松本ワンダーランド

長野県看護協会からシステム科学の視点で、医療看護の講演をしてほしいというリクエストがあったので、松本に行ってきた。5時間ぶち抜きの集中講演のあとは、テキストとして使用した拙著の和気あいあいのサイン会。ありがたいことです。講演は講演でプロとしてこなすのだが、社会貢献とはいえ仕事だけで信州を往復するのはもったいない。で、講演の前後に、その他の遊びの要素を盛り込んだらけっこう面白い旅となった。今回の遊びの要素とは、①移動手段、②隙間時間の有効活用、そして、③新しい出会いである。

まずは旅の移動手段。今回は天候に恵まれたため、2時間半かけて、特急あずさで山梨県、長野県を駆け上がって、富士山、奥秩父、南アルプス、中央アルプス、北アルプスなど、車窓から錚々たる冬の山岳風景を楽しんだ。山好きの身からすれば、たまらない。新宿から松本まで、首都高、中央高速を車でぶっ飛ばすとETC料金は5980円。特急あずさだと6620円。ガソリン代をカウントすれば、あずさのほうが遥かに安くつく。また、列車の旅は、座って景色や会話を存分に楽しみながら、移動できるのがよい。しかも、特急のほうが、1時間~2時間早いので、特急あずさの旅もいいものだ。

次は隙間時間の有効活用。松本城にまで脚を伸ばした。天守6階まで急な階段やはしごをつたって見物。石を落として外敵の侵入を妨害する石落や、鉄砲や矢を放つための鉄砲狭間、矢狭間といった防御機能の様々な層工夫もよくよく見ると、機能だけではなく、美しさも兼ね備えた意匠が凝らしてある。また、乾小天守の12本の丸太柱は、松本城が創建された400年前から今日まで、ずっと城を支え続けてきているという。現存する日本最古の五重の天守だけあって、重厚にして華麗さを併せ持つ威風堂々とした堅固な天守だ。市川量造や小林有也といった天守閣保存に尽力した功労者の存在も忘れてはなるまい。

最後は新しい出会い。夜は夜で、急遽あってアイディア交換をすることとなった、まだらうしさんらとホテルの近くの料理屋で鍋をつつきながら歓談。Table Top Role Playing Gameの「狂気山脈」をプロデュースしている人だ。薬学マスター(漢方)のバックグラウンドを持ち、現在はなんと山小屋に住んで山岳ガイドをやりつつ、TRPGプロデュースも行っている異質を高次元で統合してるイノベータだ。いいなぁ、こういう人。なぜ「狂気」なのかが、本人といろいろな話をしているうちに分かったような気がした。

“クトゥルフ神話”という神話と登山の物語性という異質なモトコトを結合させたTRPGシナリオ 『狂気山脈 ~邪神の山嶺~』を原案とするアニメ映画制作に挑戦するプロジェクトはすごい。 ファンドライジングの目標金額は8,000,000円だったものの、支援者数はなんと11,862人にまで増え、 119,300,191円もの大金が集まった。プロパライアトリでクローズドなスキームではなく、共感を感じた幾多の人々が、それぞれマネーを投入して、自分たちが身の丈に応じてコラボレーションして、フリー、オープン、かつクリエーティブに遊ぶことができるゲーム(場)づくりに参画する。TRPGの場で、かくもフラットでオープンでクリエーティブな価値共創が進んでいるのだ。

それやこれやで、新/旧、クローズド/オープンなど織り交ぜ、コラボレーション、イノベーション、システムという研究的(遊び的)視点からも、実に多くのことを知りえた松本への旅だった。かくして、松本にはワンダーランドが拡がっていたのである。

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