AITCS(Assessment of Interprofessional Team Collaboration Scale)日本語版

カテゴリー : 医療サービスイノベーション

「Interprofessional Team Collaboration」の画像検索結果

多職種協働チームの活性度、問題を多面的に計測する日本語版AITCSを実装するクラウドベースの調査システムがなんとか出来上がった。

日本の医療機関や地域包括ケアでも多職種協働が注目されている。昔はチーム医療を呼ばれていたが、すでにこの用語は陳腐化している。

協働や連携が必要なのは医療内部に限定されるのではなく、保健、介護、福祉、まちづくりなどを横断するヘルスケア全体≒地域包括ケアシステムに棲息するあらゆる職種や当事者に拡がっているからだ。

だから、チーム医療ではなく、多職種協働なのである。

AITCS(Assessment of Interprofessional Team Collaboration Scale)とは、英語圏で広範に用いられているヘルスケア関連の多職種協働の効果、機能などの程度を客観的・計量的に測定するスケールだ。参考論文1参考論文2

昨年、仕事でカナダの大学に滞在しているときに、多職種協働を看護の視点から研究しているカナダ人研究者たちとわいわい雑談した。その時に紹介してもらったのだ。

ありがたいことだ。

そこで早々に日本語に翻訳して日本語版AITCSを完成させた。さらに界隈の研究者仲間に声をかけて、公衆衛生学、医療コミュニケーション、助産学、精神看護学、ヘルス・インフォーマティクス、医療管理学などの多職種協働の研究チームを造った。

幸いにちょっとしたグラントもとれたので、いい研究になりそうだ。

そして、質問票のセットをクラウド環境に構築して、スマホ、PCでもストレスなくアクセスできるようにした。病院に対して実施して因子の整合性、信頼性などを因子分析手法を駆使して計量心理学的に実証してみた。

なかなかいい。

いまやヘルスケアの現場では、広範なチームでデータ、情報、知識、知恵をシェアして働くスタイルの確立がまったなしの状況だ。

臨床、ライフログ、ヘルスケアの質や安全などに関する、ありとあらゆるヘルスケア情報が生成され、共有され、ストックされ、活用されるプラットフォームが多職種協働チームだ。

ベンチ(研究)とベッド(臨床現場)を横断的に架橋するトランスレーショナルなチームにも多職種協働が求められる。ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術、認知科学(4つの頭文字をまとめて“NBIC”と呼ぶ)を基盤とした科学技術の分野融合的な収斂させてイノベーションを創発させるのも多職種協働チームだ。

つまり、多職種協働チームが異分野架橋的情報(トランスレーショナル・インフォマティクス)を含むワークスタイルのプラットフォームになりつつある。

しかし、日本では、一般職、主任、課長、部長、経営者といったタテ型の組織価値観、社外・社内といったクローズドな意識が隠微に強く、職種ごとの隠然たるヒエラルキー構造、専門ごとのサイロ構造などが多職種協働チームを阻害しやすい。

そのような日本的文化事情(?)を背景に、とかく抽象論に終始しがちな多職種協働の程度や問題を、日本語版AITCSを用いることによって、実証的に計量化して「見える化」できるので、インパクトがあるツールになるだろう。

 

診療報酬・介護報酬解説BOOK 2018(平成30)年度改定対応版: 看護政策・経営学で読み解く

カテゴリー : No book, no life.

拙著を出版しました。

今回の企画は、大島敏子先生とコラボして、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定を受け、看護の現場に直結する内容を選りすぐって改定裏話も含めて解説するというもの。

ただし、類書と最も異なるのは、看護政策・経営学という松下独自の体系をベースにして、診療報酬・介護報酬のツボをつかみ、うまく活用するノウハウを紹介しているところです。

一般病棟入院基本料の評価体系の見直し、入退院支援など地域連携をはじめとした加算の内容から今後の方向性まで、看護管理者が押さえておきたいポイントを解説しています。

医療管理学、政策分析学の立場から松下が編集と執筆を行いました。さて、ここでは一般病棟入院基本料の評価体系についてのみ書きます。

              ***

そもそも7対1が創設された2006年に、多くの病院が高い報酬を求めて 7対1を取得しようとして看護師採用争奪戦が巻き起こりました。
 
 厚労省は、当初は7対1の届出病床数2万床を政策的な目標としました。この読みが大きく外れ、ピーク時には約38万床まで激増してしまいました。
 
 政策的な誤算を通り越えて、これは事実上の大失政と言わなければなりません。
 
 しかし、厚労省はこの失政を認めませんでした。「官僚の無謬性」という疾患です。
 
 あげくのはてには、7対1が過剰になったところで、厚生労働省は7対1の施設基準を厳しくすることよって、7対1 から10対1に逆誘導しなおしました。
 
 さらなる失策の上塗りです。
 
 このように 7対1 と10対1を巡る入院基本料の改定の歴史は、創設時の誤算と失政の上塗りともいうべき状況です。巷かまびすしい根拠に基づいた政策策定(Evidence-based Policy Making)とは隔絶しています。
 
 このようにして、社会的共通資本(宇沢弘文)である医療・看護サービスが、社会的共通資本を擁護、増進するべき厚労省によって、こともあろうに毀損されてきたのです。
 
そして、改定のたびに、医療経営関係者の吐息、被害者意識、怨嗟、冷笑がないまぜとなり、不信感を醸成してきました。

今次改定もこのような歴史的文脈から分析する必要があります。
 
2018年の前回改定は、7対1と10対1の最高部分が、それぞれ1591点と1387点であり、その差は204点という大きな報酬差がありました。また医療機関としても管理単位が異なると状況に合わせて弾力的な配置をしたくてもできませんでした。そのため 7対1から10対1への届け出変更が非常に難しかったのです。これは制度設計に問題があったのです。
 
