標高1300mの日々

<川俣川東沢渓谷に架かる赤い橋と赤岳>

学生を引率してカナダ・オンタリオ州に短期留学(2単位分の授業である)として滞在するのがここ数年の慣例だ。しかし、今年はコロナ禍のためカナダ滞在は残念ながらお流れ。その代わり、平地の猛暑を避けつつ、八ヶ岳南麓の私設山荘に1週間ほど滞在することにした。本や論文の原稿も、お盆前になんとか一段落したので、パソコンを持ち込んでカタカタ仕事をするのではなく、朝は高原をランニング、昼は山荘の修繕、夕方は温泉、夜は美味しいごはん、という「アウトドアX健康」の日々。

標高1300mはやはり涼しい。いや、朝夕はひんやりするくらいだ。酷暑の関東平野と比べれば冷涼な別世界である。森の香りが鼻腔をほのかにかすめる高原の森の中を走るのは楽しい。爽快な悦楽だ。別荘地から八ヶ岳高原道路にでて、そのまま美し森を駆け抜けるコースもあれば、西の方向にさらに走り川俣川東沢の赤い橋まで行くコースもいい。ポール・ラッシュ通りの坂を下れば清泉寮。この季節、昼間の清泉寮は喧噪を極めるが、朝は、人影もまばらだ。さらに坂道をかけ下り、清泉寮ファームショップのすぐ上の牧場を横切るトレールに沿って、アルムと木立そして森を抜けると、清里の森の正面にぶつかる。約5キロのルートで標高差が200mくらいなので、いい運動になる。

ここ数年、コテージの屋根やそこいらのいたみがすすんでいるので、屋根材の一部を張り替え、室内のドアを修理。長坂のホームセンター綿半(以前はJマート)で資材を買い入れ、Do It Yourselfである。リアルなモノに触り、モノを改善したりリノベーションすることは、汗はかくが実に愉しいものだ。

その汗を流すのは高原の温泉。甲斐大泉には、パノラマの湯という高原の温泉がある。入浴料410円なので、町場の温泉に比べれば安いと言えば安い。しかし、温泉としてのクオリア(質感)は高い。外湯からは南の方向に富士山を望む。西南方面には甲斐駒ヶ岳がすぐそこだ。富士山を望みながら温泉を楽しむことは古来日本人の贅沢の極みと聞く。しかも、小さいながらサウナもついている。体を冷やすのは、滾々と湧き出る八ヶ岳の自然水である。サウナ⇒冷泉⇒外気浴の繰り返しによって、細胞の中のミトコンドリアは激増するので、免疫力が向上する。(実はこのサウナを取り入れたセルフケアリングの機序は医学的なエビデンスに裏打ちされている)

一応三密回避のため、外食は一切なし。地の野菜、肉、乳製品を買い入れ、コテージで料理する。ビールと食事が終われば、ほぼバタンQ。そして、夜が明ければまた早朝から高原を走る。こんな日々を1週間すごし、自然のそこはかとないパワーを幾分かは身体化、内面化することができた(とする)。標高1300メートルの日々から、標高わずか30メートルたらずの平地の日々への落差はまことに大きい。

なるほど、古人曰く「山の修行は安く、町の修行は難し」である。

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