キャリア開発支援センターにおよびいただき、アウトリーチ&講演に行ってきた。

「働き方革命」とかいろいろ議論があるが、①基業、②奇業、③起業、④福業、⑤副業、⑥複業が軸になるという話をさせていただいた。医療関係者の新しいキャリアデザインは3Kかけることの3Fとなる。

3K
①基業  専門性の基本をシッカリこなす仕事
②奇業 奇妙奇天烈なモノコトを仕事化する
③起業 自分で業を起こしてしまう起業
3F
④福業 まわりの人たちを幸福にする仕事
⑤副業 メインの仕事いがいに自分ならではのサブ仕事
⑥複業 複数の仕事をこなすスーパーフリーランス自由人

さて、時間を作って、長年の課題であった金華山の岐阜城に登る。20年くらい前だろうか、長良川のほとりのコンベンションホールで開かれた第1回日本看護サミットでパネルをやったことがあった。

その時に金華山を見上げて、あそこに登ってみたいと思ったのが最後で、結局仕事などに追われて、登る機会を逸していたのだ。

なんのことはない。働き方革命をああだこうだ言う前に、もしかしたら遊び方革命が必要なのかもしれない。

ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)たらんとするためには、仕事のなかに遊びの要素を織り込み、遊びのなかにも仕事の要素を含ませ、仕事を遊びを無境界化させるのである。

ホスピタリティXヘルスケアXデザイン思考融合の新たな地平線

カテゴリー : アメリカ

 
久しぶりにアメリカの東海岸に旅してきた。母校のコーネル大学で開かれたSymposium Hospitality, Healthcare, Design 2016に参加するためだ。
 
ああ、コーネルはいいなあ。return to my alma mater。豊饒な知に対するリスペクトと知的世界への探求心がキャンパス中に横溢している。尊厳、威厳、自由、探求、エンゲイジメント・・・そういったものが混然一体と、しかも統一さをもって顕現している。
 
Cornell Hospitality Health and Design Symposium 2016
 
この分野の研究成果:

”Systems’ Boundary and Fusion between Hospitality and Healthcare”

を一本発表して、あとはひたすら今書きつつある本の取材や社交。

共通の知人や旧知の友人との出会などのオンパレード。しかも、皆がこのシンポのテーマではいろいろな成果や社会的なアウトプットがある人たちばかりなので、めっぽうオモシロイのだ。

研究成果の発表もさることながら、今回の国際会議は今書きつつある本のネタ仕込みや取材といった点からも非常に重要なのだ。メモしてみる。
                                       
               ***
 
キュアからケアへシフトしてくると、サービスのありかたも、ホスピタリティが全面に出てくるようになる。
 
キュア文化というのは、治療すれば直ることが前提。キュアの価値とは、治って元通りに動ける、食べることができる、生活できる、働けるということだ。だから投薬、注射、手術などの介入行為が正当化される。
 
また、治療して治ることが前提ゆえに、苦痛、不快感、いごごちの悪さ、不便、不都合は、がまんすべきものである。
 
高齢者の慢性疾患や合併症に対する介入はもはやキュアだけでは有効ではない。なぜなら、多くの高齢者の慢性疾患や合併症は完治させること、直すことはできない。
 
むしろ、人生の最終局面を支えることが目的になる。キュアではとかく後方に「がまんすべきもの」として押しやられてきた、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便、といったものをケアすることが重要になってくるのである。
 
ここにおいて格差が影を落とす。富裕層は、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためにあらゆる手段、そして財力を投入することになる。
 
そのため、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するための営利動機に根差したイノベーションが盛んに巻き起こることとなる。
 
しかし、富裕層もいれば貧困層もいる。貧困層は富裕層に比べて苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消する機会にはさほど恵まれない。超高齢化と財源枯渇によって、このような把握しづらい価値に対する公共サービスは後手後手になる。公共サービスによって実現されない空白を埋めるNPO、NGO、社会起業家による、非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションに対する期待が大きくなる分野である。
 
以上を要するに、高齢者化現象とともにケアシフトが進むにつれ、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためのサービス分野のイノベーションが亢進してゆく。
 
富裕層に対しては、利潤動機に基づいた ホスピタリティ・イノベーションが影響力を持ち、中間層、貧困層に対しては、 非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションが影響を及ぼすことになろう。
 

Design Thinking Stanfordのd.school集中セミナー@東工大

カテゴリー : デザイン思考

Design Thinking! 

東工大にStanfordのd.schoolの講師の方々がやってきて、英語でレクチャーをしてくれるというので行ってみた。ただし、セミナーは録音、撮影は禁止というおふれが涙)。なので、webに転がっているイメージを拾ってきて、忘れないうちにメモしておこう。

まわりのみんなをワッといわせて、イノベーティブなモノゴトを繰り出すためには、なにをどうしたいいの?たんなるモノツクリじゃなくて、イノベーションにむすびつけるためにはどうしたらいいの?モノツクリ系キモヲタやめて、もっとカッコよく仕事をやり、気持ちのいいインパクトをつくり出すためにはどうしたらいいの?

それをdesign thinkingと呼ぶか、systems thinkingと呼ぶかは、もはや言葉のラベリングの問題だ。本質的にはdesignする対象はシステムになるのだから、design thinkingをsystems thinkingと言い換えてみ大差はない。

DesignXXXXXのXXXXXにあたるものは、カタチある製品のみならず、サービス、プロジェクト、政策、経験、感動etc…なんでもありだ。

サービス、プロジェクト、政策、経験、感動をシステミックにとらえることがキモなので目的語XXXXXはSYSTEMSとなる。だから、design thinking≒systems thinkingと言い換えてもいいだろう。

ただし、時代のムードやトレンドから見ると、designっていうほうが一般的な共感を得やすいし、fashionableだしウケもいい、そしてマーケティングのためにもよいのも事実だろう。。

結論、Design thinking = f (process, space, mindset)なり!

