多職種連携の本質やいかに?!

来週広島に飛んで行って看護系の学会で講演をする。この学会をオーガナイズしている知り合いの教授から「多職種連携の本質」について話してくれと頼まれ、宮島観光という甘い誘惑もあり、数か月前に安請け合いしてしまったのだ。とはいえ、よくよく考えてみると「多職種連携の本質」とはいったいなんなのか。

うーむ。「~の本質」について話してくれというのは、講演者を思い切り悩ませて、実をとる主催者側の深謀遠慮なのだろうね。そのレジュメのドラフトをしたためつつ備忘録としてブログでも書いておこう。

ヒエラルキー組織の特徴はいくつかある。階層構造とタテ割りによって組織化する。したがって指示命令系統やリーダーシップのスタイルは ヒエラルキーに依存するようになる。つまり、エントロピーの増大をヒエラルキーとタテ割で制御することによって持続していこうとする。おおむね、病院の看護部門の組織モードはヒエラルキー型であり、オペレーションを担い最大人数を抱える看護部門の組織モードに沿って設計されている病院の組織モードもヒエラルキー型が中心だ。

とはいえ、診療の中心にいるのは診療部の医師だ。プロフェッショナル組織としての診療部は、専門分野ごとのプロフェッショナル・フリーダムが尊重され、他の専門分野への非干渉≒タコツボ化が常態となる。また、職業威信を持つ職能が優先されつつも、医学部や大学院ではリーダーシップ&マネジメントはほとんど教育さえされない。つまり、リーダーシップとマネジメントというソフトスキルは見よう見まねで体得するしかない。

さて、多職種連携(チーム医療)の特徴は、3点にまとめることができる。

①階層構造とタテ割を越えるハイパー性 

先に述べたヒエラルキー組織やプロフェッショナル組織でもなく、これらを超越して動くことになるのでおのずとハイパー性が問われる。ハイパーとは「超越する」ということだ。超越とは、逸脱やはみだしともなるので、さじ加減の妙がとわれるところだ。

②コラボレーティブ・リーダーシップ

ハイパーなネットワークの中でリーダーシップを発揮せざるをえないので、おのずと、ネットワーク志向のリーダーシップが要請される。ネットワーク内で、臨機応変にリーダー役割を共有して変化させてゆくことが求め割れるのでシェアード・リーダーシップの側面も強い。ヒエラルキー型でもプロフェッショナル型でもないコラボレーティブ・リーダーシップというスタイルが求められる。

④エントロピーの増大を自己組織性で制御

ヒエラルキー組織は、階層構造とタテ割り、そして比較的明瞭な指示命令によってエントロピーの増大を制御し、プロフェショナル組織は、プロフェッショナル・フリーダム、職業威信、確固たる専門能力によって持続してゆく。ハイパーな多職種連携は、ヒエラルキー型とプロフェッショナル型でもなく、むしろそれらを混交させた自己組織性が問われることとなる。

多職種連携を支える組織的基盤は、職場のウェルビーイング、つまり、健やかに健康的に能力を発揮して、経験から学び、ある程度裁量が効いて心理的にも安全で、共同体としての信頼感や絆感覚がある、望ましい状態だ。コラボレーティブ・リーダーシップが多職種連携を推進するエンジンとなる。協調的なリーダーシップのもと、絆と信頼感が溢れ、自由闊達な発言が許され、安全安心の風土が活性化され、チームベースの経験学習が多職種連携と連動することによって、職場のウェルビーイングがもたらされる。

ヒエラルキー組織、プロフェッショナル組織の相克を抱えながらも、職場のウェルビーイングを増進し、コラボレーティブ・リーダーシップを開発することが多職種連携やチーム医療を活性化することに寄与する。そんな本質的な前提が整ってはじめて、ヘルスケアの多職種連携がうまくすすむのではないか。

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