チームワークの本質は自己組織性とコラボレーティブ・リーダーシップ

システム科学でいう自己組織性(self-organization)は、組織が外部からの指示や制御によらず、自らの意思に基づいて自律的に行動し自己変化する能力のこと。自己組織性は、動的な組織ガバナンス、草の根イニシアティブの形成、および半非公式または非公式のDIY(do it yourself)イニシアティブなどを説明し分析するためにしばしば使用されている。

創発的なチームワークやチーム医療に必要なことは、診療報酬上の加点や上層部からの指示やコントロールではなく、まずもって自己組織性だ。日本で流通している医療管理学や看護管理学では、この重要ポイントが見過ごされていてポッカリと大きな穴があいている。無理もない。これらの分野は内向きに閉じてグローバルなシステム科学の知見の学際的な摂取が遅れているからだ。

臨床多職種連携チームにおける自己組織化とは、チームメンバーが自律して活動や構造を調整し、新しい協力、調整、パートナーシップのパターンを創発するなど、必要な目標を達成する方法を指す(Lanham et al., 2013)。

システム科学の視点からは、自己組織性を発動さえるためにぜひとも必要なことが2つある。ゆらぎと自己言及の2つのメカニズムをチームに埋め込むこと(創発させること)が重要だ。リーダーは、チームに「ゆらぎ」をもたらし、内省的な「自己言及」を繰り返すことにより、組織学習が内面化され、自律的な意思決定がなされ、内部から変化することができる。

①コラボレーティブ・リーダーシップの共有

自己組織性の高いチームでは、協調的リーダーシップが一部の特定の個人に限定されるのではなく、チーム全体に分散する。ゆらぎと自己言及をもたらす協調的なリーダーシップを自律分散的に共有するので、とりもなおさずシェアード・リーダーシップを実現するととなる。各メンバーが自律分散的なコラボレーティブ・リーダーシップを共有し、共同で目標を達成するための責任を持つ。

②組織学習と成長

自己組織的なチームでは、組織内のメンバーが感情に根差した相互評価やフィードバックを通じて組織学習を促進する。組織学習を続けることによってチームは持続することとなる。インシデント、アクシデントを含むネガティブな感情を随伴する「失敗」から学ぶ文化が根付き、持続的な改善と成長がチームに埋め込まれる。

③意思決定の共有

自己組織的なチームでは、意思決定は占有されるのではなく共有化される。チームメンバーは、ひとりひとりが当事者として状況に応じてゆらぎながらも柔軟かつ迅速に意思決定つまり自己言及することが大切だ。

④内部からの変化

自己組織性に裏打ちされるチームは、内部から変化する力を持っている。だから、外部環境の変化や新たな課題に対して柔軟に対応することができる。そのようなチームは、たえず自分たちに問いかける自己言及を自己修復的なメカニズムとして発展させ、結果として変化に適応する能力が高まる。

日本国内の医療機関はもちろん、アメリカを含む先進国やスリランカやコンゴ民主共和国の途上国の医療機関でチーム医療についてコンサルティングやアドバイスするときには、5S-KAIZEN-TQMのフレームワークに自己組織性を埋め込んだフレームワークを用いていろいろな成果がでることを検証してきた。成果とは医療の質や安全レベルの向上だ。そして、5S-KAIZENをTQM(Total Quality Management)に昇華することができるようになる。

①のボレーティブ・リーダーシップが、ゆらぎと自己言及をもたたし自己組織性のトリガーとなるので、コラボレーティブ・リーダーシップが最重要なファクターとなる。コラボレーティブ・リーダーシップは信頼性と妥当性が検証された以下の10項目をカバーする質問に答えることによって可視化(計量化)できる。

①メンバーへの援助、②専門性の相互尊重、③補完的な能力の活用、④自由に意見を言う、⑤疑問を共有する、⑥新機軸を奨励する、⑦シェアードリーダーシップの推進、⑧参加意識と説明責任、⑨目標の共有、⑩精神的な支え合い。

Takatoshi Imada(2008), Self-Organization and Society (Agent-Based Social Systems) .Springer.

J. PortugaliCognition Complexity and the City(2011), 10.1017/CBO9781107415324.004

W. RauwsCivic initiatives in urban development: self-governance versus self-organisation in planning practiceTown Plan. Rev.

B. BoonstraPlanning Strategies in an Age of Active Citizenship: a Post-Structuralist Agenda for Self-Organization in Spatial Planning

F. HeylighenSelf-organization in communicating groups: the emergence of coordination, shared references and collective intelligenceUnderst. Complex Syst. (2013), pp. 117-149,Lanham HJ, Leykum LK, Taylor BS, McCannon CJ, Lindberg C, Lester RT. How complexity science can inform scale-up and spread in health care: understanding the role of self-organization in variation across local contexts. Soc Sci Med. 2013 ;93:194-202.

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