 ところが、今次改定では積年の失政の上塗りを一気に「御和算」して、大胆に制度設計をやり直してきました。

つまり、患者の集客が滞り、稼働率が低下し、重症度と医療・看護必要度が低下すると7段階の階段を右上から左下に向かって落ちることになりうるのです。
 
 筆者がペイ・フォー・パフォーマンス7段階逆スライド方式と命名する所以です。
 
 7対1の人員基準をクリアして1591点を確保していたにも拘わらず、稼働率が下がり、重症度と医療・看護必要度も下降すると、急性期一般入院基本料の2階部分が、入院料1(1591点)→入院料2(1561点)→入院料3(1491点)→入院料4(1387点)→入院料5(1377点)→入院料6(1357点)→入院料7(1332点)というように落ちてゆくという仕組みです。

新時代のキャリアデザインは3KX3F

カテゴリー : デザイン思考

画像に含まれている可能性があるもの:空、靴、飛行機、屋外

<岐阜城から長良川を遠望>

名古屋大学医学部附属病院キャリア開発支援センターにおよびいただき、アウトリーチ&講演に行ってきた。

「働き方革命」とかいろいろ議論があるが、①基業、②奇業、③起業、④福業、⑤副業、⑥複業が軸になるという話をさせていただいた。医療関係者の新しいキャリアデザインは3Kかけることの3Fとなる。

3K
①基業  専門性の基本をシッカリこなす仕事
②奇業 奇妙奇天烈なモノコトを仕事化する
③起業 自分で業を起こしてしまう起業
3F
④福業 まわりの人たちを幸福にする仕事
⑤副業 メインの仕事いがいに自分ならではのサブ仕事
⑥複業 複数の仕事をこなすスーパーフリーランス自由人

さて、時間を作って、長年の課題であった金華山の岐阜城に登る。20年くらい前だろうか、長良川のほとりのコンベンションホールで開かれた第1回日本看護サミットでパネルをやったことがあった。

その時に金華山を見上げて、あそこに登ってみたいと思ったのが最後で、結局仕事などに追われて、登る機会を逸していたのだ。

なんのことはない。働き方革命をああだこうだ言う前に、もしかしたら遊び方革命が必要なのかもしれない。

ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)たらんとするためには、仕事のなかに遊びの要素を織り込み、遊びのなかにも仕事の要素を含ませ、仕事を遊びを無境界化させるのである。

新著「医療看護イノベーション」表紙の件

カテゴリー : モノ書き

自動代替テキストはありません。

 新しい著書を汗水垂らしながらやっと出版することができた。この本のなかで最も気に入っているのが表紙の右下の不思議なイラスト。

とある不思議な出会いとご縁がきっかけとなり、この不思議なイラストが新著の表紙を飾ることになった。

その話をちょっと書き残しておこう。

2年前の夏、サイクリスト松下は北海道の然別湖畔でキャンプしていた。千歳、富良野、美瑛を自転車で巡り、層雲峡で自転車を野営場において大雪山を徒歩で駆けまわり、また自転車にまたがって、三国峠、幌鹿峠というけっこうデカい峠を登って下って、やっとの思いで辿り着いたのが然別湖北岸キャンプ場。

馬鹿のひとつ覚えのようにチャリで走りながらも、実は、チャリで無心に走っている時には、思いがけないアイディアが美しい風景のなかから風に乗って突如やってくるのだ。

身体活動にエネルギーを集中させ、言語活動を認知の底に沈め、言語が尽き果てた文脈に「それ」はやってくる。モノカキのアイディアは、言語が尽き果てた身体知の次元からやってくるとは、不思議といえば不思議か。

言葉の境位を越境し、そこに横たわる豊饒な身体知の次元を遊泳することによって、「それ」に遭遇することができるのだ。

「それ」つまり、拙著の構想を練り上げたのは、研究室や書斎の中ではなく、この自転車ツーリングの最中だった。自転車ツーリングは究極のアイディア・ジェネレータなのだ。

画像に含まれている可能性があるもの:山、空、屋外、水

疲れ切って泥のように寝て、起きた、その翌朝、霧が流れる静かな湖面を眺めていると、静謐な湖面を一艘のカヌーが朝霧のなかを静かに進んでいる。その神秘的なカヌーイストは湖岸に上がってくると、実に気さくで親切な人だった。

「いいですね、こんな朝から鏡のような湖面をカヌーで漕ぐなんて。あこがれます」

「よかったら漕ぎませんか?」

「うわぉ! いいんですか!」

ということで然別湖北岸の静謐さをたたえた湖面をカナディアン・カヌーで漕ぐという奇跡の時間を得たのだ。

嬉々として湖面を漕いでいると、カヌーに乗った品のいい美しい女性が声をかけてきた。カヌーを漕ぐ機会を与えてくれたカヌーイスト氏の奥さまだった。

至福のひと時を堪能して陸に上がり、奇跡の湖面の感動と感謝の気持ちをぼくは朴訥ながらもあらん限りの言葉を紡いで夫妻に語った。

その御夫婦とは幸いにもfacebookで繋がった。お子さんを連れた仲睦まじいご夫婦が然別湖の朝まだき、カナディアン・カヌーを静かに漕いでいる。

こんな幸福な風景はない。

自然と家族が調和している。

聞けば奥様は腕利きのイラストレータ。新著の表紙にふさわしいと思い、無理を頼んで、奥様のイラストを拙著の表紙に使わせていただいた。

不思議なご縁を頂いてできた、拙著の不思議な表紙なのだ。不思議にして繊細なイラストの上には「イノベーション」という大きな活字が横たわっている。

診療報酬制度の改定解説本  

カテゴリー : No book, no life.

