新著「医療看護イノベーション」表紙の件

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 新しい著書を汗水垂らしながらやっと出版することができた。この本のなかで最も気に入っているのが表紙の右下の不思議なイラスト。

とある不思議な出会いとご縁がきっかけとなり、この不思議なイラストが新著の表紙を飾ることになった。

その話をちょっと書き残しておこう。

2年前の夏、サイクリスト松下は北海道の然別湖畔でキャンプしていた。千歳、富良野、美瑛を自転車で巡り、層雲峡で自転車を野営場において大雪山を徒歩で駆けまわり、また自転車にまたがって、三国峠、幌鹿峠というけっこうデカい峠を登って下って、やっとの思いで辿り着いたのが然別湖北岸キャンプ場。

馬鹿のひとつ覚えのようにチャリで走りながらも、実は、チャリで無心に走っている時には、思いがけないアイディアが美しい風景のなかから風に乗って突如やってくるのだ。

身体活動にエネルギーを集中させ、言語活動を認知の底に沈め、言語が尽き果てた文脈に「それ」はやってくる。モノカキのアイディアは、言語が尽き果てた身体知の次元からやってくるとは、不思議といえば不思議か。

言葉の境位を越境し、そこに横たわる豊饒な身体知の次元を遊泳することによって、「それ」に遭遇することができるのだ。

「それ」つまり、拙著の構想を練り上げたのは、研究室や書斎の中ではなく、この自転車ツーリングの最中だった。自転車ツーリングは究極のアイディア・ジェネレータなのだ。

画像に含まれている可能性があるもの:山、空、屋外、水

疲れ切って泥のように寝て、起きた、その翌朝、霧が流れる静かな湖面を眺めていると、静謐な湖面を一艘のカヌーが朝霧のなかを静かに進んでいる。その神秘的なカヌーイストは湖岸に上がってくると、実に気さくで親切な人だった。

「いいですね、こんな朝から鏡のような湖面をカヌーで漕ぐなんて。あこがれます」

「よかったら漕ぎませんか?」

「うわぉ! いいんですか!」

ということで然別湖北岸の静謐さをたたえた湖面をカナディアン・カヌーで漕ぐという奇跡の時間を得たのだ。

嬉々として湖面を漕いでいると、カヌーに乗った品のいい美しい女性が声をかけてきた。カヌーを漕ぐ機会を与えてくれたカヌーイスト氏の奥さまだった。

至福のひと時を堪能して陸に上がり、奇跡の湖面の感動と感謝の気持ちをぼくは朴訥ながらもあらん限りの言葉を紡いで夫妻に語った。

その御夫婦とは幸いにもfacebookで繋がった。お子さんを連れた仲睦まじいご夫婦が然別湖の朝まだき、カナディアン・カヌーを静かに漕いでいる。

こんな幸福な風景はない。

自然と家族が調和している。

聞けば奥様は腕利きのイラストレータ。新著の表紙にふさわしいと思い、無理を頼んで、奥様のイラストを拙著の表紙に使わせていただいた。

不思議なご縁を頂いてできた、拙著の不思議な表紙なのだ。不思議にして繊細なイラストの上には「イノベーション」という大きな活字が横たわっている。

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