ポイント1:プロセス

①Empathize 分析とか批判から始めるんじゃなくて、肩の力を抜いてリラックスしてみんなでいっしょになって感じることから始めようよ。君ひとりで感じるんじゃなくて、お客さんやユーザーといっしょに感じることが大事だよね。身の回りをよく見つめること。そういった深い経験が大事だよ。

②Define で、それからお絵かきをするような感覚で、問題のありか、やりたいことを緩く固めてゆこう。なにがいったい問題なのかっていうことは問題にドップリ使っている人がなにをどう感じているのかを知ることが大事だよね。

③Ideation そしてアイディアを着想してゆく。いいアイディアを得るためには王道なんかありゃしない。いいアイディアを得るために一番いいやりかたは、とにかくいろいろな多くのアイディアを思いついてやってみるってこと。まわりのいろいろな人に自分のアイディアを聞いてもらい、意見や感想を聞くってことが大事だよ。

④Prototype その問題解決のためのアイディアをとにかくカタチにしてみる。アタマでごちゃごちゃ考えるよりも、目の前にソリューションを出してみることがキモだよね。これがプロトタイプ。モノ、サービス、ソフトウェアなんでもいいのさ。

⑤Test はじめから完全なプロトタイプなんかありゃしない。だから、それをテストしてみる。テストしてもらう。そして、いろんな人からフィードバックをもらう。新しい発見があるかもしれないし、飛躍もあるかもしれない。改善のタネは無限だよね。

ポイント2:スペース

いいプロセスはいい場所から生まれるものだ。カチッと仕切られた冷たい感じのオフィスじゃなくて、ワイワイ、ガヤガヤ話しこむこともでき、いろいろな考えをシェアすることもできて、実験もでき、衣食住もできちゃうような、そんな場づくりが大事だよね。

場っていうトコロにはいろいろな文脈が交わるんだ。その交わりを活性化させるような場ツクリが本質的にイノベーションを左右する。

多目的、マルチパーパス場ってのもいいよ。スタンフォードでは、だだっぴろい部屋にカラフルなカウチ、椅子、ホワイトボード、ソフトドリンクを放り出しておいて、後は参加者が勝手にそれらを配置して、その場その場の目的に応じて使っているよ。

ポイント3:マインドセット

①Radical collaboration とにかく、まったく異なる人の組み合わせをラディカルになってみようよ。売春婦とIT技術者と警官。医者と詩人とオーケストラの指揮者。起業家とシステム思考専門家とサイクリスト。世の中には、奇想天外な組み合わせはゴマンとある。おなじような考え方をするヤツラが集まってもあまり、いいアイディアは生まれないよ。

②Bias toward Action やってみることが大事だ。観察して、考えて、批判する。でも大事なことはとにかく具体的な行動を起こすこと。前にも言ったように、例えば、具体的なプロトタイプをひねり出してみるという行動。とにかく行動が大事だよね。

③Focus on Human Value 人の側に立って価値を考えてみよう。だってソリューションってのは人の役に立つような価値を生み出すことだろ?安全、安心、使ってみて気持ちがよくなる、おおっ、これスゲー!!!っていわせるような価値がそこから出てくればしめたものだよね。

④Embracing experimentation でもすぐに、スゲー!!!っていうようなソリューションがボコっと生まれるほど、世の中は甘くない。やってみて改善を加える。試行錯誤を愛する。こういった実験スピリットをとことん愛することが重要だ。

⑤Crafting Clarity 手先を使ってモノゴトを明瞭に、ハッキリとカタチにしてゆこうよ。いいモノゴトはいいプロセスから生まれるものだ。そして、いいプロセスは明確なモノツクリ、コトツクリに繋がってゆくものさ。

⑥Show it / Don’t Tell そうして出来上がったものは、それがマジでスゲーってものならば、それが自ら語りだすんだよね。そこで、あーだこーだ君が語る必要なない。だから、創り上げたモノを見せることが大事だ。

⑦Mindful of Process さっきも行ったように、イノベーティブなモノコトつくりには、とにかくプロセスが大事なんだ。いいプロセスの流れを生み出すように気をつけよう。五感を総動員して、アンテナを高くね!そうすれば、なにかいいことがあるよ!

 

                    ***

いやー!タメになりました。忙しいなか行ってみてよかった、よかった。イノベーションを創発させてゆくためには、複雑な悪構造問題にソフトシステムズ・アプローチを取ってゆくことが必要だが、そんなカタイこといわなくても、もっとポップで明るくやっちゃいましょう。こんなwest coast風のノリが今世界じゅうでウケているんすね。

今書いている論文、いろいろなもの、サイクリング・プロジェクト、起業ファシリテーション、サービスイノベーション創発支援のための各種プログラム、問題解決技法、目標管理、バランススコアカード、アウェアネス研修、いろいろな場にすぐ使えること間違いなし。 さっそくとりかかろう!

参考サイト:

今回のセミナーのポスター

オープン道場講演会

イノベーションとデザイン思考 

デザイン思考のポケットガイド

参考書:

セミナーに参加する前に読んでみた本、「デザイン思考が世界を変える」

 このセミナーで紹介された本、「メイクスペース:イノベーションはこんな場所で起こる!」

ヒューマニチュード

カテゴリー : ケア

 

Humanitudeは、英語読みをすればヒューマニチュードと発音するが、フランス語では”h”は発音しないので、ユマニチュードと読む。なので、以下ユマニチュードで。

これは、フランスのイヴ・ジネストとマレスコッティが提唱するコミュニケーションに力点を置いたケアリング手法の体系だ。介護が中心だが、日本の医師や看護師にもこの体系を取り入れて大きな成果を出しているケースが増えつつある。

さて、新生児は、オンギャーと生まれてから(第一の誕生)、家族など周囲の人間との関係性を経て「人間」として成長してゆく。これをユマニチュードでは第一の誕生と対比させて、「第二の誕生」とか「社会的な誕生」と呼んでいる。

第二の誕生では、他者との関係性の中で信頼関係、人間関係、絆などが生る。これば、ソーシャル・キャピタルに近い概念だ。ユマニチュードのユニークな点は、これを4つの人間の基本的な機能、つまり、①見る、②話す、③触れる、④立つ、に分類する。

第二の誕生で大切なのは、愛、優しさ、人としての人権の尊重。人は老いれば、身体機能や認知機能が低下する。これはどうしようもないことだ。このような状態を、ユマニチュードは肯定的に「第三の誕生」と呼ぶ。この点もユニークだ。

このような構えをベースにして、「第三の誕生」以降をケア、支援するものとして、様々な具体的な方法論がある。たとえば、

・介護者や医療者がこれから患者である老人に対して行うことを老人に同じ目線で、ゆっくり、しっかり語りかける。

・正面から患者の目を優しく見つめる。

・患者の身体に触れるときは掴む様な持ち方をせずに触れるようにする。

・赤ちゃん言葉や子ども向けの言葉は使わず、大人として接する、etc…

ユマニチュードの体系は、美しい階層構造を成している。つまり、(1)コミュニケーション方法・技法体系、(2)方法論、そして、(3)哲学である。これらによって普遍性と具体性をソフト・システムとして担保している。参考ブログ、その1その2記事