看護経済・政策研究学会に出てみないか?ととある人に言われ、時間もあるし出てみようと思い出てみたら、議論がけっこう面白かった。パネルディスカッションの延長でフロアを巻き込んでワサッと話題が盛り上がり、会場のあちこちから手があがりアツい議論になったのだ。

看護経営学という専門書を書いたことがあるくらいだから、看護経済・政策については一言も二言も言いたい方だ。修士時代の専門は、政策分析&経営学(Policy Analysis and Management)と健康医療管理学(Health Administration)なので、だまっているほうが難しい。また、だまって議論を聞いている性分ではなく、議論に首を突っ込んで、あーだこーだ言うのが好きなのだ。

で、いろいろ言わせてもらった。さっぱりした気持ちになって会場を出て遊びに出かけようと思っていたら、とある人から声をかけられた。これまた面白い話に発展した。

数日後、その人(看護界ではかなりの著名人かと)から電話が入り、なんでも本の中心的な章をいくつか書いてほしいいとのこと。とどのつまりは、スキマ時間を中心に3か月でB5版130ページの原稿を書いた。20分スキマの時間ができれば、どのような仕事をやっていてもPCに向かって原稿を書き進め、クラウドにぶち込んでおくのだ。この繰り返しだ。

自身17冊目の本が出来上がってきた。

さて2年に一度のペースで行われる診療報酬制度の解説は、ある意味、厚生労働省の政策マーケティングの「御用」のお先棒を担ぐことにもなりかねない。ここをちゃんと自覚していないと、いわゆる無自覚な御用学者に身を落としてしまう。したがって、政策批判は批判としてきちんと書かせてもらいますよ、という前提で執筆。編集室から、あまりにも厚生労働省批判が辛辣な部分の表現をもっとやんわりかいてくれとかいろいろ言われたが、辛辣な批判がないところに公正妥当な政策もないわけなので、書くべきは書かせてもらった。

権力におもねない批判が公正妥当な政策を担保するのだ。医療経済や医療政策のテクニカルなイシューは通常、この道の専門知識のない議員によるチェックが入りずらい。だから中立的な立場にある識者が正々堂々と批判しなければならないのである。

 

ホスピタリティXヘルスケアXデザイン思考融合の新たな地平線

カテゴリー : アメリカ

 
久しぶりにアメリカの東海岸に旅してきた。母校のコーネル大学で開かれたSymposium Hospitality, Healthcare, Design 2016に参加するためだ。
 
ああ、コーネルはいいなあ。return to my alma mater。豊饒な知に対するリスペクトと知的世界への探求心がキャンパス中に横溢している。尊厳、威厳、自由、探求、エンゲイジメント・・・そういったものが混然一体と、しかも統一さをもって顕現している。
 
Cornell Hospitality Health and Design Symposium 2016
 
この分野の研究成果:

”Systems’ Boundary and Fusion between Hospitality and Healthcare”

を一本発表して、あとはひたすら今書きつつある本の取材や社交。

共通の知人や旧知の友人との出会などのオンパレード。しかも、皆がこのシンポのテーマではいろいろな成果や社会的なアウトプットがある人たちばかりなので、めっぽうオモシロイのだ。

研究成果の発表もさることながら、今回の国際会議は今書きつつある本のネタ仕込みや取材といった点からも非常に重要なのだ。メモしてみる。
                                       
               ***
 
キュアからケアへシフトしてくると、サービスのありかたも、ホスピタリティが全面に出てくるようになる。
 
キュア文化というのは、治療すれば直ることが前提。キュアの価値とは、治って元通りに動ける、食べることができる、生活できる、働けるということだ。だから投薬、注射、手術などの介入行為が正当化される。
 
また、治療して治ることが前提ゆえに、苦痛、不快感、いごごちの悪さ、不便、不都合は、がまんすべきものである。
 
高齢者の慢性疾患や合併症に対する介入はもはやキュアだけでは有効ではない。なぜなら、多くの高齢者の慢性疾患や合併症は完治させること、直すことはできない。
 
むしろ、人生の最終局面を支えることが目的になる。キュアではとかく後方に「がまんすべきもの」として押しやられてきた、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便、といったものをケアすることが重要になってくるのである。
 
ここにおいて格差が影を落とす。富裕層は、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためにあらゆる手段、そして財力を投入することになる。
 
そのため、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するための営利動機に根差したイノベーションが盛んに巻き起こることとなる。
 
しかし、富裕層もいれば貧困層もいる。貧困層は富裕層に比べて苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消する機会にはさほど恵まれない。超高齢化と財源枯渇によって、このような把握しづらい価値に対する公共サービスは後手後手になる。公共サービスによって実現されない空白を埋めるNPO、NGO、社会起業家による、非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションに対する期待が大きくなる分野である。
 
以上を要するに、高齢者化現象とともにケアシフトが進むにつれ、 苦痛、不快感、不満、不安、いごごちの悪さ、不便を解消するためのサービス分野のイノベーションが亢進してゆく。
 
富裕層に対しては、利潤動機に基づいた ホスピタリティ・イノベーションが影響力を持ち、中間層、貧困層に対しては、 非営利的な動機による、ホスピタリティ・サービスイノベーションが影響を及ぼすことになろう。
 

医療管理学(Health Care Management)

