清里の川俣川が削り込んだ東沢渓谷を北側に遡行していくと北杜八ヶ岳公園線の清里大橋を遥か上に見上げる。
さらに歩いてぶつかる林道は、「鉢巻き道路」と呼ばれていた清里高原道路ができる前は清里と大泉をむすぶ主要道だったのだが、最近は通行する車はあまりみかけない。
そこからはハイキングロードになっていて、ものの10分も歩くと、この滝に出くわす。
その名も、吐龍の滝という。
恐ろし気な名前だが、吐竜の滝は、落差10メートル、幅15メートルとこじんまりとしている。
毎年夏にはナイアガラの滝に遊ぶのだが、その規模ときたら、落差56m、幅675mだ。
ナイアガラの滝。その落差は吐龍の滝の5倍以上、幅は45倍にもなる。
規模が大きければよいというものでもあるまい。見よ、吐龍の滝の箱庭のような美しさを。楚々とした風情で清涼な水がしたたり落ちる斜面には、ほどよく苔がむし、初春の空気は清々しい。
聞けば、深緑の苔むす岩間からあたかも絹糸のように流麗に流れ落ちるその神秘さから「竜の吐く滝」と名付けられたそうな。
ナイアガラの滝にはない、箱庭のような静謐さが、ここにはある。
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