なので、いろいろなケアリングの場面のケアサービスをデザインできるのだ。緩和ケア、特養、口腔ケア、I在宅介護、訪問看護、デイサービス、ケア付き高齢者専用住宅・・・・・などのケアリング領域もさることながら、案外、ICUやCCUを含めるキュア領域にも活用可能だろう。

さて、サービスの提供者側は、技術的品質を高めるためにクリティカルパス、基準、手順など設計品質の側面から入ることが多い。ところが、顧客である患者が体感する品質は、設計品質ではなく、知覚品質だ。知覚品質は、さらに関係性品質に大きく左右される。

ヒューマン・サービスという観点で見ると、ユマニチュードの技法は、知覚品質と関係性品質の側面から、患者満足を高め、そして臨床的効果を高めることを狙ったものだ。そして、メタ思考を規定する哲学的フレームから、ソリューションとしての具体的な方法論、方法が整っているのが素晴らしい。

医療・保健・福祉の専門分野は、タテ割りのハードスキル教育が幅を利かせている。ややもするとバランスを欠きがちになるこれらの体系に必要なものは、リベラルアーツ(自由文芸七科目という狭義のそれではない)であり、専門分野横断的なソフトスキルだ。ユマニチュードは日本の保健、医療、福祉サービスの足りない部分を真正面から衝いている。

以上のような点から、ヒューマンサービスの新しい方向として注目なのだ。

 

抜苦与楽とデザイン思考

カテゴリー : デザイン思考

(この図表のソースはコチラから)

「デザイン思考」という考え方が、ものことづくりの現場やいろいろなラボで流行ってきている。モノツクリのデザイン思考は、モノを使う人間を中心に置いて、使い勝手やモノがもたらす価値をいかに見せるのか、見える化するのかというけっこう複雑な表現系の考え方となる。次世代のMOT(技術経営)などでは、デザイン思考は大きなポイントになるはずだ。

では、健康・医療・保健・福祉などの広い意味合いでのヒューマンサービスに「デザイン思考」を持ち込むとどうなるのだろう?もともと、サービスはモノと素朴に比べれば、タンジブルなかたちがない、触れない、保管が効かない、その場で生まれ消える、そして、目に見えずらい、という厄介なシロモノだ。

さて、仏教の方には「抜苦与楽」という言葉がある。

この言葉、もともとは「仏や菩薩が衆生の苦しみを抜いて福楽を与えること」をさすが、転じて、人はみな、まわりの人々の苦痛に寄り添い、できれば苦を抜いて、ポジティブな楽しみ、愉しみを与えるように生きよう、という教えにも繋がっている。好きな言葉の一つだ。

モノの「デザイン思考」ではどちからというと「与楽」が大きな位置を占める。一定の健康に恵まれ、仕事でさらに効果、効率、生産性などを楽しみながら上げてゆこうというイノベーションだ。この記事に紹介されているように、新しいデザイン思考で注目を浴びつつあるスタンフォード大学のd-SchoolIDEOのソリューションを見えても「与楽」の側面が強い。

それに対して、ヒューマンサービスでは、「抜苦」に相対的な比重が置かれている。たとえば、がんを患った時などに利用する緩和ケアサービスでは、「苦しみ」といかに寄り添って付き合ってゆくのかというソリューション(問題解決)が求められる。それも、上の図に示されているように、一言で「苦しみ」と言っても、身体的苦痛もあれば、社会的苦痛や精神的苦痛もある。そして、もっと深くて「意味」的で「価値」的なスピリチュアルな苦痛が横たわる。

現在、プロとして緩和ケアを提供している知人・友人もいれば、期せずして緩和ケアを利用している知人・友人もいる。双方に接していることもあり、余計に身につまされる・・・。

解決されるべき問題=苦しみをいかに見せるのか?そして共有するのか?それらができてはじめて、問題解決の糸口を得ることができる。しかも、「苦」は、他者にはじつのところわかりづらい、本人の主観や価値観に大きく左右される、非常に多面的でかつ不定形だ。そして「苦」は、「苦」を背負う人の過去、現在、未来を繋ぐ複雑な文脈に埋め込まれている。

「人間性の面からイノベーションをもたらすための方法論」がデザイン思考であるとするならば、人間にとって避けられない苦を「抜苦」してまさにバックサポートするヒューマンサービスシステムにこそ、新しいデザイン思考の方法論が必要だ。

 

年末あれこれ

カテゴリー : デザイン思考

(年末、書斎におさまった我がアルプス号)

師走。

やっと年内の授業、招待講演、学会発表、コラムなどの仕事が一段落して、書斎の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を敢行し、自転車を整備した。とはいえ、まだヘビーな英文原稿(ある本の1章分)が1本あり、これは1月始めあたりまでにゴリゴリやって仕上げたい。

さて、2012年は、日本国内では客員教授をつとめている札幌市立大学看護学研究科がある札幌から、医療マネジメント学会が開かれた九州佐世保まで、いろいろ動き回った年だった。

もっとも、招待講演に呼ばれるのは、以前から医療・保健・看護サービスマネジメント関係のテーマが多く、今年も例年と同じようなパターンだったと言える。ヘルスケア関係では、中央アフリカのコンゴ民主共和国まではるばる出かけて行って保健省の関係者の方々にお話をさせていただいたのが、最遠だ。

MOT(技術経営)関係の講演(もちろん授業は除く)は5回ほど。ヘルスケアは25回あった。単純にいえば、製造業を中心とする技術経営系よりも、医療・保健・看護サービスマネジメント系のほうが、ヒキがいい。世の中のニーズと自分の問題解決提案能力が重なる部分の面積において後者は前者の5倍ってことになる。

専門家のハシクレとして、専門的なウンチク、ノウハウが世の中のお役に立てることができるのならば、よほどスケジュールにムリがない限り対応したいものだ。

技術経営系のニーズよりは、医療・保健・看護サービスマネジメント関係のニーズのほうが5倍もあるとしたら、ここは、後者にさらに力点を置いて、問題解決提案能力にミガキをかけるのが、定石だ。戦略論を引っ張ってこれば、それが、比較優位(comparative advantage)。

ざっくり言えば、マネジメント(まさにブログのタイトル)のレバレッジ(テコ)をあてがう先として、ものつくり系の技術なのか、医療・保健・看護・福祉・介護系のものことつくり系サービスなのかっていう問題でもある。