カテゴリー : 医療サービスイノベーション

Cornell University Best Graduate HCM Program

<コーネル大学>

このところ、大学院で医療管理学(Health Care Management)を学びたいという何人かの奇特な人に遭遇。いろいろ進路相談などに乗っている。事情やニーズは個別に異なるのだが、アドバイスとなると共通点も多いのでちょっとまとめておく。

看護管理や病院管理、そして経営学、社会学、政策分析学、公衆衛生・・・・こういったバックグラウンドを持つ人が経営や政策の方向でキャリアを積みたい場合はフィットする。

今や国内で医療管理学(医療経営学、医療政策管理学、健康管理学など呼称はさまざま)を研究したり、教えたりする大学院はわずかずつながらも増えつつある。英語はさっぱりダメ、日本国内に限定してドメスティックにキャリアデザインしたい人、グローバル体験回避組、とりあえずの意識高い系(?)にとって受け皿になっている。

英語がある程度できて、日本にとどまらずグローバルなキャリアを追求したい人、輸入学問に飽き足らずsocial scienceの本流で医療管理学を学びたい人にとって、英語圏のプログラムは魅力的だろう。このようなまとめサイトもある。Top 25 Graduate Healthcare Management Degrees in 2015

母校のコーネル大学のheath managementプログラムもTop6ということでなかなか健闘している。

日本国内の閉じた学問ではなく、もっと普遍性のある視野で医療管理学を勉強したい、Global Healthという視点で学びたい、かなり英語ができるっていう人、留学できるだけの資金の算段のある人にとっては英語圏の大学院プログラムがオススメだ。

日本人の日本人による日本人のためのという、ドメスティックで内に閉じた和製学問では、普遍性や国際比較、学問的言説バトルからは隔絶していて、普遍性も「ふ」の字もない。グローバルな場で鍛錬したい向きには、やはり英語圏の大学院を薦めたいものだ。

また新自由主義や市場経済政策のもとで私有材化しつつある、「市場化」された医療サービスの矛盾や健康格差を本場で見極め、批判的な視点さらに先鋭化させたい人達にとっても案外、これらのプログラムは反面教師という意味合いでよいのかもしれない。

「データの見えざる手」は神の見えざる手?

カテゴリー : サービス思考

2014-08-06 08.27.27_2

このところ、ウェラブルデバイスを活用した在宅ケアの案件があり、関連領域をブラウジングしていたら引っかかった一冊。ビッグデータの活用が情報学のみならず社会科学の新しい地平を切り開く?そんな可能性と予兆を充分に感じさせるオモシロイ本。

この本の著者である矢野氏(実に多才な人ですね、東工大にもコミットしている)はいみじくも、こういっている。「私のまわりでは、社会のさまざまなサービスの現場で収集されたデータを活用することで、社会を科学的に理解することが可能になり、一方で、この科学的な理解が、次の新たなサービスを可能にするという好循環が回りはじめているのだ」(p222)

加速度センサーなどのデバイスから得た膨大なデータから、人間や組織の行動を説明するパターンや法則が解明できるという。その実例がこれまた面白い。

もちろん加速度センサーに注目して、その種の「解明」に役立てたのは創意工夫の精華だろう。でも、人体から発せられるデータとして最も基本的かつ決定的なものはバイタルサインだろう。生命活動のバイタルさ、つまり、心臓拍動、血圧、呼吸、体温、排尿・排便、脳波などを24時間365日計測できるウェラブルデバイスとデータマネジメントシステムは、在宅医療や在宅看護、つまり在宅ケア全般にとって必須のツールになるだろう。

たとえば遠隔看護。

遠隔看護(telenursing)とは、遠距離通信の技術を利用した看護実践で、患者の日々の健康状態を把握したり、患者教育などを行う技術(川口孝泰)だ。

遠隔看護のひとつの大きなイノベーションは、ウェラブルデバイスかけることのビックデータの活用が震源地になるはずだ。ニーズが顕在化しているからだ。つまり、テレナーシングは①継続的ケアを担保し、②健康増進や予防の意識を増進させ、③健康相談を容易にし、④保健・医療・福祉チームの連携にとって必要な基礎データを提供するからだ。

ひとりひとりの人間がウェラブルデバイス(Internet of Thingsでもあり)を装着し、システムを経由してそこから多様なデータを吸い上げ、処理して、本人や保健・医療・福祉施設にフェードバックすることによってケアやキュアに役立てようという絵柄は、もうそこまできている。

そして、そこからパターンや法則のようなものを見つけてゆく作業になるだろう。

加速度センサーXバイタルサインX受診歴・・・・・・というように、ビックデータのカテゴリーを掛け合わせることによって、発症してからのキュアのみならず、発症そのものを予防する健康増進2.0の地平を切り開くことができるだろう。

ビックデータとそれを有効に織り込んだインフォーマティクスやサービス科学の領域は、このような分野から爆発的に発展しつつある。

さて、この本の面白いところは、大概の自然科学や社会科学研究者が、真正面からとらえることに躊躇しそうなテーマに取り組んでいることだ。

例えば人間の「運」だ。

・人と人が出会い、会話することは、運と出会う通路を開くものである。p138

・ソーシャルグラフで見ると到達度の大きい人(到達度が高く運のよい人)は、たくさんの人が周りを取り囲むことに成る。p145

・数値化することで言葉の呪縛から自由になる。p153

・運を掴むには会話の質も重要p160

・人との共感や行動の積極性は人の「幸せ」を決めるものである。p216

 

医療サービスの価値共創(value co-creation)の時代来る!?

