異界越境的ランニング

赤い橋と赤岳

会社を経営していた頃に比べればたいしたことはないのだが、やはり秋は講演や学会で忙しい。その忙しさが一段落したので、さっと八ヶ岳南麓の山荘に行ってきた。屋根の修理、水抜きなどの冬支度を兼ねてだ。

平地では季節は秋だが、標高1400mの高原と川俣川の渓谷では黄葉のピークは過ぎ去ったばかり。でも、青い空と赤い橋のコントラストの中間的な深度の深い空間を茶色や黄土色の落葉広葉樹の葉々が広く埋め尽くす情景はよいものだ。

朝は高原道路沿いに走り、清泉寮まで下り、さらに下ってスーベニアショップのすぐ上の牧草地を横切るトレールを横断して清里の森に帰ってくるルートがよい。ゆっくり走って50分~60分といったところか。

さて、近年発達目覚ましいエピジェネティクスの知見によると、適度な有酸素運動を行うと、各種の記憶をつかさどる脳内の海馬では、年齢にかかわりなくニューロン新生が活発になるという。ハーバード大学のジョン・レイティ博士が「脳を鍛えるには運動しかない!」というなにやら威勢のよい本の中で、数々のエビデンスを列挙して強調していることだ。

「有酸素運動が神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを広く強くして、それらをうまく使えるようにする。動きが複雑であればあるほど、シナプスの結びつきは複雑になる。また、こうしたネットワークは運動を通して作られたものであっても、ほかの領域に動員され、思考にも使われる」(レイティ, 2009p71)

そうだ、高原のジョギングは心配機能、足腰のみを鍛えるのではない。日常空間からはなれ、異界越境して高原の地を走ることによって、脳内の神経細胞を伸ばしネットワーク化し、頭脳と認知機能の開発にもおおいに資するのだ。こう思うだけでもモチベーションになる。いや、こう自分に自分に思い込ませることによって、高原で有酸素運動にいそしむことによって、知的生活の基盤を強化、涵養するという新しい意味を付与することができるのである。

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