選択と集中。

「あれもこれも」から、「あれかこれか」

(ランニングコースは黄金のカーペット・・)

・・・ということで、2013年は医療・保健・看護サービスマネジメント系の研究、教育により注力したいものだ。そして、これらのワーク系をアウトドア系のアクティビティいかに臨機応変にむすびつけてゆくのか?という発展的なテーマがある。

この発展的なテーマのほうが、じつは楽しいし、真剣にもなれるのだ。しょせん、仕事は手段であって、目的は高次元のアソビのほうが自分の性にあってるってことか・・・。

ワークとホビーの融合的・統合的デザイン思考を拡げてみると・・・・

その1:北海道自転車キャンピングツーリング

 札幌市立大学の集中講座とからめて企画!来年は道南か。

その2:イタリア半島縦断自転車ツーリング

 とある国際学会にからめて画策中。でもアブストラクト、フルペーパーなどハードルは高い。まずは手堅くいきたい。

その3:ニュージーランド自転車ツーリング、アウトドア

 息子の交換留学とからめて実現できれば面白そうだ。

その4:ランニング

 最低限、早稲田駅伝には出走する。できればハーフ、フルマラソンも!

その5:インド自転車旅行

 昔からの仲間を焚きつけてなんとかやりたいものだ。来年というより、中期的なプランだ。

その6:清里山荘リノベーション

 標高1300mにある山荘をリノベートして秘密基地のグレードアップ画策中。

             ***

年末年始にかけて、時間がつくれるので、そのあたりのことを純粋に、不純(笑)にじっくり考えてアクション・プランを立ててみたいのだ。。

 

近畿中央病院での講演@サンシティパレス塚口

カテゴリー : ものつくり

ちょっと前の話(2012年3月17日)になるが、近畿中央病院から招待講演に呼ばれた。その近畿中央病院は、すぐ至近にある高額所得者(ストック面)向け介護付き有料老人ホームのサンパレス塚口と、「医介連携」を行っている。その流れで、近畿中央病院での僕の講演がサンパレス塚口で行われたのだ。

格差が拡大しつつある社会において、ストック、フロー両面で裕福な階層にターゲットを絞り込んだ介護付き有料老人ホームである。入居者には、関西財界で名の知れた企業の元社長、役員が多いという。

設計はすべてアメリカのランドスケープアーキテくトを起用し、日本にゴマンとある介護付き有料老人ホーム特有の無機質なクササを排除し、高級ホテルのアメニティを彷彿とさせるシックでエレガントな雰囲気に満ちている。壁、窓、調度品、庭にいたるまで、一貫性のあるケアリング・コンセプトで、デザインされている。

講演会の前の晩と翌日の朝食は、サンパレス関塚の運営会社ハーフ・センチュリー・モアの社長、金沢有知さんとご一緒した。有知さんは金沢富夫氏の息子さんで、その昔、アメリカに渡る前、僕は金沢富夫氏が経営していた会社に勤めていたことがある。

そんなことから、温故知新となったのだ。

さて、入居者は、孤独になりがちだという。いかに、信頼、相互扶助、絆といったソーシャル・キャピタルを入居者間、そして入居者の従業員のネットワークの中に共創(co-create)していくのかが今後の課題だと伺った。そのために、CRM(カスタマー・リレイションシップ・マネジメント)システムなどを導入して、従業員の間で、個々の入居者の生活ログなどを共有してキメ細かなサービス開発の途上にあるそうだ。

高齢化が急速に進む一方、格差も拡大している日本。ここに入居している方々は、そんななかで、なんとかシノギきり、潤沢なストックを活用して、人生の折り返し地点から後半のライフスタイルを良きものにしたいと願う階層が中心だ。

サンパレス塚口は、そのようなニーズに対してのサービス・オファーリングである。

介護と、まちづくり、地域開発は、従来、まったく個別に行われてきたが、ハーフ・センチュリー・モアの取り組みは、なるほど、自由市場における民間イニシアチブによる、それらの統合という面がある。介護サービスのトップニッチ市場での、ひとつのケアサービスイノベーションの試みなのだ。

                                                 ***

ここでのケア・サービス・イノベーションの姿をちょっと一般化してみると:

ケアシステム=(モノ、コト)

Care System = ( Creating thinghood,  Caring relation )

where,

モノ→ハードウェア→ ケアリング・デザイン&アメニティ・デザイン

 (建物、屋内外施設、部屋、風呂、廊下、中庭、ガーデン、図書室、レストラン、ティールーム、などなど・・)

※ケアシステム実現のためのモノツクリの課題

コト→関係性:ソーシャル・キャピタル→ ヒューマン・サービス・デザイン&ケア共創のための関係性マネジメント

 (入居者間関係、入居者従業員間関係、地域の医療機関間関係・・・・)

※ケアシステム実現のためのコトツクリ=関係性つくりの課題

                                                 ***

・・・のようになるのではないか?

いずれにせよ、古い記憶がよみがえり、新しいモノゴトのシャワーに触れたような、とても印象深い講演だった。

 

複雑系適応システムズ(complex adaptive systems)

カテゴリー : No book, no life.

複雑系適応システムズ・・・

複雑性はそれを見る人の目のなかにある・・・と言われるように、システミックなモノゴトを見る時には「構え」が本質的に大事になってくる。

2011.3.11の3日前のことだ。東工大の木嶋先生に呼ばれて、THE FOURTH ANNUAL WORKSHOP AND OPEN SYMPOSIUM ON SERVICE SYSTEMS SCIENCEに参加させていただいた時に、Mary C. Edsonさんと知り合った。

聞けば、学部はCornell hotel admin.ご出身とのこと。彼女が、COMPLEX ADAPTIVE SYSTEMS についてピリッとした秀逸なペーパーを書いている。しばらくして想い出し、一読。う~ん!こういうまとめ方、あったんだ。

SUMMARY OF THE FOURTH ANNUAL WORKSHOP AND OPEN SYMPOSIUM
ON SERVICE SYSTEMS SCIENCE AT TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY
Kyoichi Kijima, Ph.D. and Mary C. Edson, Ph.D. Tokyo Institute of Technology, Department of Value and Decision Science, Tokyo, Japan

Mary C. Edson:GROUP DEVELOPMENT: A COMPLEX ADAPTIVE SYSTEMS PERSPECTIVE

Mary C. Edson:A COMPLEX ADAPTIVE SYSTEMS VIEW OF RESILIENCE IN A PROJECT TEAM

 

