アクティブ・ラーニングと留学

文際交流協会
東京工科大学の看護学科の先生から頼まれて受け持った「社会経済学」の授業。全15回(土曜日!)なんとか終わってホッとしている。

そのクラスでは5-6人(全クラスの1割くらいか)が海外留学の経験があるということだった。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカなど英語圏が中心だ。

階層化が進んだ現代日本のミドルクラス以上の家庭では、留学はある意味遠足のようなお気軽なものだ。昔のように意を決して人生の一大勝負事のように勇ましく雄飛するようなシロモノではない。とくに学位取得を前提にしない語学留学や短期留学はカジュアルでコモディティー的なものになっている。

さて、松下の授業はどんな科目でもアクティブ・ラーニング・メソッドを用いるので、授業中はチャット、ディスカッション、グループワーク、プレゼンテーション、創成型のアジェンダ(課題)レポートなどで、ワイワイ、ガヤガヤ、ワサワサしたものだ。課題を見つけて、ソリューションを自分たちで考え、みんなの前で発表し、対話、批判、質問、回答(弁明)をとおしてさらに認識をシャープにしてゆこうというものだ。

もっともこの手法は、アメリカの大学院へ留学しているときに学生目線で学んだものだ。それまでは日本の学部にいたので、一方通行のつまらない授業に辟易としていたのだ。そんなこともあり、大学で教えるようになってからは、ほとんどの授業でアクティブ・ラーニングをやるようにしている。

さて、留学経験者のアクティブ・ラーニング型のセッションでの反応は3つくらいにまとめることができるだろう。

(1)口数が多い。

人前でしゃべることが好き。逆にだまっているとストレスが増す。コミュニケーションをとること自体が楽しいと心の底から思えるようだ。

(2)自分の考えを話す。

バカ話、ヨタ話ではなく、自分の思うところ、考えるものをスピークアウトする。

(3)同調圧力に屈しない。

自分の考えを表明することは「周囲との差異」を際立たせる。日本人は、まわりの「空気」や「空気感」に同調して、カドやエッジを際立たせることをよしとしない。しかし、おしなべて留学経験者は、このような同調圧力モードが低出力なのだ。

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グローバル人材(日本だけで流通している変な用語)を定義しようと思ったら込み入った話になりやすい。べつにグローバルとか言って、大上段に構える必要はないと思う。シンプルに言えば、上記3項目の行動特性が、その入り口だろう。ローカルなリージョンに生きるうえでも、これらの行動特性は活きて来るだろう。

(以前ドイツ人と日本人学生に英語で対話型のレクチャーをやったことがあるが、その時の印象)

教育とはサービスだ。そして、のっぴきならない授業はサービスの現場ということになる。そのサービスをいかに位置づけるのか。教員を中心とする考え方は、教える(Instruct)。そうではなく主人公を学生にすれば、学ぶ(Learn)ことの支援だ。

教員と学生は共に成果を創造するという意味での共創的な関係なのだ。

そのような反転させた目線で、学びをサポートして支援していくのがActive Learningだ。ローカルでもグローバルでも、アクティブなほうが人生楽しいし、たぶん他者のためにもなるだろう。保健・医療・福祉サービスを担う若者の学びの支援は、だから、共創モードのActive Learningを用いることが目的合理的だ。

社会経済学の取っ掛かりを学んだ学生のみんなにはどうかactiveに生きていって欲しいものだ。

 

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