「新たな地域医療構想」をバックキャスティグで使い倒す

10月に発表された新たな地域医療構想策定ガイドラインという文書は、率直にいえば、厚生労働省のお役人さん達が、「霞が関文学」と「霞が関絵図」を総動員して描いた“未来の理想像”である。よく言えば、官製社会イノベーションが埋め込まれているし、まあ、ありていに言えば、政策誘導のための仕掛けだ。もちろん長年厚生行政や診療報酬制度を分析・批判してきたわが身としては、「新たな地域医療構想」を、方向性としては理解できるのだが、この「構想」は、現場の責任とリアリティを背負っているわけではない。

だからこそ、受け取る側としては「そのまま鵜呑みにする」のではなく、健全に疑いながらも、「どう使い倒すか」「どう利用してやるか」「自分たちの組織をどう構想するか」を考える必要がある。

ではどう活用すべきか。これは都立墨東病院で開催される「地域多職種連携~医療・福祉・介護の連携エコシムテムづくり~ワークショップ」でも話すつもりだが、経営やシステム科学の世界でいやというほど使われてきたバックキャスティング手法が非常に相性がよい。バックキャスティングとは、システム思考の一部門なのだが、ざっくり言えば次のような発想である。

未来から考えるアプローチ
まず理想の未来像を設定し、そこから現在まで逆算して必要な手順を組み立てる。この場合、「新たな地域医療構想」が理想の未来像となる。

非連続の発想を生みやすい
“今の延長”では思いつかない革新的なアイデアが出やすくなる。

不確実なテーマに強い
SDGsやDXのように、解が一つに定まらない課題に向きあうときに力を発揮する。

さて、多職種連携・多機関連携の視点でこの構想を眺めると、実は活かしどころ=チャンス=レバレッジがいくつも見えてくる。ここでは代表的な7つを挙げておきたい。

共通言語・役割の整理
医師・看護師・リハ職・ケアマネ・介護職・地域支援者などが、急性期から在宅まで一貫して役割や連携手順を共有できるようにする。

定期的に集まれる“場”づくり
病院、診療所、介護サービス、地域包括支援センター、行政などが構想区域で集まり、継続して協議・調整できる仕掛けをつくる。

情報共有を支える基盤整備
患者の療養経過や退院後のフォロー、在宅支援の内容などを多職種で共有できるICTやプラットフォームを整える。

連携を担う人材の育成
ケア連携コーディネーターや地域支援ナビゲーターのような“つなぐ役割”の専門性を育てる。

地域ごとのカスタマイズ
都市部・地方部・過疎地域などで、医療・介護の資源状況が違うのは当然である。その違いに合わせて連携モデルを柔軟に変える。

連携の質を見える化して改善
在宅移行率や再入院率などをきちんと追いかけ、連携が本当に機能しているかをチェックしながら改善していく。

制度・報酬の後押しを検討
多職種連携が“良いことだからやってください”で終わらないよう、制度や報酬の仕組みでしっかりサポートする。

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