院内起業家だらけのワクワク府中病院

カテゴリー : アントレプレナーシップ

(2012/02/03 医療サービスマネジメント調査でインタビュー)

病院っていうのは、ワクワクするような所ではない。医療崩壊が喧伝される昨今、そこで働く医療スタッフも疲れ気味だ。でも、生長会府中病院のスタッフはとてもイキイキしている。それが一歩この病院に足を踏み入れた時の第一印象。

それもそのはず、5000万円もの大金をかけて、スタッフがツアーを組んでフロリダのDisney Landまで行って、カスタマーサービス、サービスシステム、サービスの進化のさせ方、コミュニケーションなどを実地に学んだそうだ。(いいなあ)

現場がエンパワーし、ワクワクしている。そのカギは、TQM(Total Quality Management活動)のシステムのかませ方だ。TQMが院内起業家(In hospital entrepreneur)の孵化器のようなハタラキをしている。そして、ワクワク人材が、ヤラサレ感覚なく成果を着実に出している。

<出所:府中病院資料>

この病院には、「サービスクリエーションプロジェクト」(Service Creation Project)なるものが動いており、人材→ソフト→職員部門、建物→ハード→環境部門、業務→プロセス→業務部門、顧客→アウトカム→顧客部門というように大きく分けて、教育チーム、表彰チーム、美化チーム、QC推進チームが活動している。2001年から開始し、2010年には112ものQCサークルが活発に蠢いている。

①抗ガン剤に関わる業務統一化、②産科外来のシステム変更(助産師のスキルアップ→医師と助産師の交互診察システム→助産師外来2診体制)③Drug information業務の標準化など、ボトムアップ、ミドルアップ、トップダウンの上下循環運動、せめぎ合い運動で成果を生んでいる。成果を出すために動いてみる→試行錯誤する→改善する→成果が出る→成果を計測しフィードバック→新たなテーマアップ、というサイクル。

<出所:府中病院資料>

カサカサに形骸化した目標カンリではなく、むしろ、サービス・アクション・リサーチサイクル(service action research cycle)が、5S、TQM、目標管理というツール系のプラットフォームの上で躍動している。

大半の医療機関では、5S、TQM、目標管理などに取り組みながらも、いわゆる「上からのお仕着せ」感覚、「ヤラサレ感覚」で動いているので、アクションリサーチのサイクルが回っていない。

もっとも、医療機関はサービス組織なので、バリューチェンはものつくり製造業のように長くはなく短い。なので、異なった職種間や部門間のダイナミックなネットワーク(dynamic networks of interactions)ができれば、カイゼンはそんなに難しくない。難しいのは、融通無碍なごちゃまぜネットワークを組成させることだ。

組成させるって書いてしまったが、実は、組成させるんじゃなく、自然に組成させる・・・つまり、自己組織性原理をいかにイキイキ発動させるのかがキーポイントだ。このようにして、府中病院は、既存のマネジメントツールをみんなで使いこんで、複雑対応的組織として進化している。

病院というサービス組織を複雑対応的組織に進化させてゆくためのヒントに充満している。

 

 

アメーバになった病院

カテゴリー : ケア

(2012/2/03医療サービスマネジメント調査のためインタビュー)

まさか、病院という建物がアメーバのように半透明になったわけではない。

松下記念病院は、京セラ式の「アメーバ経営」を独自に医療機関向けにカスタマイズした手法をフル活用することで、おおいに成果を上げている。山根哲郎病院長の柔軟なリーダーシップに負うところが多いと思う。

さて、失礼を承知で言えば、病院には多くの「伏魔殿」があるが、その一つが「看護部」という組織だ。「看護部」は、通常、直接サービスを発生させる部署ではなく、入院、外来、オペ室などが行っている直接的な看護サービスに対して、人事、総務、教育、システム支援、調整、目標管理、イノベーションへの対応支援などのサービス・オン・サービス(service on service)を行っているサービス管理のための部門だ。

その業務の本質は、病院経営全体へのサービスを行う管理部門(昔は事務部ということが多かった)と同型である。

山根病院長は、その本質に気づき、「看護部」を事務部門へ統合した。ただし、本質に気がついただけでは、ここまでの変革はできないだろう。大方の「看護部門」は、「事務部門に統合~~」と聞いた瞬間に拒否・拒絶反応を示すのは目に見えている。

スタッフの時間あたりの生産性の見える化がカギだ。

収入、経費、時間の3要素で時間当たりの付加価値を計測して、見える化すると、そのプロセスで、各スタッフや部門が、自律的に時間当たりの付加価値を高めるように、整理・整頓・清掃・清潔・躾などの改善活動に積極的に取り組むようになったという。

その結果、直接的に収益を生み出さない「看護部」の性格と問題が明らかになった。そして、多くの議論の末、「看護部門」は「事務部門」に統合された。

こう書いてしまうと簡単なようだが、その変革を可能にしたのは、精神論、使命感、ヤル気といった抽象的なものではない。ツールつまりメソドロジー(方法論)である。

マネジメント、経営には適切なツール(メソドロジー)が必要で、それによって得られたデータを共有することによって、やりとりのダイナミックなネットワーク(dynamic networks of interactions)、ひいては自律的な医療チームが自己組織的に生まれ、組織変革に結びついてゆくのである。松下記念病院の場合は、そのためのツール(メソドロジー)が京セラ式の「アメーバ経営」だ。

組織の基本=5Sという組織と仕事の基本となるカイゼン志向のワザ(メソドロジー)と、マネジメントを刷新していくイノベーション志向のワザ(メソドロジー)=京セラ式の「アメーバ経営」を融合させたという点で、大変参考になると思う。

換言すれば、ワザありとワザありの掛け算で、一本だ。日本のような複雑な医療環境を持つ先進国で、複雑適応的システム(complex adaptive system)へと変革してゆくためには、合わせ技が必要だ。

複雑適応的なメンタルモデルを持つリーダーが、自己組織性を着火させるようなモノゴトを、そっと組織のなかに仕込み入れ、いろんなエージェントを巻きこんで、組織変革をやらせてしまうという組織デザイン思考(organizational design thinking)が必要だ。

日本の医療機関で複雑適応的システム(complex adaptive system)を体現している組織を調べることは興味深い。

Tech X Entrepreneurial X Community X Design

カテゴリー : イノベーション

コーネル大学は卒業生コミュニティとのコミュニケーションに力を入れていて、定期的にAlumni向けの大部な雑誌を送ってきます。上は、そのなかのひとつでLinkというHuman Ecology学部のAlumni向けの雑誌です。

