イノベーション創発はコラボレーションの進化レベルで決まる

出所:拙著「多職種連携とシステム科学」. 2020. p36

一言、チームといってもいろいろな種類がある。また、たんにチームを作るのではなく目的に応じて、チームをデザインするときのコツがある。企業、医療機関、大学の中でチームを創るときのポイントを拙著「多職種連携とシステム科学」を引きながらまとめてみよう。上の図で、下に行けば行くほど、異界越境の程度と頻度は増してくる。つまり、異質なモノコトに触れて、それらをどのように料理するのか、その創意工夫の度合いが増してくる。それにつれて、ネットワークの性格は、内部指向、連絡指向、交流指向、連携指向、統合指向というように遷移してゆく。

上の図では、Dは専門家が持つディシプリンつまり専門性、□は解決する問題や対象を示している。

まずは、同じ職種、専門分野、ビジネスユニット等の内部の者同志がチームを創る。職種や専門内部だから、これをイントラプロフェッショナル・チームという。イントラプロフェッショナル・チームはすべてのチームワークの基礎となる。逆にいえば、あたりまえのイントラプロフェッショナルなチームワークが十分にできないまま、カタチだけのマルチ、クロス、インター・・・というチームワークの進化形をとっても失敗することが多いので要注意だ。

さて、複雑でこじれた問題を扱う際に、同一職種、専門分野のチームではにっちもさっちも行かない場合が多い。このような状況をブレークスルーするときから本当の多職種連携が始まる。専門が異なる複数の人間が同志がゆるく連絡しあって協力するというモードだ。マルチプロフェッショナル・アプローチという。多くの医療機関で行われている多職種連携(インタープロフェッショナル・コラボレーション)は、実のところ、マルチプロフェッショナル・アプローチに留まっていることのほうが多い。

次に、専門が異なるプロが、重なる領域や問題解決のために交流し、協力するチームのことをクロスプロフェッショナル・コラボレーションという。このクロスという部分が隠し味だ。うえの図のように、専門分野のノウハウ、知見がクロスしあって実質的な交流を行いながら、問題解決のために動くことになる。

これでもうまく問題解決ができない場合に、初めてインタープロフェッショナル・コラボレーションの出番となる。このチームでは、複数のプロフェッショナルが連携して共通の目標を達成しつつ新しい知を創造することを目的とする。専門領域が重なり合えば、そこに相乗効果も生まれれば、ヒリヒリするような葛藤や軋轢も生じるものだ。それらを克服することによって新しい知が立ち上がる。

さらに高次元のチームをトランスプロフェッショナル・コラボレーション・チームという。この種のチームでは、複数のプロが協力して既存の方法を壊して新しい知を統合して創り上げる。たとえば、小惑星探査機「はやぶさ1,2」のプロジェクトは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)内外の宇宙物理、物性物理、航空物理、宇宙輸送、航空技術、地球物理、電波工学、素粒子論、コンピュータサイエンス、宇宙進化インフォマティクス・・・・というありとあらゆる学術分野の専門家が、品質管理、工程管理、安全管理、リスク計算、制御、プロジェクトマネジメントを含むマネジメント・サイエンスの知見を糾合してトランスプロフェッショナル・コラボレーション・チームを組成している。これらの科学をまさに、異界越境しつつも高度に統合して、小惑星探査機の設計、打ち上げ、航路制御、小惑星での物質採集、地球への帰還、探査機カプセル回収、その後の各種分析、論文発表までを行う。

このように、コラボレーションの内実・実態は、内部→連絡→交流→連携→統合というように変化(進化)してゆくし、必要に応じてチームワークの「型」を事前に選ぶことが大切だ。また、必要に応じてモードを前後させることも必要となる。ざっくり言って、コラボレーションのモードが深化(進化)するほどイノベーション創発には有利にはたらく。

従来のイノベーション・マネジメント論に足りなかったものの一つが、イノベーションのテコとしてのコラボレーションの位置づけだ。この本では、イノベーション実現のための具体的な手段方法としてのコラボレーション進化論を展開してみた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました