ホスピタリティXヘルスケアXデザイン思考融合の新たな地平線

 
久しぶりにアメリカの東海岸に旅してきた。母校のコーネル大学で開かれたSymposium Hospitality, Healthcare, Design 2016に参加するためだ。
 
ああ、コーネルはいいなあ。return to my alma mater。豊饒な知に対するリスペクトと知的世界への探求心がキャンパス中に横溢している。尊厳、威厳、自由、探求、エンゲイジメント・・・そういったものが混然一体と、しかも統一さをもって顕現している。
 
Cornell Hospitality Health and Design Symposium 2016
 
この分野の研究成果:

”Systems’ Boundary and Fusion between Hospitality and Healthcare”

を一本発表して、あとはひたすら今書きつつある本の取材や社交。

共通の知人や旧知の友人との出会などのオンパレード。しかも、皆がこのシンポのテーマではいろいろな成果や社会的なアウトプットがある人たちばかりなので、めっぽうオモシロイのだ。

研究成果の発表もさることながら、今回の国際会議は今書きつつある本のネタ仕込みや取材といった点からも非常に重要なのだ。メモしてみる。
                                       
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キュアからケアへシフトしてくると、サービスのありかたも、ホスピタリティが全面に出てくるようになる。
 
キュア文化というのは、治療すれば直ることが前提。キュアの価値とは、治って元通りに動ける、食べることができる、生活できる、働けるということだ。だから投薬、注射、手術などの介入行為が正当化される。
 
また、治療して治ることが前提ゆえに、苦痛、不快感、いごごちの悪さ、不便、不都合は、がまんすべきものである。
 
高齢者の慢性疾患や合併症に対する介入はもはやキュアだけでは有効ではない。なぜなら、多くの高齢者の慢性疾患や合併症は完治させること、直すことはできない。
 
むしろ、人生の最終局面を支えることが目的になる。キュアではとかく後方に「がまんすべきもの」として押しやられてきた、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便、といったものをケアすることが重要になってくるのである。
 
ここにおいて格差が影を落とす。富裕層は、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためにあらゆる手段、そして財力を投入することになる。
 
そのため、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するための営利動機に根差したイノベーションが盛んに巻き起こることとなる。
 
しかし、富裕層もいれば貧困層もいる。貧困層は富裕層に比べて苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消する機会にはさほど恵まれない。超高齢化と財源枯渇によって、このような把握しづらい価値に対する公共サービスは後手後手になる。公共サービスによって実現されない空白を埋めるNPO、NGO、社会起業家による、非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションに対する期待が大きくなる分野である。
 
以上を要するに、高齢者化現象とともにケアシフトが進むにつれ、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためのサービス分野のイノベーションが亢進してゆく。
 
富裕層に対しては、利潤動機に基づいた ホスピタリティ・イノベーションが影響力を持ち、中間層、貧困層に対しては、 非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションが影響を及ぼすことになろう。
 

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