好奇心は自己組織的なニューラルネットワークから生まれる


世の中の機能組織は、PDCAなど、目的系や目標系で運営され経営される。組織と関わり合って生きる人も、必然的に目的、目標志向にならざるを得ない。

ただし、外部からの過剰な目的や目標が、外発的に強く作用するあまり、人間本来の内発的動機を押し殺してしまうこともある。組織による動機ジャックだ。会社での仕事は一生懸命にやるのだが、オフの時間に本も読まない、旅もしない、なにもクリエーティブなことを自発的にやることのない人になってしまうから要注意だ。これでは、知らず知らずウェルビーイングが疎外されてしまう。

新しいことを知ることは、それそのものが楽しい。つまり、知ることはそれ自体で内側から生じる報酬だ。内発的動機づけは機能は特定の目的を達成するためだけに発達してきたのではない。むしろ、内発的動機は、個々の神経細胞が持つ特性から自己組織的に人間の脳のニューラルネットワークに生じるものだ。この自己組織性が、新奇性を求めてやまない好奇心を駆動することになる。

進化論を持ち出せば、好奇心、つまり、知ることそれ自体を報酬と感じる傾向は、外的目的から逆算された機能というよりも、脳の神経構造の自己組織的な特性として自然発生的に形成されてきた。つまりヒトの脳には、外的報酬(金銭、地位、外部からの評価)とは無関係に、「知る」「理解する」「発見する」ことそのものに快感を感じる部分がある。

この内側から沸沸と湧き上がるような快感に寄り添う傾向は、脳内報酬系(ドーパミン経路など)と強く結びついていて、内発的動機づけは、進化の過程で自己組織的に形成されてきた。特に前頭前野や海馬には、予測誤差や期待値の変動に強く反応する神経ネットワークが存在し、未知情報の出現を快感と結びつける好奇心のメカニズムが隠れている。

このようなニューラルネットワークのふるまいが全体として、新しい情報にふれるとワクワクする、探索行動そのものが楽しくてしょうがない、といった好奇心(ポジティブ感情のひとつ)を生み出している。このようなアイディアをもとに、好奇心駆動型の人工知能(Curiosity-driven AI)が設計されつつあるのは興味深いことだ。

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