カテゴリー : 医療サービスイノベーション

11/2-3は日本医療マネジメント学会の医療安全分科会の価値共創集中ワークショップに参加。このイベントをデザインしてファシリテートし、かつ講演やパネルをこなすという役割での参加だ。コトは同時並行的で、「病院」という専門雑誌に論者がリレー寄稿しながら、それらのコンテンツを「紙」の上のみならず、論者が講演や実演を提供して学会の「場」でも共有してイシューやソリューションをコ・クリエートしましょ!というものだ。

学会3.0!?

そんなフローのなかで、一日目は「ニューマネジメント思考からみた医療安全」という講演をやり、二日目はグループワークのファシリテーションと総括パネル。二日をとおしての共通テーマは、医療サービスの価値共創(value co-creation)という視点から医療安全をとらえるというもの。

二日間の内容をまとめて本にするという話もあるので、忘れないうちに、気になったトコロをまとめてみよう。

結論から言うと、ちょい大げさだが、新しい医療経営にシフトしてゆく時に医療機関などが注入してゆくべき経営哲学、経営方法論、そして手法の一端が明らかになったように思える。

                      ***

医療サービスの根っ子は、患者と医師のヤリトリ。法的には、これ診療契約説(民法656条の準委任契約)という枠組みで議論されることが多かった。でも、医療事故の判例をつぶさに読み込んでゆくと、患者と医師の実態は、通説の契約的医師患者関係というよりは、むしろ、信認関係(fiduciary relation)である。ここをサポートする思想は、双方向的価値共創的思想である。(医師で弁護士の大磯義一郎さん)

なるほど!結果と価値の配分に力点を置けば、交換(exchange)となる。しかし、結果ではなくプロセスに、そして価値配分ではなく価値の創造に力点を置けば、おのずと関係性(relation)が立ち現れ、医師患者関係は、信認関係を基盤とする双方向的価値共創的思想で括れる。契約至上主義、訴訟大国のアメリカの医療サービスは、じつは法的には、診療契約説でなく信認関係説に依拠している。

これらは、目からウロコですね。

さらに、医療チームと患者、医療チーム内部では、価値共創をプロセスとコミュニケーションを介して実現してゆくことが求められる。オペレーショナルな実行形式としては、コーチング(詳細の方法論は工学部出身の眼科医、小野真史さんが提供した)などが有効となるのだ。

いままでの経営学は、産業社会の中で、多くの付加価値を出してきた企業モデル中心に組み立てられてきた。医療経営も、多くの場合それを参照してきたのだが、どうしてもシックリせず。

保健・医療・福祉サービスが乗っている公共圏の制度は競争原理ではなく、危うい共生原理によってフラフラしながら運営されている。でも、公共圏の共生原理が危うくても、臨床現場の医療サービスは危うくてはいけない。

医療の質、安全、そして価値が担保される経営とは、どうあるべきなのか?

医療はモノづくりではなくサービスつくり、モノコトづくりだ。

医療サービスを含むサービスの特質は関係性のなかで育まれるということ、つまり:

•共創性(Co-creation):サービスは顧客と提供者との関係性のなかで共創される。

•共進性(Co-evolution):サービスは顧客と提供者の相互作用で進化する。

•共時性(Synchronisity):サービスは顧客と提供者の間で共起する。

•互恵性(Reciprocity):サービスは互恵関係の中で生まれる。

 

そして関係性に注目すると、従来の安全アプローチとはまったく異なるソリューションが見えてくる。

埋め込み画像 1

苛烈な市場競争に置かれている製造業などのサービス化現象は、「競争原理-価値共創」というロジックで説明でいけるだろうが、保健・医療・福祉は、「共生原理-価値共創」といった異なるロジックが必要だ。そのうえで、うえに書いたような保健医療福祉サービスの性格を押さえたソリューションを提供できればすばらしい。

ワークショップでは、東京厚生年金病院の医療安全管理者の松浦真理子さんと安房地域医療センター医療安全管理者の古田康之さんがファシリテートして現場の問題、悩み、やりがいをまとめたあと、問題解決のためのアイディア、ソリューションの見える化と共有化をおこなった。

悪構造問題や暗黙知になってしまっているモノコトをワイガヤ(ムツカシクいうとソフトシステムズメソッド)によって、表出して一気に共有し、ソリューションにまでしてしまうのは本当に楽しいものだ。

ニューマネジメントはカラフルだ。たぶんこんな方向性だろう。

埋め込み画像 1

 

「全国調査からみた医療法人の経営戦略」

カテゴリー : 医療サービスイノベーション

こつこつと原資料を集める。

それらのデータを集約してデータベースを作る。

さらに、それらを分析して有意な発見に繋げる。

そこから一般的なパターンや法則を導き出す。

そして、その成果を論文、そして一冊の本にする。

凄いことだ。

著者の藤森敏雄さんから新著を贈呈され一読した感想は、これに尽きる。

そもそも、医療法人の法人数やごく大まかな全体像は公表されてはいる。しかし、個々の医療法人が、どのように保健・医療・福祉サービスにアプローチしていて事業化しているのか?その純資産や事業利益の程度はどのくらいか?そして、どのような戦略が構築され実行されているのか?については過去、全国規模の調査はなかったのである。あるのは断片的な事例やケースばかりで、全国を鳥瞰した実証的な研究はほとんど無かった。

そこで藤森さんは、2006年から2008年にかけて、全国の医療法人の登記簿を収集して、データベースにするという気が遠くなるような?作業をこつこつと継続した。それも、本業である民間研究機関の業務ではなくプライベートな時間を使ってである。強い意志と、健全かつ執着的な気質がなければ、なかなかできることではない。

