サイエンス・コミュニケーション

<オチャメなお茶ビール>

秋は講演の季節だ。静岡駅のすぐ南側にある静岡県看護協会で講演をしてきた。前の晩には、静岡おでんをつまみながら、ご当地ビールの「お茶ビール」を堪能した。ビールのにが味の向こう側に、そこはかとなく緑茶の味わいが広がる、文字どうりオチャメなビールだ。

さて、テーマは多職種連携の活性化。このところ取り組んでいる研究に直結する多職種連携やチーム医療に関する依頼が増えている。2か月前にリリースされた「多職種連携とシステム科学」をテキストブックにした5時間にもわたる講演というか集中講義だ。

研究の仕事は、仮説づくりから始まる。その、もわっとした仮説から質問を多数作り出し(翻訳した質問票も使う)、共同研究先の医療機関でサーベイを行い、膨大な数のデータセットを得る。それらデータをいろいろな面からアナライズして、エイヤーと発見や知見をあぶり出す。

そうしてあぶり出したものを学術作法にしたがってペーパーにする。さらに、ペーパーが複数溜まってくると、ペーパーに納まっている知見に縦糸、横糸を通して一枚の織物のようにしつらえ直し単行本として体裁を新たにまとめる。

ペーパーは専門家が読むものだが、いかんせん読者の絶対数はそう多くはない。しかし、単行本は、出版社が商業出版として出す以上ソロバンに乗せる必要が生じる。つまり、単行本として、採算に乗せることができれば、ペーパーより多い読者に届くことになる。

なので、サイエンス・コミュニケーションという視点に立てば、せっせと論文を書くこともさることながら、それらに編集という付加価値を練り込んで単行本を出版するほうが、多くの読者を得て世の中の変化を後押しすることに繋がる、ということになる。社会科学的やシステム科学の知見をわかりやすく社会に対してアウトリーチして循環させてゆくのが、サイエンス・コミュニケーションの定石である。

サイエンス・コミュニケーションの一環として生成された本を、その方面で活躍する実務家を対象とした講演のテキストとして使うというのは、2重の意味でサイエンス・コミュニケーションの実践である(と勝手に思う)。そんなことをつらつら思いながら、お茶ビールを飲む静岡の晩であった。

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