令和5年(2023年)謹賀新年。超越、ご縁、幸福感。

富士宮から振り仰いだ富士山

年末にコロナに罹患して、書斎で寝起きして(家庭内隔離)、ボーッとしながらも、昨年買いためてきた本を読んだ。書斎に布団を敷き、下から本棚を眺める風景もオツなものか。軽症ながらもコロ助からの警鐘を体内で聞きながら、書物、論文、内側から湧き上がるいろいろなアイディアを継承してまとめてみた。

かようにして中期計画Closing & Restarting Planをつくってみた。オレの行き当たりばったりで実験のような人生、現在までたいした病気や災難なく約80%をクリア。日本人男性は82歳まで生きるとして、あと17年(20%)。日本人男性の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は72.7年。

つまり、統計的な趨勢値だけで計算すると、おれの現時点での健康期間(真の長寿ボーナス)は8年。20代からコロナ前くらいまでは、長寿ボーナス(医療看護イノベーションにて初出の不肖松下の造語)を前倒しして、放浪の旅、留学、起業、学問、自転車ツーリング、アウトドアなどに突っ込んできた。それらは多様な縁を取り結ぶという文脈でクリエーティブだったように思える。

(高木, 2022)趣味縁の「光」と「影」:「好き」に基づくつながりの両義性という論文が秀逸だ。「血縁・地縁・社縁といった旧来型共同体・中間集団の衰退に伴い、個々人が自ら人間関係を築いていかなければならなくなったことを意味したが、この現代社会の状況こそが、趣味縁の新しい紐帯・集団としての重要性を高めた」と論じている。

さて坂本によると、定年まえよりも、定年後のほうが現在の仕事に満足している人が多い。定年退職者の6割が仕事に満足、幸せな定年後の生活。幸福であると答えた人の割合は、20歳時点の48.4%から年齢を重ねるごとに下がっていき、50歳時点で38.2%とほぼ底を打ったあと、それ以降は急速に幸福度が上昇、60歳時点で45.1%、70歳時点で54.9%の人が幸福な状態にある(坂本, 2022)。

定年後の仕事に満足だから幸福なのか?幸福だから定年後の仕事に満足なのか?ことはそう単純でなさそうだ。いいかえると、定年後の仕事と幸福感の間にはなにか媒介要因はないものか?有力なのは、老年的超越(gerotranscendence)という現象だ。老年的超越とは、高齢期に高まるとされる「物質主義的で合理的な世界観から,宇宙的,超越的,非合理的な世界観への変化」を指すこの概念の提唱者であるスウェーデンの社会学者Tornstam は離脱理論,精神分析理論,禅の知見など取り入れこの理論を構築したものだ(増井, 2016)。

増井によると老年的超越には、8つの下位因子がある。①「ありがたさ」・「おかげ」の認識(他者により支えられていることを認識し,他者への感謝の念が強まる)、②内向性(ひとりでいることのよい面を認識する.孤独感を感じにくい,肯定的態度でいられる)、③二元論からの脱却(善悪,生死,現在過去という対立的な概念の境界があいまいになる)、④宗教的もしくはスピリチュアルな態度(神仏の存在や死後の世界など宗教的またはスピリチュアルな内容を認識する)、⑤社会的自己からの脱却(見栄や自己主張,自己のこだわりなど社会に向けての自己主張が低下する)、⑥基本的で生得的な肯定(肯定的な自己評価やポジティブな感情を持つ.生得的な欲求を肯定する)、⑦利他性(自分中心から他者を大切にするようになる)、⑧無為自然(「考えない」,「無理しない」といったあるがままの状態を受け入れるようになる)

まとめてみると、ようは、各種の縁つまり関係性のなかでいかに世界観を拡張(超越)しつつ創意工夫して長寿ボーナスのレバレッジを有効活用するのか、ということになろう。今後は、現在の手持ちの長寿ボーナスの有効活用がテーマだ。手持ちの長寿ボーナスの想定値にしめる1年の割合は13%とかなり高く、なるほど、1年1年の過ごし方が非常に重要なのだ。すごす先はご縁なり、か。身の回りのご縁は、①血縁、②地縁、③職縁、④趣味縁(趣味的同類結合でできている縁)。

自我のバウンダリーを変性させつつ、自我’にとってオモシロクないことに時間を持って行か(れ)ずに、やりたいこと、オモシロイことに集中して時間を使うべし。それが、自我の拡張(自我→自我’)のためにもポジティブなことなのだろうし、ご縁をいただいているコミュニティに対する純朴な恩返しにもなろう。

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