新著「多職種連携とシステム科学」上梓

(表紙)

科研費はありがたい。科研費研究で研究チームを創って、いろいろ仲間とわいわい・がやがやとコラボして、いくつかの病院と共同研究をして、データを集め、ガシャンと分析して、役割分担をしてシコシコと論文を書き、そして、論文がある程度溜まってきたので、一冊の本にした。

一人の力ではできないことだ。なるべく異なるバックグラウンドを持つ異才が集まるとそれなりに異質な力になる。異質な知力は異界越境する原動力にもなる。この研究プロジェクトには日本はいうに及ばず、カナダやフィンランドの研究者も参加してもらっている単著ではあるが、国境や専門分野を超えた仲間の協力があってこそだ。

それらに加え、出版社の存在も欠かせない。なにせ出版不況の昨今、書かせてくれる出版社とご縁を頂かない限り、本を出版することはできっこない。しかるに、いろいろなご縁が重なって出版にまで漕ぎつけた。書き始めたのが昨年の12月。出版まで約7カ月かかったが、あくせくといろいろな仕事をこなしながらも、上梓までのプロセスは本質的に楽しいものだ。

さて、従来の多職種連携(チーム医療)は、診療、看護、診療補助、福祉、介護という縦割り体質を超克しようという試みであった。しかし、医学、看護学、リハビリテーション学、社会福祉学、教育学、社会学、経営学、学習理論、組織行動理論、といった細分化された応用学問の視点から論じることに限界があった。

学問ないしは科学の体系は、基礎、応用、綜合という3段階を経て進化してゆくものだ。実践に近いところに位置する医学、看護学、医療管理学、公衆衛生学など、医療系の学問は極めて実践・応用志向が強い。この方向に行けば行くほど、専門分野は細分化せざるを得ない。タコツボ化である。

多職種連携やチーム医療が、個々の現場実践、現場の問題、方法論、そして、科学的知見を「綜合」するためのものならば、「綜合科学」の視座とメタ理論と綜合的方法論がぜひとも必要である。ゆえに、綜合科学の雄であるシステム科学の視座から多職種連携にアプローチする本格的なテキストブックが必要なのだ。

いぜれにせよ、1冊片づいてほっとしている。

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