よろづやで後輩と邂逅

学部時代の後輩のO野君が経営する湯田中温泉の名門旅館よろづやに行ってきた。前回は、もう30年以上も前に自転車仲間と渋峠を越えて投宿。しかし、今回は自転車ではなく、誕生日祝いを兼ねた家族旅行の一環での投宿である。元来生真面目なO野君は、昨今の火事騒動にも意気消沈することなく、逆に飛躍のチャンスととらえ、旅館経営に新たな弾みをつけている。

さすがだ。実に立派である。

それやこれやで、彼は有能な旅館経営者として大成、一人娘のご令嬢もお婿さんをとり、2021年(令和3年)は彼にとっても節目の年ということだろう。そんな彼は、夕食後、親切にも二人だけで飲む特別室を設えてくれ、旧交を温めつつ、いろいろな話にうち講じた。写真は、彼が差し入れてくれたウイスキーとワイン、そしてこの季節の信州名産の紅いリンゴだ。

だいたい自転車仲間との飲み会は、在学中も卒業後も、複数でわっとやるのが慣例なので、サシで飲むという機会はめったにない。男ふたりが、それぞれの人生を振り返りつつ、展望しつつ、さらにバカ話を繰り広げるのもオツなものである。

生真面目さが彼の人生の不変の主旋律であると、不覚にも勝手に思いこんでいたのだが、あにはからんや、彼の人生は、その生真面目さを超越する多様性を彼に刻印していた。こうして旧友に加わった新たな側面に気づくのも、実に旧交を温める間柄の醍醐味ではなかろうか。

多感な20代前半の一時をともに自転車に乗って時間を共有した旧友の存在は貴重である。そんな共有された時間から、それぞれの人生を歩みだし、多様な経験を積み、当時の仲間でさえ知りえないような多様なインターナル・モデル(敷衍すれば世界観、人生観とでもいってよかろう)を構築してゆく。

そして、長い時間が経過した後のある時、ふと再会して、お互いの世界観、人生観なるものの変化を確認し、共有しあうのである。けだし貴重な機会である。

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