酸ヶ湯から八甲田山へ。標高1000mを越えてもなんと30度以上の酷暑。
眼下の針葉樹を中心とした樹林帯から、標高が下がるにしたがい広葉樹の豊かな森が広がっている。北を向けば陸奥湾が伸びやかな弧を描き、西を望めば岩木山が弘前の盆地の向こうに鎮座まします。
よい風景だ。この風景を眺めていると、遠い記憶がよみがえってくる。その昔、自転車仲間と東京から走り始め、野宿をしながら、仙台へ、秋田へ、そして能代をへて五能線沿いに北上し、鰺ヶ沢から五所川原へ抜け、青森に至ったことがあった。そして、当時の青森駅前の植え込みで野宿してから、眼下の道をひたすら上り、酸ヶ湯温泉キャンプ場へやっていたいのだ。
その後、一団となって、仙台まで山また山を越えて走り抜けた。
自転車バカというか、なんというか。そのバカが走った過去のルートをこうして、当時夢想だにしなかった「未来」から遠望してみるのもいいものだ。過去と未来は陸続きで繋がっていて、「今、ここ」に立っているのである。
誰がのこしたのだろうか、こんな詩がある。
Yesterday is history.
Tomorrow is a mystery.
Today is a gift.
That is why it is called the present.
こんなふうに訳してみようか。
「昨日は歴史。
明日は神秘。
今日という日は贈り物。
だから今日という日はプレゼント」
最後のpresentという言葉に、この詩の味わい深い機微が凝縮されている。
今日という日は、なるほど、過去と未来が織り込まれている現在(present)だ。それは、かけがえのない贈りもの(present)として、「今、ここ」に出現(present)するのだ。
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