特に卒業生のactivityをしている記事が面白いです。大学の成果には、学術論文、知的世界への貢献、教育研究活動などいろいろがるが、世界にちらばって活躍しているvisualな卒業生という存在を抜きにはできません。

当たり前ですね。

で、けっこう驚いたのが、卒後5~20年でいろいろ活躍している人達の仕事の中身の特集。これがまた面白い。

オーガニックフードの熱狂的陶酔者として、だれにでもできるオーガニックフードのレシピを開発して、何冊かの著書を書き、参加型コミュニティを創って多地域にスケールアウトさせているAllison Fishman ’94。

医科歯科志望学生のための医学部、歯学部のinside report(現役の学生がレポートしてそれを編集するスタイル)を一冊の本にしてベストセラーにして、ロースクール向けの同様の本を書いて二つの山を当て、今はオンライン出版のstartupを経営しているBruce Stuart ’86。

環境保護運動で反州政府活動のコミュニティを地道に20年以上つづけ、とうとうメリーランド州の法律改定にまでこぎつけた研究者のGablielle Tayac ’89の物語などなど。

見えてくるのは:

 

   エッジが効いた専門性 

     X 

    起業家的チャレンジ 

          X 

    コミュニティ創発 

          X 

 クリエイティビティの発露としてのデザイン

    X

   (自分情報の発信)

    X

    (ギリギリ世の中に受け入れられるエゴの境界設定)

      

(健全な承認欲求と自己抑制)

 

….で周りの世界にengageしてゆくというキャリア開発の方向性。

どこぞの大企業や官公庁に入って苦節20-30年、やっと役員になりました、社長になりました、局長になりました、大臣になりました、パチパチと拍手ご喝采的なキャリアの人は、リスペクトもされないし、憧れの対象ともなりません。

おきまりの大企業、官公庁、国際機関で働くってことは、もはや(というか30年以上も前から)inでもtrendyでもないのです。そうではなく、edgeが効いた専門性を活かして、entrepreneurとして「自分というパッケージ」を編集して世の中にエンゲージしていく、そしてフラックス(flux)、つまり、とめどもなく流動的な状況の中でも流されずに、フラックスのなかで文脈をつくり楽しめる人。

そういう物語りを描きたい人に大学に来てほしいし、卒後、そうなるのがいいですよ、、というメッセージなんですね。

この雑誌のオンライン版もあります。

 

第13講:中国人と仲良くする方法(チャイナ的人間関係への棲み込み)

カテゴリー : アメリカ

 様々な矛盾を抱える中国だが、今後中国市場は日本企業を含め外資系企業にとって何としても食い込みたい金城湯池だ ろう。中国ビジネス成功の秘訣は「人間関係」だが、日本語でいう「人間関係」と決定的に異なる「チャイナ的人間関係」の機微を知らなければ、チャイナ社会 への食い込みは無理だ。そして食い込むためには「棲み込み」が必要となる。

 昨年、中国の清華大学と大連理工大学を訪れて、学術や財界で活躍する方々と親しく意見を交換する機会を持った。中国人の方々と囲む会食は楽しいものだが、よく話題になるのがビジネスパートナーの作り方、人間関係の構築方法である。

 国と国、企業と企業、大学と大学、すべての関係性の出発点は個人と個人のやりとりから始まる。文化・歴史・商習慣の背景が異なると、もちろん行き違いは多くなる。だからこそ、この行き違いのリスクを軽減させることによるメリットは計りしれない。

 真のビジネスパートナーとは、「第12講:古今東西、CIAの対日工作にまで通底する『孫子』の系譜」で論じたような共同謀議、つまり、共に謀(たばか)りを企てるほど親密かつ戦略的な関係のことをいう。中国企業と競合して謀りを企てたり、知的財産権がらみの偏頭痛を被っている企業ももちろんある。筆者の周りにもまた中国ビジネスで悲惨な目に遭っているケースは多い。

 日本企業側の経営戦略の稚拙さもさることながら、おうおうにして人間関係のハンドリングで過ちを積み重ね、結果としてビジネス面で泣きを見ることが多 い。そこで今回は、前回の講義で紹介した『孫子』の『用間篇』に続き、「チャイナ的人間関係」の機微について考えてみよう。

 

チャイニーズ・ビジネス達人のコンピテンシー分析

 とある大企業に鮫島寛一(仮名)という中国ビジネスについて達人級の黒幕的なプロがいる。この人物は、中国政府、中国共産党、企業、大学に独自の人脈を持ち、この人がいなければ、その会社の中国ビジネスはまったく進まない状況だった。

 その企業は、第二、第三の鮫島氏を育成しようと躍起になっており、その人材開発プログラムづくりの一環として鮫島氏のコンピテンシー(能力特性・行動特 性)を分析してくれと筆者に依頼してきたのだ。そこで、異文化対応型ハイパフォーマ分析(high performer analysis)を行うことになった。

 まずはコンピテンシーについて少々解説しておきたい。

 コンピテンシー研究に関しては、人的資源管理論(human resources management)における蓄積が顕著である。その世界的な学術的潮流の中核に位置しているのは、「Hay McBer」と呼ばれる、人的資源や組織行動のマネジメントに特化したコンサルティング・ファームである。ハーバード大学のマクレランド教授が創設した会 社である。

 ロバート・W・ホワイトは有機体のメタファを組織論に延用することが流行った1950年代に、コンピタンスを「環境と効果的に相互作用する有機体の能 力」と定義した(White 1959)。しかし、マクレランドはコンピテンシーを、「達成動機の研究を基盤にして人的資源に内在する適性である」ととらえたのである。それゆえに、コ ンピテンシー(competency)とコンピタンス(competence)は似た用語ではあるが、術語としては異質なものであり両者は異なる。

 マクレランドの系譜で初期のコンピテンシー研究をリードしたボヤティスによれば、コンピテンシーとは「動機、特性、技能、自己イメージの一種、社会的役 割、知識体系などを含む個人の潜在的特性」である(Boyatis 1982)。その系譜を発展的に継承した中心的研究者でマクレランドの系譜に立つライル・スペンサーによれば、コンピテンシーとは、「ある仕事や場面で、 外部基準に照らして効果的、もしくは優れた業績を結果としてもたらす個人の基礎を成す特性」を指す(Spencer 1993)。

