無限に広がる知の世界をぎゅっと編集して、知識愛好者の広大無辺な知的渇望に素直に応えようとする試みがある。その代表格が「百科事典」だ。百科事典といえば、ブリタニカ百科事典(Encyclopædia Britannica)が有名だ。
もともとは1768年から英国はエディンバラで100分冊を週刊で発行したのが始まりである。当時勃興しつつあったブルジョワジー階級のなかでも知的欲求が強かった人々に熱狂的に支持されたそうだ。成功のあまり、分冊を再編集して、1771年に3巻にまとめたものが、初版となったそうだ。
ちょっと前に、畏友の蔵書に囲まれながら、ひたすら本をテーマにした雑談をしてきた。マンションの1世帯分ほぼすべてが東西古今の古典、辞典類の書庫のようになっているので、すでにその御仁は、愛書家の範疇をゆうに超えている。
そのディープな時間をすごした時に、邂逅したのが写真のEncyclopædia Britannica Eleventh Edition(ブリタニカ百科事典第11版)。
これぞ、知る人ぞ知る、という修飾にふさしい。Encyclopædia Britannica Eleventh Edition(ブリタニカ百科事典第11版)は、世界中の百科事典マニアから畏敬と羨望の念を集めている。
「ブリタニカ百科事典第11版の魔法」なるコアかつマニアックな論評でもここぞとばかりに記されているように、革張りの装丁、芳醇なインクと紙の香り、その包括的な記載内容、簡明ながらもどことなく重厚感ただようフォント、コンテンツの充実度、どれをとっても抜群の完成度と圧倒的な支持を得ているのである。
稀覯本、古書、語学に深遠な造詣を保持し、今尚あくなき知識の充足に禁断の快楽を見出してやまない畏友は、まるで宝物を見せるように、それを開陳してくれた。僕は手を洗って、畏まって、その11版のページをそろりそろりと繰った次第。
電子出版がいろいろ取りざたされている昨今、紙というメディアの限界がよく指摘される。でも、長きの時代に渡って愛されるコンテンツは、コンテンツが乗っているメディアの品格、風格、歴史を感じさせる体裁、香り、手触り・・・・そういったアナログな肌合いといったものと絶妙なバランスをとっている。
ナレッジマネジメントというと、メディアと切り離された知識そのものに話題が行きがちだが、ナレッジが乗っかる、あるいは埋め込まれ、引き出される媒介としてのメディア、そしてメディアが活用される「場」との組み合わせで考える必要がある・・・ということはいうまでもないだろう。
そのような電子書籍のためのメディアデバイスが開発されたら、それこそ、イノベーションとして称えようか。
コメント