「ZOOM授業の利害得失について」を以前書いた。
今では授業ばかりではなく、講演、研究会、学会もZOOM等を使う遠隔モードが中心となってしまった。6月くらいまでは、各イベントが中止のやむなきに至ったことが多かった。しかし、7月以降は、僕が関与するほとんどすべての講演、研究会、学会がリモートにシフトしてしまった。
7月は札幌市立大学大学院での授業がリモートとなった。北海道で自転車ツーリングができないのは残念であったが、自宅の書斎から少人数のゼミ形式の授業をワイワイ、ガヤガヤ話あいながら楽しんだ。札幌まで移動する時間、コストがなくなり、効率が格段にアップしたことを実感。
8月、カナダの研究者を招いて東京で開かれる日本臨床救急医学学会学術集会のとあるセッションの座長をやった。だが、厳しい渡航制限のため、カナダ人教授の来日は不可能となった。そこで、招聘教授女史に頼み込んでパワポスライドをつくってもらい、さらに英語スライドに日本語のキャプテーションを盛り込み、それを使って、講演用のビデオをカナダ人教授の在宅で収録。試行錯誤しながら、その動画ファイルをdropbox経由で送ってもらい、オンデマンド形式で放映。演者の交通費、宿泊費がかからなくなり、学会の会員はいつでもどこでも視聴できるようになった。
というわけで学会開催者からはおおいに感謝された(はずだ)。多職種連携(Interprofessional Collaboration)に関する秀逸な講演なので、9月に開かれた他の学会の研究会でもそのビデオクリップをそのまま放映して友人の研究者を交えてネットでバーチャル遠隔パネルをやった。動画コンテンツは複数回使用できるので、一石二鳥、いや一石「多」鳥ができる。このメリットは大きい。(ただし、リアル会食など社交の場は制限されるのは残念)パネラーも視聴者も在宅のまま、バーチャルにネット上に拵えられた場に参集。
この期間を通して、大学の授業(大人数)と卒業論文ゼミ(少人数)はすべてZOOM対応。茨城県立医療大学で非常勤を務めているので、その授業もZOOM。毎回クルマを運転して利根川を越えて移動するのだが、往復の運転にもっていかれる時間がまるごと消えて効率があがったことこの上なし。学外の科研費の研究会も、ちょっとした打ち合わせもミーティングもすべて電話の代わりに遠隔対応のZOOM様の登場だ。
そして、今日(12/5)は、北海道助産師会でバーチャル・リモート講演。主催者の方が言っていたのだが、遠隔モードでネット講演を開くと、北海道のみならず九州、関西、関東一円からも集客でき、かつ講師を招聘する交通費や宿泊費がかからないので主催者はハッピーの一言(だろう)。実はこのZOOM講演は昨年、台風直撃のため延期になったものだ。遠隔モードでは、リアル講演が天変地異など不足の事態によってキャンセルになるリスクが大幅に低減もする。コンテンツをシェアする事業体は、この味を覚えたら旧態依然の高コスト集合研修にはおいそれとは戻れないだろう。
授業や講演をするスピーカーの役割、海外からスピーカーを引っ張ってきてコーディネートする学術集会座長の役割、研究会をマネジメントして司会をする役割などをこの数カ月の間にバタバタこなしてきたのだが、どの役割から見ても、リモートのメリットはデメリットを大きく凌駕するのは明白だ(と実感した)。ウィズ・コロナやアフター・コロナは、コンテンツをシェアしたり、人的資源開発に関係するあらゆるイベントは遠隔対応(リアルとの併用)になっていることだろう。
バーチャル(virtual)という単語は仮想的であると同時に実質的という相反する性質を両義的に含意する。なるほど、知識の獲得、移転、解釈、記憶という実質的な知的営為や適応学習(adaptive learning)は、仮想的なネットのリモートな場で粛々と執り行われる。見方をかえれば、コロナ禍がもたらした(促進させた)サービス・イノベーションの普及とも言えなくもない。
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