胸突坂下のK’ingsman Hamburger

文京区のレストランの多様性は素晴らしい。なかでも注目してきたのは本格的ハンバーガー屋。アメリカ留学中によく食べていたアメリカンな手作りハンバーガーは、日本にあるようで、なかなかない代物なのだ。

世間話だの、人生相談だの、たわいもない雑談だのしながら、以前の大学で卒論を指導していた学生といっしょに訪れた。

胸突坂の急な下り道を降りて、菊坂にぶつかるあたりに、まるで英国スパイ映画の隠し扉のように、ひっそりと現れる一軒のバーガーショップ――K’ingsman(キングスマン)。店名からして只者ではない。そう、『キングスマン』といえば、スーツを着こなしたスパイが、傘で敵を倒すあの映画シリーズだ。だがここでは、武器は傘ではなく、手ごねのビーフパティである。

扉を開けると、カウンターがたったの5席。まるで「選ばれし者」だけが座ることを許される秘密の作戦会議室か。いつもなら長蛇の列ができるのだが――今日はなんと行列ゼロ!まるで任務成功のご褒美のように、すっと潜入に成功した。

注文したのは、看板メニューのプレジデント・ハンドメイド・バーガー。ダブルのパティは厚く、焼き加減は完璧。バンズはほんのり甘く、噛むと香ばしい。サイドメニューのフライドポテトも、チェーン店の無味乾燥なものとは異次元で、ポテトそのものの味が香ばしい。口に運んだ瞬間、外の世界がフェードアウトする。

店主は無口で、生真面目に目の前の鉄板に集中している。不愛想なその姿はまるでミッション中のエージェントか。パティの焼ける音、漂う香り、そして手際のよさ、手狭なカンター、アメリカンな雰囲気――すべてがコンパクトな空間にほどよくアレンジされている。

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