I型人間 X 共感性 = T型人間!?

知的人間類型論としてI型とかT型とかπ型とか、そういう議論に花が咲くことが1年に3~4回はある。

はからずも昨夜もそんな議論。

台風接近による大雨の夜にも拘わらず、サービス科学の分野で世界を飛び回っているJim Sphorer氏と、東工大の先生方とテーブルを囲んでビール片手に議論になったのだ。彼は明日、東京で開かれるサービス関係の学会でキーノートスピーチをするそうだ。

たしかに、今の日本の高等教育は、細分化された専門性の特定の分野をより狭く、より深く掘り下げてゆくような行きかたが強い。そうでなければ、論文も書けないし、少なくとも、労働市場の入り口でいい仕事にありつけることはできない。また、大学としてもエッジが効いた良質の論文を多数アウトプットすることが、世界ランキングを上げる上でもキメテのひとつになる・・・。

ところが、組織のマネジメント、多様な個人を巻き込むプロジェクト・マネジメント、あるいは、イノベーションの創発といったテーマになると、狭くて深い特定の領域にのみ強いI型人間だけでは手に負えない。

じゃ、そうしたらいいの?

そこで、T型人間の出番となる。確固とした専門を保持しながらも、多種多様な言語、価値観、専門分野や人々を受け入れ、瑞々しいコミュニケーションを繰り広げながら、資源の組織化にたけ、ケミカル反応をエンジョイしながら、something new、something awesomeを創ってゆけるようなイノベーティブな人。

こんな文脈で、ご都合よく仮説(時に妄想)されるのがT型人間。

IにはなくてTにはあるヨコ方向の一本のバー、あるいはのりしろ・・・つまり、「ー」。

西洋の知識社会やその系譜を継ぐアメリカの知的社会では、たとえばboarding schoolやschool of arts and sciencesでは、リベラルアーツの涵養に膨大なコストをかけている。留学時代以来、boarding schoolやschool of arts and sciences出身者(彼らの多くは、Ivy leagueへと進み修士、博士を持ってる)と何十人と接してきたが、はやり、奴らの発想力や話題は横方向に伸びていって、かつ、専門に落とし込む妙味に富む。

ここのI型の自分がいる。そしてその友人は別のI型人間。楽しい会話のなかで、そいつをヨコにして自分の頭に乗っけてしまうと、即興のT型人間の登場となる。大学の寮(residency)の中で繰り広げられる会話には、案外、そんなハタラキもあるように思える。バカに見えて、バカにできない知的対話の産物なのである。

自由文芸七科目とは、知的たらん、自由たらんとする人が持つべき実践的な知識・学問の基本と見なされた7科のことで、文法学・修辞学・論理学の3学、および算術・幾何・天文学・音楽の4科のこと。人文科学、自然科学、社会科学の基礎のような位置づけだ。

中世から19世紀終わりあたりまで、知的社会の基盤を提供してきた自由文芸七科目のようなarts and sciencesになりうる異分野横断的、融合的なdisciplineはなんなのか?

システム科学?

デザイン思考?

サービス科学?

グローバルリテラシー?

ちなみに、京都大学で長年教鞭をとり、現在はリベラルアーツ研究家として活躍している麻生川さんの見方にも説得力がある。

さてJimは、サービス科学を学問として打ち立てるためには、①モデル、②原論、③標準的なテキストブックの3つのことが必要だと言う。たしかに、西洋の知的社会を支えてきた文法学・修辞学・論理学・算術・幾何・天文学・音楽、そしてそれらの中央に鎮座する「哲学」は、これらの用件を満たしているように思われる。

あとは、態度の問題なのだという。

ヨコ方向の一本のバー、あるいはのりしろ・・・つまり、「ー」の根本にあるもので、ひとつだけ本質的に大切なものをあげるとしたら、それは、

共感性(empathy)なんだよ!とJim。

うっ、ナルホド。

論理というよりは体験・・・。

事実というよりは物語・・・。

理性というよりは感情・・・。

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共感がうまれなければ、異分野、異界をくっつけることもできない。人を引っ張り込んだり、繋ぐこともできやしない。組織を立て直したり、新しいベンチャーを興したりもできないだろう。ideaだって、「こりゃ、すげー」という共感と一対になって初めて問題解決に繋がってゆく。

専門職(多くはI型人間の集合であることが多い)が集う研究所や医療機関の運営、経営を活性化させるときに、多くのキーワードが持ち込まれる。「医療安全」、「リスクマネジメント」、「イノベーション推進」、「Team STEPPS (Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety)、「5S-KAIZEN」、「医療チーム」などなど。

これらの、ヨコ志向のツール、プログラムが実行された組織のうち、成功事例を抜き取って、そのプロセスを見比べたことがある。成功事例に共通することは、根っこのところで、「共感」を組織内外と境界領域において大いに盛り上げ、滋養したということだった。

empathyって英語で書いてしまったが、日本語の「共感」にはニュアンスがよく沁みこんでいる。共に、感じて、双方がやりとりして、当事者としてモノゴトを共有して、エンパワーして問題解決をはかってゆく。そんな行いの根っこにあるものがキョウカン。

価値共創(value co-creation)というbig wordも、「共感」がなけえば絵に描いた餅。

「I型人間 X 共感性 = T型人間」というふうにコトを見れば、また新しいアイディアやソリューションが湧いてくる。

 

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