だから、本書で紹介されている発見事項は、サラリとは書かれているもののどれもキラリと光っている。

・全国の5809もの医療法人の全純資産の合計は3兆5788億円

・資産額の合計はセブン&アイ・ホールディングスの時価総額を上回る。

・「一般病床中心」では、在宅復帰に関連する「医科診療所」あるいは「居宅介護支援」がプラスの影響となる。

・「療養・老健中心」では療養病床、および「老健施設定員」の影響が大きくなる。

・「療養・老健では50-99ベッドで「回復期から在宅まで」の実施が高利益

そのうえで、医療法人のタイプごとの増益に繋がる付帯業務の組み合わせがモデル化されている(p56)。詳細は本書に譲るがナルホドの結果だ。今までいろいろなケースに当たってたぶん、こんなものだろうと推定してきたことがらが、実証的にハッキリ示されるとスカッとした気持ちになる。

さらに、純資産額を従属変数として、法人設立後の年数、老健定員、精神病床数、療養病少数、一般病少数を独立変数として行った重回帰分析もストライクゾーンのど真ん中へ直球を投げ込むような調査だ。

                                     ***

なるほど、「全国の医療法人の資産額の合計はセブン&アイ・ホールディングスの時価総額を上回る」のだが、セブン&アイ・ホールディングスの経営戦略は、ほぼ一気通関したグランドデザインのもとで遂行されているはずだ。しかし、全国にちらばった医療法人は玉石混交の最たるものだ。だから、本書が提供するデータと意味づけは、実務・研究双方にとってとても意味深い。

イノベーションという観点から見てみる。

制度イノベーションがやつぎはやに繰り出されている医療法人(参考資料1,参考資料2,参考資料3)だが、制度イノベーションを生きたものにできるか否かは医療法人の経営者に依存するだろう。だからこんなクエスチョンもでてくる。

・地域・患者の利益、経営者の利益、そして、従業員の利益の3方向を両立させるガバナンスのありかたは?

・社会の公的な公器としての医療法人のオーナーシップをいかにスムーズに継承させていくのか?

・ケアサイクル形成において、垂直統合・水平統合のひとのハブとして今後の医療法人の経営戦略はいかにあるべきなのか?

この本の隠し味は、やはり、その背後にどっしりと横たわるデータベースにある。ぜひとも、新たな問いに答えるような第2弾、3弾の研究も期待したいところだ。

 

 

 

 

 

起業家助産師

カテゴリー : 医療サービスイノベーション

社会貢献活動の一貫として、日本助産師会などで、助産師の起業や院内起業=院内助産師施設の立ち上げなどについて何回か講演してきた。

その聴衆の中に、目を輝かせながら参加している国保旭中央病院の元・看護部長の斉藤葉子さんがいた。以前、この病院の経営アドバイスに関与していた頃、昵懇の仲だったのでとても懐かしかった。

その彼女がとうとう、助産院を助産過疎の地域で立ち上げ、開業する運びとなった。おめでとうございます!そのニュースは「香取唯一の出産施設開設」にも紹介されている。

定年退職しても、①涸れないモチベーションの泉から沸々と湧き出る意欲、②専門的技量、④自分が創りだすべき役割への問いかけ、⑤時代への真摯な問題意識、⑥スキル、知識を含むコンピテンシーがあれば、クリエーティブな個人は、瑞々しい文脈を創り上げ、そこに、いろんな資源、つまり、ヒト、モノ、カネ、情報、知識、時間、空間を呼びこんで、大いなる橋渡し(トランスレーション)を実現させ、さらに新しいコンテキスト=文脈をつくってしまう。自己表現欲求を社会に親和的に表出することができるのだ。

齊藤さんに、そのような溌剌としたクリエーティブな起業家精神に満ちた起業家の姿を見る思いだ。

今後、日本の人口は減ってくるが、向こう30年くらいは65歳以上人口は急激に増えてくる。それにつれ、積極的な役割から疎外される中高年が否応もなしに増えてくる。そんな中で、健康レベルを保ち、多様なコンピテンシーを持つスーパーシニアが、社会的問題を解決するために、アントレプレナーとして活躍する機会も実は増えてくることになる。

そのような動きの側にいたいと思う。

 

年末あれこれ

カテゴリー : デザイン思考

(年末、書斎におさまった我がアルプス号)

師走。

やっと年内の授業、招待講演、学会発表、コラムなどの仕事が一段落して、書斎の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を敢行し、自転車を整備した。とはいえ、まだヘビーな英文原稿(ある本の1章分)が1本あり、これは1月始めあたりまでにゴリゴリやって仕上げたい。

さて、2012年は、日本国内では客員教授をつとめている札幌市立大学看護学研究科がある札幌から、医療マネジメント学会が開かれた九州佐世保まで、いろいろ動き回った年だった。

もっとも、招待講演に呼ばれるのは、以前から医療・保健・看護サービスマネジメント関係のテーマが多く、今年も例年と同じようなパターンだったと言える。ヘルスケア関係では、中央アフリカのコンゴ民主共和国まではるばる出かけて行って保健省の関係者の方々にお話をさせていただいたのが、最遠だ。

MOT(技術経営)関係の講演(もちろん授業は除く)は5回ほど。ヘルスケアは25回あった。単純にいえば、製造業を中心とする技術経営系よりも、医療・保健・看護サービスマネジメント系のほうが、ヒキがいい。世の中のニーズと自分の問題解決提案能力が重なる部分の面積において後者は前者の5倍ってことになる。

