筋トレを有酸素運動に加えてみたウェルビーイング効果

朝は朝日を浴びながら、ウオーキング、ジョギングなどの有酸素運動からスタートする。都内の大学で教育・研究を行うようになってから朝の時間がたっぷりとれるようになったこともあり、4月から筋トレをメニューに加えている。5kgのダンベルとプッシュアップ(腕立て伏せ)、和風スクワット(四股)が基本。有酸素運動、筋トレ、柔軟体操を組み合わせて約1時間のメニューだ。

筋トレを含むセットメニューを終えたあと、体がじんわり温まり、頭の中がすっきりして「よし、今日もいける!」という気分になる。あの爽快感は、単なる思い込みや気のせいではなく、実は体の中でいくつもの変化が起きた結果なのである。これらの変化は、充実した自転車ツーリングやアウトドアにも直結しているのだが、案外、知的活動にも大きな影響がある。

① 脳内物質がつくり出すリセット感

筋トレをすると一時的に交感神経が高まり、終わる頃には副交感神経が優位に切り替わる。この切り替えの中で、脳内では少なくとも3種類の物質が分泌される。

  • エンドルフィン:痛みを和らげ、気分を高揚させる。
  • ドーパミン:やり切った達成感を強める。
  • セロトニン:心を落ち着かせ、安らぎをもたらす。

これらが一体となって働くことで爽快感、達成感、静謐感などポジティブ感情が増し、運動後には「気分のリセット」が訪れる。まさに脳という臓器がウェルビーイングに直結するギフトを与えてくれる時間といえるだろう。エンドルフィン、ドーパミン、セロトニンという神経伝達物質は、誰もが持っている脳内リソース。これらを筋トレによって有効活用しない手はない。

② 筋肉が放つ“ホルモン”=マイオカイン

最近の研究では、筋肉や筋膜はただ動くだけの組織ではなく「内分泌器官」としての顔も持つことが明らかになっている。筋収縮のたびに分泌されるマイオカインは、全身にメッセージを送る“ホルモン”のような存在だ。筋肉や筋膜という内分泌効器に刺激を与えて鍛えることで、おおむね物質的に裏づけられた4種類の効果を得ることができるのだ。

  • IL-6:炎症を抑え、疲労回復を助ける。
  • BDNF(脳由来栄養因子):脳神経ネットワークの可塑性を高め、学習や記憶を強力にサポート。
  • イリシン:脂肪代謝を促し、脳機能も活性化する。
  • SPARC:気分改善や抗うつ作用との関連が報告されている。

筋トレ後に頭がスッキリしたり、気分が軽くなったりするのは、こうした“筋肉からの贈り物”の影響でもある。筋肉や筋膜から分泌されるマイオカインは教育、研究、執筆を含む知的活動を支える脳神経ネットワークを柔軟かつ緊密なものにしてくれるのだ。エンドルフィン、ドーパミン、セロトニンは脳内リソースだが、マイオカインは筋肉という内分泌系のリソースだ。脳X筋肉の恩恵にあずからない手はなし。マッチョな筋トレは、知的活動のウェルビーイングを増してくれるのだ。

③ 血流・呼吸・代謝のリズムが整う

さらに、筋トレは血流を刺激して、改善し、脳に酸素をしっかり届ける。運動中に生まれる乳酸は単なる疲労物質ではなく、脳にとってはエネルギー源となり、認知機能や覚醒度を高める働きがある。加えて、自律神経のリズムが整うことでストレスホルモン(コルチゾール)が減り、リラックス感が深まり、主観的なウェルビーイングを高めてくれる。

①脳X②筋肉・筋膜X③血流・呼吸・代謝の各要素が相互に影響しあい、結果としてウェルビーイング効果を高めてくれる。

長年、師と仰ぐ渡辺昇一「知的生活の方法」他や鷲田小弥太「研究的生活の方法」他の知的文脈を継承するこを目指す者として、上記の要素を盛り込んだ新しい知的生活、研究的生活の方法なる本を構想していみるのもよいかも。

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