学部学生2年の夏に、当時住んでいた埼玉県大宮市から九州の最南端、佐多岬まで自転車で62泊して往復したことがあった。当時メンバーだったサイクリングクラブの合宿を真ん中に挟んだ単独の自転車ツーリングだった。毎日朝から夕刻までは150kmくらいだったろか、走りに走り、夕刻からはだいたい野宿で、友人、先輩、親戚がいる町では転がり込んで、うまいメシを食わせてもらい、風呂まで入れてもらう。
ところが、当時の佐多岬は自転車の通行を禁じていた。よってゲートがある大泊から佐多岬の展望台まではヒッチハイクにした。「自転車は通行禁止なので、すみません、乗せてくれませんか?」とか言うと、哀れに思ったドライバーは快く乗せてくれたものだ。
それやこれやで、大泊のゲートから佐多岬展望台までの10キロメートルが自転車未踏破ルートとして残っていたのだ。もの好きにもほどがあるが、その10キロを走ってきた。勢いあまって、佐多岬から開聞岳や桜島を左手に見つつ、鹿屋、志布志湾を右手に見て、串間、日南海岸、宮崎、日向、延岡と続くルートを300キロ弱走ってしまった。Bicycle touring on the roadだ。
大学2年の元気だけが取り柄の青年は、a key for every door(すべてのドアを開くことができる鍵)を手探りで探しつつ自転車ツーリングにうつつを抜かしていた。そんな都合のいいキラキラと光輝くカギを探す放浪の旅は、気楽ながらも充実していた。
あれから40年以上も生きてきて、世俗的に世をわたるための煤けたkeyしか見つけることができなかったのはふがいない。せめて、「すべてのドアを開くことができる鍵は、前を向いてペダルを踏み続けることだ」とでも言えば、多少なりとも格好はつくのだろうが・・・。
ともあれ、あとは青森駅から下北半島を北上して大間まで自転車で走れば、日本列島本土の最南端佐多岬から、北海道の宗谷岬まですべて自転車で走破したことになる。残りの140キロメートルをいつ走るか。それが課題だ。
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