
多職種連携による組織開発は、医療現場に眠る“未活用資源”を掘り起こし、実際の成果につなげる戦略的アプローチだ。
一見、抽象的に聞こえるかもしれないが、これは実際の医療機関で実証された事実に基づくものである。たとえば、顧問を務めている東京都立墨東病院において実施している多職種連携による組織開発・組織学習の取り組みは、多職種による連携強化を通じて具体的な成果を上げている。そこでは、医療の質と安全性の向上、業務効率の改善、スタッフのエンゲージメントの高まりといった複合的な効果が確認されている。
これにより、スタッフ一人ひとりの働きがいが高まっただけでなく、患者に提供される医療やケアにおいても、ウェルビーイングを重視したサービスの質が向上するという好循環が生まれている。
「チーム医療を推進しよう」といった掛け声は多くの現場で耳にするが、現実のヘルスケアシステム──病院、診療所、介護・福祉施設、地域包括ケアシステムなど──では、専門職ごとの役割や業務範囲が暗黙知化されいて、皮肉にも「タテ割り構造」が強固になりやすい。
このような構造のもとでは、各専門職が自身の専門性を発揮する点では一定の成果が得られるものの、複数の専門職の“あいだ”に存在する領域、いわば“連携のすきま”に「ムリ・ムダ・ムラ」が蓄積しやすくなる。これらは単に効率の問題にとどまらず、医療サービスの質の低下や医療安全上のリスクにも直結する重要な課題である。
この“すきま”に光を当て、改善に取り組むのが多職種連携型の組織開発である。たとえば、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)、KAIZEN(改善)、TQM(総合的品質管理)といったヘルスケア版のアプローチを多職種にインストールすることによって、専門職間の垣根を越えた協働の土壌が育まれる。結果として、「誰の仕事でもない領域」が解消され、全体最適の視点から業務が再構築され、現場には驚くべき変化が生まれることになる。
このような多職種連携による組織学習/開発は未活用資源の開拓でありウェルビーイングを高めることにもなる。ぜひ多くの医療機関にも取り組んでもらいたいものだ。
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