 ライル・スペンサーの本は、「コンピテンシー・マネジメントの展開」として日本語訳されており、人事関係あるいは部下をお持ちの読者ならば必読書として 薦めたい。実は筆者とスペンサーは、同じHay Groupにいたこともあり、ベルギーなどで会っては教えを請うたり、議論したりしてきた間柄だ。

 さて件の鮫島氏には、リーダーシップ、対人関係能力、イニシャティブといったコンピテンシーには人を抜きんでたものが備わっている。しかし、彼に潤沢に 備わっていて、他の中国ビジネス担当者に欠落しているものは、濃密なチャイナの古典と社会に対して、自分を放ち、棲み込むくらい積極的で濃密、かつ極めて 特異な属人的性向である。

 彼は高校生のころから漢文、漢籍(中国の書籍)に親しんでいて、中国の要人と接するたびに仕事のことはさておき、中国古典に関する意見、知見を交換して きたのだ。不明な部分があれば手紙で質問したり、後日、研究して新しい解釈を開陳したり、という具合に。鋭い質問に相手が答えられない時は、その相手は、 大学の先生や読書人(知識階級に属する人々)を紹介する。そうして、鮫島氏のまわりには、自然と人脈が形成されることとなった。

 こうして鮫島氏は、インナーサークルの機微な情報・知識を共有するキーパーソンになっていった。必然的にビジネスも彼のまわりに属人的に形づくられるようになっていったのだ。

認識人、関係、情誼、幇会とともに深まる人間関係

 「そうか、中国の古典を学んで、その知識を中国人に開陳すればいいのか」と思われる向きもあろうが、それはあまりに短絡的だろう。鮫島氏は、中国の古典のみならず、中国の人間関係の法則を熟知しているのだ。

 中国では、宗族と呼ばれる親族集団の内か外かで、まったく人間関係が異なる。宗族とは、共通の祖先を持ち父系の血縁で結ばれていると考える人々によって 組織された集団である。彼らは同じ姓を持ち、祖先祭祀や族譜(一族の家系記録)の編纂などの活動を行う。また、同じ姓の男性と女性とは結婚できないという 同姓不婚の原則がある。

 宗族外にいる日本人としては、中国ビジネスを進展させるためには、インナーサークルの人間関係、つまり「認知人(レンシーレン)→関係(クアンシー)→ 情誼(チーイン)→幇会(パンフェ)」と呼ばれる人間関係の濃密さを絶対的に強めてゆく集団に受容される必要がある。ちなみに認識人とは日本語の「知人」 に近いニュアンスを持つ。「関係」は文字通り、認識人よりも特定の文脈で深い仲、つまり関係を持つ仲。さらに情誼は深い人情と誠意とともに濃密な利害関係 を共有する仲である。「幇会」は、より強固で排他的な仲間関係となる。

 認識人→関係→情誼→幇会に連なる非公式的な人間関係はいわばチャイナ社会の法則(図1)。外延部では契約が権利義務の関係を規定する が、中心に向かうに従って契約ではなく人間関係そのものが権利義務を左右するようになる。チャイナ社会が、いまだ法が支配する法治社会ではなく、人間関係 が支配する人治社会であるといわれる、1つのゆえんがここにあることに注意されたい。

 チャイナ社会の法則

 
図1●チャイナ的人間関係

 

 売官、土地の使用権利の不正移転、貸付金の私的流用、課税を違法に減免してキックバックを得る、密輸、汚職、贈収賄といった腐敗現象が、全国の中国共産 党組織や警察組織にまで蔓延している。これらの腐敗は、幇会が穏密に発達していることと無関係ではない。中国の腐敗分子の特徴は、インフォーマルな利益共 有集団を形成して不正な利益を獲得するシステムを囲いこむことであり、そこには幇会の原理が発動している。
 
 腐敗は共産党が管掌する人事部門、行政の中心である省委員会、宣伝部、民法院、検察院、公安局まで広範囲、かつ深部にまで及び、腐敗を作るのは共産党党 員がほとんどである。だから、中国では、共産党党員を対象に紀律(規律)違反、法律違反ケースの受理、調査、処分を行う専門部局である紀律検査機関を設置 せざるを得なくなっている。

 ちなみに中国企業や行政機関との契約でトラブルを起こす外資系企業が後を絶たないのは周知の事実。チャイナ社会での契約は、認識人→関係→情誼→幇会と いうように、人間関係を深めてゆく入口に建てる“一里塚”みたいなものだ。つまり契約の締結は、本格的な関係構築を始めるスタート・ラインくらいに思って おいた方がいい。そして関係が濃密なものになるに従って、法治主義の要の契約の位置づけは薄くなり、代わって前述した幇会的な人治主義が断然優位となって くる。チャイナ社会における契約の位置づけは、「第7講:ユダヤの深謀遠慮と旧約聖書」で解説したような、西側諸国のユダヤ・キリスト教的「契約」に淵源する資本主義の契約関係とは異質なものだ。

 社会主義市場経済の大きな矛盾は、市場経済によってもたらされる利益を、社会主義を推進する共産党組織内の幾千万もの幇会が不正に搾取し、その腐敗を共産党が摘発するという自家撞着の構造にある。

 その上で「チャイナ的人間関係」に入るためには、認識人、関係、情誼、幇会に関する深い理解とともに、特殊な文脈へ自らをディープに埋め込むことが必要 不可欠だ。鮫島氏は、四書五経(『論語』『詩経』など儒教の書物の中で特に重要とされるもの)をはじめとする漢籍に関する教養がその契機となった。

 今日では、論語などを積極的に学校の授業に取り入れて儒教の再評価が進んでいるものの、中国共産党は、長年、特に文化大革命期には「儒教は革命に対する 反動である」として儒家思想を徹底的に弾圧した。よって、学齢期が文革期と重なっていると、知識人でも四書五経の知識は限られている。

 「ほほう、中国人でも知らない古き良きことを深く知っている鮫島はたいした者だ」と思う隣人が次第に増え、「日本鬼子」(リーベングイズ)と悪口を言う代わりに、四書五経や武経七書について彼と語り合う人々が増えていったのだ。