専門家のハシクレとして、専門的なウンチク、ノウハウが世の中のお役に立てることができるのならば、よほどスケジュールにムリがない限り対応したいものだ。

技術経営系のニーズよりは、医療・保健・看護サービスマネジメント関係のニーズのほうが5倍もあるとしたら、ここは、後者にさらに力点を置いて、問題解決提案能力にミガキをかけるのが、定石だ。戦略論を引っ張ってこれば、それが、比較優位(comparative advantage)。

ざっくり言えば、マネジメント(まさにブログのタイトル)のレバレッジ(テコ)をあてがう先として、ものつくり系の技術なのか、医療・保健・看護・福祉・介護系のものことつくり系サービスなのかっていう問題でもある。

選択と集中。

「あれもこれも」から、「あれかこれか」

(ランニングコースは黄金のカーペット・・)

・・・ということで、2013年は医療・保健・看護サービスマネジメント系の研究、教育により注力したいものだ。そして、これらのワーク系をアウトドア系のアクティビティいかに臨機応変にむすびつけてゆくのか?という発展的なテーマがある。

この発展的なテーマのほうが、じつは楽しいし、真剣にもなれるのだ。しょせん、仕事は手段であって、目的は高次元のアソビのほうが自分の性にあってるってことか・・・。

ワークとホビーの融合的・統合的デザイン思考を拡げてみると・・・・

その1:北海道自転車キャンピングツーリング

 札幌市立大学の集中講座とからめて企画!来年は道南か。

その2:イタリア半島縦断自転車ツーリング

 とある国際学会にからめて画策中。でもアブストラクト、フルペーパーなどハードルは高い。まずは手堅くいきたい。

その3:ニュージーランド自転車ツーリング、アウトドア

 息子の交換留学とからめて実現できれば面白そうだ。

その4:ランニング

 最低限、早稲田駅伝には出走する。できればハーフ、フルマラソンも!

その5:インド自転車旅行

 昔からの仲間を焚きつけてなんとかやりたいものだ。来年というより、中期的なプランだ。

その6:清里山荘リノベーション

 標高1300mにある山荘をリノベートして秘密基地のグレードアップ画策中。

             ***

年末年始にかけて、時間がつくれるので、そのあたりのことを純粋に、不純(笑)にじっくり考えてアクション・プランを立ててみたいのだ。。

 

『オーラルマネジメントに取り組もう 高齢期と周術期の口腔機能管理』

カテゴリー : No book, no life.

 Photo: 本日、解禁!<br /><br />
出来立てほやほや、少し青くてフレッシュな、『オーラルマネジメントに取り組もう  高齢期と周術期の口腔機能管理』(デンタルダイヤモンド増刊号)が、本日発行となります、何卒よろしくお願い致します!!<br /><br />
私は、編集担当として、脳卒中のオーラルマネジメント、エッセイ、Q&A、最終章、第4章の『歯科以外の職種・現場が期待するオーラルマネジメント』を担当させて頂きました。<br /><br />
この第4章の執筆を分担された、医師、MOT教授(医療コンサルタント)のみなさんは、全国在宅歯科 ・医療連絡会のメーリングリスト参加され、この3年間の交流、意見交換を通して、適格な提言、アドバイス、コンサルティングを頂戴しており、ぜひ、ご覧頂けましたら幸いです。<br /><br />
急性期医療、回復期リハビリ、地域医療、地域包括ケアという、大海へ漕ぎ出すための、羅針盤が本書の、役割のひとつでもあります。

今度、拙文を寄稿した本のナレソメはちょっと変わっている。なんとメーリングリストから生まれた本なのだ。

専門的な話はこの本に譲るとして、僕は、健康・医療サービス、サービス・イノベーション研究、分野横断的ものことつくりの専門家(?)として、一般社団法人「全国在宅歯科医療・口腔ケア連絡会」というネットワーク組織のアドバイザーをボランティアでやっている。

北海道から沖縄まで、歯科医、医師、歯科衛生士、看護師、栄養士、作業療法士、介護福祉士、大学教員、コンコンサルタント・・・・いろいろな医療系の専門職が、オーラルケアについて、ああだ、こうだ、ワイワイガヤガヤやっているうちに、本を書こうという話が持ち上がり、紙媒体を提供する出版社=デンタルダイヤモンドと御縁が生じ、今年の始めくらいから、企画ができ、拙文1本を提供したというものだ。

一冊の本を書くには、それなりの新しい知見、独創的なアイディア提案、最新動向への洞察、類書にはない切り口・入口の新規性が問われる。

これらの作業をひとりでやるとなると、けっこうシンドいのだ。でも、ネットの時代では、複数のプロフェッショナルが、濃度・密度の濃い、コンテキスト(文脈)に立ち、動態的にイシューを分かち合い、イシューに密接に関係する粘着力が強いコンテンツを紡ぎだすことができる。

おりしも、医療界では「チーム医療」の大合唱だ。口腔ケアという領域でも、もちろん新しいカタチのチーム医療が強く要請されている。そんな状況に投げ込む本も、やはり、チームアプローチ=チームによる価値共創があっている。

編集という知のデザインは、イシュー(コンセプチュアルなテーマ)Xコンテキスト(文脈、流れ)Xコンテンツ(論点、方法論、方法、提言、分析、オピニオンなど)の掛け算だ。医療のような変化が激しいイシューに取り組むには、ダントツのライターが一人で得組むよりは、複数の専門分野を持ったプロが、集合知を出し合って取り組むほうが、結果として、いいアウトプットをエレガントに濾しだすことができる。

このような下地に、ネットは実によくマッチするのではないか。

そうした知がやがて臨界域にまで達すると、たぶん、集団的な表現欲求も一皮むけて、新しい媒体を得るに足るくらいのエネルギーを持つにいたるということなんだろうか?

