猪苗代湖の松濤

猪苗代湖秋山浜キャンプ場

今年の夏は学生を連れてカナダには行かず、クルマに自転車、キャンプ道具を積んで東北地方を走ってきた。コロナ禍前は連続17年に渡って毎年夏は北海道に行っていたので、東北地方への探訪が手薄になっていた。また、清里のセカンドハウスを処分したこともあり、これからは山梨方面にとらわれることなく、クルマに自転車、キャンプ道具を積んで広く遍く旅するスタイルを極めたいものだ。

ということで、青森まで行って帰ってきた。初日は猪苗代湖へ。猪苗代湖の南岸にある秋山浜の無料キャンプ場には見事な松林がある。そこでキャンプしていたおり、おもむろに一陣の風が湖面から吹いてきたかと思うやいなや、かそけき不思議な音の波があたりを包み込んだ。

そう、松濤だ。

松林を渡る風によって、無数の松の梢が重なり合い触れ合って生じる、たおやかでかそけき自然のシンフォニー。その1/fゆらぎ、つまり濤(波)がまわりの風景をケアするように一瞬あたりを包みこみ、次の刹那には、また静寂があたりを包み込む。

松濤のゆらぎは静寂のなかにこそ存在する。

振り返ってみれば、もう10年以上も松濤に耳を澄ませたことなどなかったようにも思える。生活空間に静寂が空疎だったということだろうか。静寂に身を包む時間が枯渇していたのだろうか。松濤のゆらぎは、そこはかとない自己言及をもたらすものだ。

静謐をたたえる湖面の向こうには磐梯山のゆったりとした稜線。そして松濤。敢えていえば、アウトドアの値千金のひと時か。旅の途上で遭遇する、ゆらぎと自己言及が自己組織化への契機となり、旅こそが、自己組織化の過程なのかもしれない。

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