拙著「多職種連携を推進するコラボレーション大全」を今月末上梓

謹賀新年。

過去3年間、科研費のおかげで亀のような歩みではあったが、まあ、いろいろと研究が進んだ。ひとえに、複数の共同研究病院の幹部の方々、分担研究者やカナダ、アメリカ、ヨーロッパに散らばっている国際共同研究者とのコラボレーションのお陰だ。

単独でコツコツ積み上げるスタンド・アローン型ではなく、むしろ、専門を異にする専門家が集まってチームを作り進めるコラボレーション&学際研究型のほうがクリエーティブだ。やっていて張り合いもある。井戸端会議や温泉でワイワイ、ガヤガヤやるのが好きな人間にとっては、志と気持ちを同じくする複数の研究者で進める学際研究のほうが楽しい。楽しいから、研究も進む。研究が進めば、ペーパーも書ける。ペーパーが集積すれば、おのずと、ひとつの「論」となり、その論たるものは、すなわち、出版社との有難いご縁を得て、1冊の書物ともなる。

たしかに、論文・ペーパーはジャーナル・アカデミズム全盛の昨今にあって、必須の知的アウトプットだろう。でも、ペーパーだけ書いていればいいのか、と言えばそうでもなかろう。複数のペーパーが集積することによって、ひとつの大きな思索の構え、あるいは、方法論の体系がふわっと立ち現れることがある。ちょっと大げさに言えば、その構え、体系のようなものを1冊の書物として「形式知化するのである。

商業誌にとある記事を書いたことがご縁となり、その出版社と今回の企画が立ち上がったので昨年の夏ごろ。おおむね15万文字くらいの原稿で1冊の本となる。3か月90日で割れば一日あたり約1700文字なので、3か月で目標を達成するためには、一日あたり書き進める分量は400字づめ原稿用紙4枚強となる。〆切日から逆算して、このペースで執筆作業を割り振る。無事社内の決済もおりて、執筆にとりかかって3か月は、隙間時間を有効活用して、他のいろいろなことを処理しながら、同時並行で書き進めてきた。

まず、毎朝、原稿ファイルを開く。そして、2分間原稿の続きを集中して熟慮する。そして20分執筆に集中する。いい集中が得られれば、20分が2時間となる。2時間もあれば最低、原稿用紙5枚(2000文字)をゲインすることができる。これが「2分・20分・2時間の原則」あとはエクセルで日ごとの進捗管理を行い、最低一日2000文字のペースで機械のように淡々と文字を起こしてゆく。執筆マシンのように書いている最中には、次々と新しいインスピレーションが湧いてくるのだが、下記④のエディタに新規アイディアのアウトラインを作っておき、そこに放り込んで、前後の文脈につないでゆく。

さて、ライティングとはそのように習慣化すればはかどるものだが、ライティングの作業そのものは、だいたい13つくらいの行程から成る。

①企画を拵える。本の企画を「拵える」とは文字通り、手を使ってアイディアを濾し出し企画を立てるということ。よーく本の主旨、アウトライン、類書との差別化ポイント、読者ニーズ、なぜ書くのか、どのくらい読まれるのか、などなどを仮説として具体化する作業だ。1冊の本を世に出すことを事業にたとえるなら、企画とはまさに事業企画(ビジネスプラン)だ。この書くための準備作業は最も知識集約的でありクリエイティブなタスクだと思う。後の12ステップを全部足しても、このステップのほうが重いと思う。

②パワポスライドで全体のストーリーを視覚的にデザインする。今回は80枚くらい。過去、講演や授業などで使ったことがある知的資産も有効活用する。

③過去執筆したペーパーを引用しながら、オリジナルな見解を交えて論を展開する。自分ひとりでは煮詰まるので、研究仲間に雑談がてらいろいろ意見を求める。

④使い慣れたテキストエディタ「秀丸」をフルに使って、アウトラインを調整・構想しながら、全体と部分を行ったり来たりして、テキストをガンガン打つ。この作業は単独だがダイナミックで面白い。(素人はこの段階でwordを使ってしまうのだが、それはNG)

⑤15万文字を超えたあたりで、テキストをword file化する。こうすると本の原稿を書いているというリアル感を得ることができる。この作業も単独。

⑥ワードファイルにパワポで作った図案を入れ込む。このあたりで初めて紙に印刷してみる。紙の質感を得て、ますます「本の原稿感覚」が湧いてくる。

⑦引用文献をもれなく脚注化する。

⑧小見出しにマークをつけて、目次を作成する。目次づくりはコピーのづくりのようなものだ。

⑨キーワードをチェックして文末の索引を作る。目次、脚注、索引の3点セットで本文を立体的にとらえることができるようになる。地味だが、熟練した読者には、重宝がられる。

⑩校正稿のチェック。丁寧で正確な仕事ぶりの校正者の方をアポイントいただいたので、よかった。今回は、推考しつつゲラに書き足したので、著者校正は3回となった。この作業は校正者との綿密かつアナログなコラボレーション。バグ、誤字脱字、論の矛盾点など、著者の目線ではないフレッシュな目線は実にありがたい。

⑪最後にもう一度研究倫理の目線から、引用、データの扱いなど含めて問題はないか確認する。

⑫下版準備、索引、著者略歴などをPDF校正を経て下版作成。そして印刷。これは出版社サイドの作業。

⑬本が出来上がる。営業とのコラボレーションで販売促進。

今度の本は、まあ、そんな感じでコラボレーションを研究しているうちに、いろいろな仲間とのコラボレーションによって、たち顕れたものか。書物とは、構えや体系が「顕れ」て、「現れ」るので、書物を「著す」とも言うそうな。

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