英語の「で」と「を」


英語との接し方については、連載コラムの「英語で世界をシノぐ方法(覇権言語英語とのつきあいかた)」で考えてみた。

海外留学の経験は、たしかに価値あることだが、最近は一点ほど難点があるように思えてならない。それは、「英語を学ぶ」を早々に卒業して「英語で学ぶ」モードに突入せざるを得ないことだ。

私のような言語学や英文学といった文系ではない社会科学系学徒の留学というのは、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」ことを旨とする。「を」と「で」の違いは、わずかヒラガナ一文字だが、言語への接し方において根本的に異なってくる。

「英語を学ぶ」とは、文字通り、英語の言語学的な特徴、つまり、文法、語彙、統語法、各種表現方法、レトリックなどなど規範的な枠組みを精緻に学ぶことだ。書くことを中心にして、リスニング、スピーキングなどに派生してゆく。

留学での英語との接し方は「英語で学ぶ」ということになる。つまり、莫大な分量の資料を読みこなし、短時間で英語でレポート・論文を作成し、クラスディスカッションに積極的に参加するということは、いってみれば、英語をコミュニケーションの道具として使うということで、純粋に「英語を学ぶ」ということとは異なる。

このところ、「英語で学ぶ」をやりすぎて、「英語を学ぶ」が疎かになってきたことを自覚気味。だから、まずは「英語を学ぶ」ことのスタイルを点検してやろうと思いついた。英語の学び方のベンチマークだ。そんな思いで書店を徘徊していたら一冊の書が目にとまった。

それが、「英語達人列伝」だったというわけ。新渡戸稲造、岡倉天心、斉藤秀三郎、鈴木大拙、幣原喜重郎、野口英世、斉藤博、岩崎民平、西脇順三郎、白洲次郎など、かつての英語達人の努力の奇跡が時代考証とともに、簡潔にレビューされている。英語という言語の運用能力が希有な知的資産であった時代の先人たちの英語を学んだ奇跡が丹念に描写されている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました