アメーバになった病院

(2012/2/03医療サービスマネジメント調査のためインタビュー)

まさか、病院という建物がアメーバのように半透明になったわけではない。

松下記念病院は、京セラ式の「アメーバ経営」を独自に医療機関向けにカスタマイズした手法をフル活用することで、おおいに成果を上げている。山根哲郎病院長の柔軟なリーダーシップに負うところが多いと思う。

さて、失礼を承知で言えば、病院には多くの「伏魔殿」があるが、その一つが「看護部」という組織だ。「看護部」は、通常、直接サービスを発生させる部署ではなく、入院、外来、オペ室などが行っている直接的な看護サービスに対して、人事、総務、教育、システム支援、調整、目標管理、イノベーションへの対応支援などのサービス・オン・サービス(service on service)を行っているサービス管理のための部門だ。

その業務の本質は、病院経営全体へのサービスを行う管理部門(昔は事務部ということが多かった)と同型である。

山根病院長は、その本質に気づき、「看護部」を事務部門へ統合した。ただし、本質に気がついただけでは、ここまでの変革はできないだろう。大方の「看護部門」は、「事務部門に統合~~」と聞いた瞬間に拒否・拒絶反応を示すのは目に見えている。

スタッフの時間あたりの生産性の見える化がカギだ。

収入、経費、時間の3要素で時間当たりの付加価値を計測して、見える化すると、そのプロセスで、各スタッフや部門が、自律的に時間当たりの付加価値を高めるように、整理・整頓・清掃・清潔・躾などの改善活動に積極的に取り組むようになったという。

その結果、直接的に収益を生み出さない「看護部」の性格と問題が明らかになった。そして、多くの議論の末、「看護部門」は「事務部門」に統合された。

こう書いてしまうと簡単なようだが、その変革を可能にしたのは、精神論、使命感、ヤル気といった抽象的なものではない。ツールつまりメソドロジー(方法論)である。

マネジメント、経営には適切なツール(メソドロジー)が必要で、それによって得られたデータを共有することによって、やりとりのダイナミックなネットワーク(dynamic networks of interactions)、ひいては自律的な医療チームが自己組織的に生まれ、組織変革に結びついてゆくのである。松下記念病院の場合は、そのためのツール(メソドロジー)が京セラ式の「アメーバ経営」だ。

組織の基本=5Sという組織と仕事の基本となるカイゼン志向のワザ(メソドロジー)と、マネジメントを刷新していくイノベーション志向のワザ(メソドロジー)=京セラ式の「アメーバ経営」を融合させたという点で、大変参考になると思う。

換言すれば、ワザありとワザありの掛け算で、一本だ。日本のような複雑な医療環境を持つ先進国で、複雑適応的システム(complex adaptive system)へと変革してゆくためには、合わせ技が必要だ。

複雑適応的なメンタルモデルを持つリーダーが、自己組織性を着火させるようなモノゴトを、そっと組織のなかに仕込み入れ、いろんなエージェントを巻きこんで、組織変革をやらせてしまうという組織デザイン思考(organizational design thinking)が必要だ。

日本の医療機関で複雑適応的システム(complex adaptive system)を体現している組織を調べることは興味深い。

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