File:Carbon cycle-cute diagram.svg

炭素循環農法(略して、たんじゅん農法、Carbon Cycle Farming)を実践している方がいるというので、佐倉の多菜園さんを訪問してみた。

興味津々。

無農薬の畑の土を菌や微生物でいっぱいにして、美味しく安全な野菜などを栽培するときに、一部のイノベーティブな就農者、つまりアーリーアダプターから注目されている農法だ。逆に言えば、大半の慣習農法を採用している農家からみれば、わけの分からない得体の知れない農法だろう。

具体的には木質チップ、おがくず、きのこの廃菌床などの炭素資材を畑に深く入れ込むことにより、土中の糸状菌(きのこ菌)が活性化してバランスのとれた微生物層を作る。そのパワーのお陰をいただいて肥料・農薬を使わないで野菜を栽培するというもの。

土中の微生物は、炭素資材を餌にしながら、土を団粒化していく。土が団粒化(こまなかお団子のようなもの)すると、通気性や通水性、保水性も改善される。また、逆に解体・分解作用を持つ微生物もいるので養分循環も創発する。そして、水源涵養などにもつながり、安全で美味しい野菜ができる。

多様な微生物による関係性のネットワークを畑の土のなかにつくっていくというものだ。60兆個の細胞から成る人間の腸には1000兆個もの菌が棲息してバランスをとっているが、たんじゅん農法を効果的に活用する畑の土壌のなかも似たような構造なのだろう。

畑の土壌は、野菜にとって腸の中の食糧のようなものかもしれない。

事実、「以前は大雨が降ると、雨水が表土の上を流れていったが、たんじゅん農法を採用してからは、すべて雨水は土壌の中にしみこんでゆく」そうだ。採れる野菜はぜんぶ生き生きとし、美味しくなったそうだ。

さて、土中での役割の終わった炭素は、大気中に炭酸ガスとして放散される。そして、草木の光合成により再び固定されてゆく。このように炭素は畑の土壌、植物、それらに関わるすべての多様な生物を介して様々な効果を生み出しながらグルグル循環してゆく。

ところが、慣行農法で肥料を使いすぎると、土壌は腐敗型に傾きやすい。その結果、虫がつきやすくなるし、その結果、農薬を使いがちになってしまう。すると、野菜は汚染され、肥料・農薬の味がする野菜となってしまう。

負のスパイラルにいったん入ってしまうと、なかなかそこから抜け出せない。正しいスパイラルにはいるためには、初めが肝心なのだ。

 

 

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