尾瀬を逍遥してきた


日頃の喧騒を離れ、ただ「歩いて、見て、感じて、飲む」という極めてシンプルながらも贅沢な時間を過ごしてきた。4月は研究旅行を兼ねて熊野古道あたりを歩いてきたが、今回の舞台は、日本の自然の宝庫・尾瀬。大学を卒業した年に親戚一同でパーティを組んで歩いた想い出深い山域だ。屈強な体力を保持していた20代の頃は、至仏山、燧ケ岳の二座を含む30km標高差2400mを一日で登ったこともあったのだが、今や2日かけて総歩行距離28km、累積標高差1,100mという低山逍遥。

アウトドアにこそウェルビーイングがある。健康だから野山を放浪できる。放浪できるから健康で幸福なのだ。根っからのアウトドア好きは変わらぬ習性なのだが、ライフステージに合わせてアウトドアライフは変化している。先鋭なアルペンスタイルから、マイペースの山旅へのシフトもまたいいものだ。

前夜祭は、静寂の「動くマイルーム」で

花咲の湯のサウナで温冷浴のルーチンをこなしてから、大清水の駐車場へ移動。 今宵の宿は星空を天井に戴くマイカー、いわゆる車中泊。手狭な空間ながらも、不思議と秘密基地のような高揚感に包まれるのは、大人の贅沢か、単なる放浪癖の行きつく先か。山の冷涼な空気を窓の隙間から感じつつ、翌朝への期待を胸に早々にシュラフへと潜り込む。

可憐な妖精

翌朝、まだ眠い目をこすりながら林道を進み、まずは三平峠へ。 木々の間から差し込む朝光を浴びながら、高度を上げて下げていくと、目の前が開けて美しい尾瀬沼が姿を現した。ここからは北岸の、緑がとても深い「へつり(崖沿いの細い道)」を進む。

そんな私の目を楽しませてくれたのが、泥の中から凛と立ち上がる水芭蕉。この季節はなんといっても水芭蕉。白い妖精だ。ところどころ、水芭蕉の群生が広がっている。そんな夢のような風景のなかただただ透き通るような風が渡っていく。

しかし、尾瀬は美しいだけではない。沼尻の小屋を過ぎると、待っていたのは白砂峠の登り。20代の頃は、この程度の峠は鼻歌交じりでいとも簡単にクリアしていたのだが、ややキツサを感じるのは、こっちの人生が先に進んでしまった証か。「ちゃんとトレーニングを積んで体重を減らさないと、夏に予定している大雪山登れなくなるぜ」との思いが脳裏をよぎる頃、ようやく今宵の宿、見晴らしの「ひうち小屋」に到着。

ご褒美は、黄金色に輝く液体


荷物を下ろし、向かったのは尾瀬ヶ原を一望するお洒落なテラス。 尾瀬小屋に併設されているいい場所だ。ここでのミッションはただ一つ。

「至福のビールで乾杯」

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