友人と話をしていると、「おまえはランドナーばかりに乗って、ロードにまったく乗っていないか」という話になった。
「いや、違う。おれは、れっきとしたロードレーサーなのだ」
正確にいうと、ロードレーサーだったこともある、ということなのだが。
その動かぬ証拠が上の写真だ。
とあるロードレース大会で見事優勝を果たし、ヘルメットをとってウィニングライドをしているときの風景だ。サイクルスポーツという、サイクリング界では知らない者がいないくらい有名な雑誌の表紙にも掲載されたのだ。
・・・と言いたいところだが、真実はこうだ。
おれが所属していた大学のサイクリングクラブの先輩がサイスポに勤めていて、金欠病の現役部員を救済しつつ、テキトーなモデルを安く調達し、それなりの表紙を仕立てるというストーリーに気軽に乗っただけなのだ。
当時、金欠病と放浪癖にやつれ、いろいろあってちょっと凹んでいたわが身を案じてくれた優しいY川先輩(主将)が、「おい、サイスポの表紙に出してやるから、湘南海岸に行こうや」ということで、ありがたく、その話を受けたのだ。
凹んでいるいる人間を、このようなやり方で元気づけるというのは、さすがに、この先輩の器量、人徳を感得させるものがあった。
ちなみに乗っているチャリは、細身のクロモリフレームにオールカンパのイタリアン・ロードレーサー。同じクラブのSS木先輩に譲ってもらって、今も研究室に鎮座しつつ、たまには走っている自転車だ。
上のキャッチには、なんと「クラシックパーツで組んだマニア憧れの車」。
一日1万円、しかも、サイスポの表紙に載るといういい話だったのだが、車上荒らしにあって、1万円のバイト料はしばらくお預けとなってしまった。
今となっては、なんというか懐かしくもあり、当時の先輩の面影とともに、深く記憶に刻まれている物語のようなものだ。
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