いずれにせよ、新しいコンテキストに新しいコンテンツが乗るっていることを体感した。内容もさることながら、新しいwriting styleを得たのはけっこうな歓びである。

 

 

 

地域のケアリング・ハブを目指す愛媛大学医学部付属病院

カテゴリー : ケア

<副病院長・看護部長の田淵さんらとともに>

このところ年に数回脚を運んで、講演、コンサルティング、コンピテンシー、職務満足調査などの共同研究プロジェクトなどのソリューションを分かち合っている愛媛大学医学部付属病院

写真は前回お邪魔した時のもの。いわゆる院内レストランだが、そのメニューの充実ぶり、質の高さに感動した。本格的な釜めしを供するまでに進化している。食材としてのメニューの質の高さもさることながら、レストランのホスピタリティ、「おもてなし」度合いも、さすがに高い。

医薬、医療機器、診断方法、治療方法など、医学・医療に関わる多様なテクノロジーが複雑に集積する大学病院は、まぎれもなく地方診療圏の拠点病院だ。その意味で、大学病院のマネジメントは医療技術マネジメントとほぼ同義。ただし、技術を活用、利用、応用するのは人なので、ヒト階層のマネジメントがきわめて大事になってくる。

医療・保健・看護・福祉サービスの後方システム、サービス・サポートシステム、サービス・マネジメント・システムづくり、サービス改善など、いわゆる「ことつくり」系のお手伝いをしている。

 

<田渕さん発案のうちわ>

医療界では、臨床の医療チームと患者が直接価値を共創する医療サービスそのもの核心部分=core layer、それらをとりまく各種マネジメントサービスの第2次階層(secondary layer)、そしてさらには患者・家族・関係者のためのホスピタリティサービス=第3次階層(tertiary layer)に分ける医療サービス・モデルがよく用いられる。

この区分けに従えば、たしかに院内レストランやちょっとした「うちわ」などはtertiary layerの第3次的サービスではある。第3次的サービスの質の高さは、1~2次サービスにある程度比例するのではないか?!

気持ちの余裕、品格、そこはなとない気遣い、いたわりの気持ち、おもてなしのセンス、・・・・。

そういったものが組織風土やケアリング文化などを醸成してゆくのだから、第3次的サービスとひとくくりにするのは、ずいぶん近視眼的すぎるのかもしれない。

 

院内起業家だらけのワクワク府中病院

カテゴリー : アントレプレナーシップ

(2012/02/03 医療サービスマネジメント調査でインタビュー)

病院っていうのは、ワクワクするような所ではない。医療崩壊が喧伝される昨今、そこで働く医療スタッフも疲れ気味だ。でも、生長会府中病院のスタッフはとてもイキイキしている。それが一歩この病院に足を踏み入れた時の第一印象。

それもそのはず、5000万円もの大金をかけて、スタッフがツアーを組んでフロリダのDisney Landまで行って、カスタマーサービス、サービスシステム、サービスの進化のさせ方、コミュニケーションなどを実地に学んだそうだ。(いいなあ)

現場がエンパワーし、ワクワクしている。そのカギは、TQM(Total Quality Management活動)のシステムのかませ方だ。TQMが院内起業家(In hospital entrepreneur)の孵化器のようなハタラキをしている。そして、ワクワク人材が、ヤラサレ感覚なく成果を着実に出している。

<出所:府中病院資料>

この病院には、「サービスクリエーションプロジェクト」(Service Creation Project)なるものが動いており、人材→ソフト→職員部門、建物→ハード→環境部門、業務→プロセス→業務部門、顧客→アウトカム→顧客部門というように大きく分けて、教育チーム、表彰チーム、美化チーム、QC推進チームが活動している。2001年から開始し、2010年には112ものQCサークルが活発に蠢いている。

①抗ガン剤に関わる業務統一化、②産科外来のシステム変更(助産師のスキルアップ→医師と助産師の交互診察システム→助産師外来2診体制)③Drug information業務の標準化など、ボトムアップ、ミドルアップ、トップダウンの上下循環運動、せめぎ合い運動で成果を生んでいる。成果を出すために動いてみる→試行錯誤する→改善する→成果が出る→成果を計測しフィードバック→新たなテーマアップ、というサイクル。

<出所:府中病院資料>

カサカサに形骸化した目標カンリではなく、むしろ、サービス・アクション・リサーチサイクル(service action research cycle)が、5S、TQM、目標管理というツール系のプラットフォームの上で躍動している。

大半の医療機関では、5S、TQM、目標管理などに取り組みながらも、いわゆる「上からのお仕着せ」感覚、「ヤラサレ感覚」で動いているので、アクションリサーチのサイクルが回っていない。

もっとも、医療機関はサービス組織なので、バリューチェンはものつくり製造業のように長くはなく短い。なので、異なった職種間や部門間のダイナミックなネットワーク(dynamic networks of interactions)ができれば、カイゼンはそんなに難しくない。難しいのは、融通無碍なごちゃまぜネットワークを組成させることだ。

組成させるって書いてしまったが、実は、組成させるんじゃなく、自然に組成させる・・・つまり、自己組織性原理をいかにイキイキ発動させるのかがキーポイントだ。このようにして、府中病院は、既存のマネジメントツールをみんなで使いこんで、複雑対応的組織として進化している。

病院というサービス組織を複雑対応的組織に進化させてゆくためのヒントに充満している。