先月滞在した清里の私設山荘近くの遊歩道で接近遭遇したヤマユリ。 ヤマユリ (Lilium auratum ) は「ユリの女王」とか「里山の宝石」とよばれているそうな。そんなヤマユリが八ヶ岳南麓に群生を成して自生している。
花弁はかなり大きめで、直径約20cmを超える大きさにもなる。シロ地に金色の太いラインが花弁の中心から外縁に向けて放射され、海老茶色の斑点がアクセントのように色を添える。白いめしべ、赤いおしべもダイナミックで豪華なたたづまい。芳香も強く、鼻腔にふれれば、すぐヤマユリと判る。やぶのむこうに生えていて目には見えなくても、この強い香りで、ヤマユリの存在は容易にわかるほどだ。
このように視覚、嗅覚をしっかり印章的に刺激するので、 「ユリの女王」とか「里山の宝石」 と呼ばれるのだろう。
発芽から開花までには少なくとも5年以上かかり、また株が古いほど多くの花弁をつけるという。風貌や芳香はとにかくインプレッシブだ。その印象を形容すれば、月並みに「豪華」、「華麗」と言えるだろう。だが、反面「毒々しい」、「過剰」などという形容も可能かもしれない。
このようなアンビバレンツな含意をもって、ヤマユリを眺めるのも面白い。
英語には、“No rose without a thorn.(とげのないバラはない) というよく使われる表現がある。それを転ずれば、「綺麗なヤマユリには毒がある」という表現も可能だろう。 事実、ヤマユリの根には、非常に灰汁が強くて食あたりを起こす場合があるのだ 。
ゆえに「毒のないユリはない」”No Lilly without poison”とでもいえようか。
そこに美しい女性には気をつけよ、という戒告めいた意味でもこめるか。また、どんな美しいものにも有害な一面がある、という含意を忍ばせることもできるだろう。いずれにせよ、有害な一面が隠微に潜在することによって、ますますヤマユリの美しさが顕在し、引き立つのである。ヤマユリを愛でながら、そんなことをつらつら思った高原であった。
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