チャイナ的人間関係は制度変革を超越している

 「幇」には、公式的・公開的な「幇派」と非公式的、秘密主義的な「幇会」とがある。さらに幇派には、血縁(同姓の親戚グループ)、地縁(省、県、郷、 村)、業縁(業種、業界、専門職)がある。幇会には、政治的な利害を共有するもの(洸門、三合会、致公堂など)と非公然的な反社会的勢力(天地会、海陸山 など)がある。
 幇派、幇会のいずれにせよ、「幇」の性質として一度契りを結んで仲間になれば、強固に排他的な仲間関係(自己収束的な集団)を形成していく。幇は中国に 独特な行動様式を形成してきており、幇という集団が消長する歴史が千数百年間も繰り返されてきている。チャイナ社会のシステムを維持する方向で作用してき たのだ。

 湯武討伐、易姓革命、儒学官僚支配、共産党一党独裁のように中国社会の体制を外形的に規定する原理は変遷してきたが、幇は中国社会に内在していて一貫して機能してきたと見立てることができる。つまり、幇はチャイナ社会を形成する内在的な社会システムなのだ。

 

暗黙知の次元と棲み込む力

 さて、ビジネスのリテラシーといえば、だれしもが、戦略、マーケティング、財務会計、人的資源管理、アントレプレナーシップ、統計の活用、オペレーショ ン、リーダーシップといったようなビジネス・スクールのコア・カリキュラムのようなものを思い浮かべるだろう。こうした汎用的で一般的なナレッジに、その 会社独自の文脈が加わって、その人なりのビジネスのリテラシーが形成される、とよく説明されたりする。

 しかし、同じようなカリキュラムで学び同じようなビジネスの文脈に身を置いても、中長期的には仕事の出来、不出来に雲泥の差が生じるのは、何かほかの決定的に重要な要素があるからである。その1つが「対象に棲み込む力」である。

 この「対象に棲み込む力」は図2のような式となる。つまり、いくらカリキュラム的な形式知を頭に詰め込んでも、a=棲み込み係数が低ければ、y軸の実践力は高まってこない。Y=aX+bの直線の周辺に沿うように、スパイラル状に実践力は高まっていく。

 対象に棲み込む力としての実践力

図2●対象に棲み込む力としての実践力

 

 この実践力という特殊な力は、新規プロジェクト立ち上げ、起業、イノベーション創発のような特別の機会に力を発揮する。しかし、この特殊能力は言葉でスンナリと説明できるような代物ではない。とても暗黙的なのだ。

 マイケル・ポランニーは、ゲシュタルト(形態)は認識を求めるときに能動的に経験を編集するプロセスで形づくられ、その形成と統合こそが「暗黙の力」 で、その暗黙の力が進化の動因でさえあると意味深なことを言った。石井淳蔵は、ポランニーの暗黙知を下敷きにして、優れた経営者やマネージャが新しいビジ ネスモデルや新規事業を生み出すメカニズムに迫っている。その際のキーワードが「対象に棲み込む力」である。

 石井によれば、扱っている製品、サービス、顧客、市場データなどは「近位項」に相当する。そして、棲み込んだ結果、そこに生まれる関係性、画期的発明、 新規ビジネスモデルなどが「遠位項」となる。棲み込む対象は実はなんでもよい。近位項とは、部分の性質や特徴で、遠位項とは部分が統合された全体である。 近位項は手がかりでもあり、遠位項は手がかりによって得られる全体的な成果である。

食い込みの前に首尾一貫した「棲み込み」あり

 鮫島氏の場合は遠位項がビジネスにおけるダークないしはグレーゾーンを含むチャイナ的人間関係、大陸における新規ビジネスの創出。鮫島氏は近位項と遠位 項を無意識的に行ったり来たりしながら、社内はおろかグループ企業を含めても他を圧倒する断トツの中国ビジネス実践力を体得していったのだ。

 紹興酒を片手に目を細めて笑いながら中国ビジネスのツボを語る彼は、なんとも言えない清濁併せ呑むような首尾一貫した雰囲気を放っている。彼が持つもの は、人生の当事者として身の回りの世界に首尾一貫した意味のある一体感(sense of coherence)であり、人生を手中にしている感覚だ。首尾一貫感覚とは、自分と身の回りの世界に十全な一体感を持ち自分の存在を有意味なものとして 受けとめる健康的な感覚である。

 中国ビジネスの文脈に食い込む以前に、首尾一貫した棲み込みがあったのである。そしてその棲み込む対象は、チャイナ社会の人間関係。このような暗黙的で ありながらも特殊な実践力を持つ人材は、旧来の学校秀才タイプにはあまり出現しない。なぜなら、カリキュラム的形式知の記憶に長けていても、対象を選び、 そこに棲み込むパワーが欠けていたのでは文脈に応じた断トツの成果を生み出せないからだ。

 

ビジネスの足腰としての棲み込み力、諜報謀略力

 『孫子』の『用間篇』では、敵対する対象に棲み込む力に焦点が置かれるが、アライアンス、パートナーづくりといった対象に対する友好的なかかわり方でも、対象に棲み込む力は重要な役割を発揮するのである。

 グローバル市場で各国のベンチャー企業、大手企業が覇権をかけて激しく競合し、企業同士の合従連衡は盛んになる一方だ。特に今後は中国企業によるM&Aをテコにした事業展開に弾みがつくだろう。

 このような情勢で、ビジネス展開における棲み込み力、諜報謀略能力の有無が企業戦略を大きく左右することとなる。このような特殊な棲み込み力、諜報謀略能力を保持する人的資源を確保することが競争優位に立てるか否かを決するのである。

 「日中友好」のスローガンを叫ぶのではなく、現場で「日中友好」を展開するのは実は生易しいことではない。いかに社会主義市場経済の現場の奥底に蠢く 「チャイナ的人間関係」に接触し、関与していったらよいのか。さらには、どのような機微を織り込んで人間関係を構築していったらよいのか。諜報謀略論から 見るチャイナビジネスへの棲み込み、食い込みは重い課題だ。

 

    【参考文献】

  • Robert White, “Motivation Reconsidered: The Concept of Competence”, Psychological Review 66:297-333
  • Richard Boyatzis, “The Competent Manager: A Model for Effective Performance”, Wiley-Interscience、1982年
  • ライル&シグネ・スペンサー 、「コンピテンシー・マネジメントの展開―導入・構築・活用」、2001年
  • 石井淳蔵、「ビジネスインサイト」、2009年
  • シンガポールのチャイナ社会を分析したレポートして「華人社会について ~華人社会の三角関係~」(PDF)が示唆に富んでいる。

 

引用:諜報謀略講座 ~経営に活かすインテリジェンス~ – 第13講:中国人と仲良くする方法(チャイナ的人間関係への棲み込み) :ITpro